週末に公開される話題の映画の中から、気になる人物をクローズアップしてご紹介します。ベネチア映画祭で、観客の度肝をぬかした北野武監督作品『TAKESHIS'』が、今週末いよいよ公開されます。売れない芸人北野武と、大スターのビートたけしが出会い、2人の世界が現実と夢の間で交錯する。という視覚的にも実験的な映画を観る前に、しておかなければいけないこと。それは“北野武”という人物をよく知ること。北野武を知れば知るほど、この映画を面白く、エキサイティングに楽しめるはずです。というわけで、今週は映画の公開にさきがけて“北野武”をレッツ学習!
監督は、お金がなくてバイトばかりしていた学生の頃、ボンボンの金持ち学生達が乗り回す「ポルシェ」を見ては「あんなもん乗りやがってちきしょー」そして、「いいなあ~」と2つの思いで、とっても複雑だった。
それでも、「いつか見ておれ!」との思いから、数々の苦難を乗り越え、見ごと漫才師ツービートのビートたけしとして空前の漫才ブームを引き起こします。学生時代からは想像も出来ないような大金が、舞い込む毎日。あまりの忙しさに使うひまもなくどんどん押し入れにたまっていく札束。「これどうしよう」と、思った矢先に思いついたのが、学生時代に憧れていたポルシェ。そうだ! ポルシェだ! と思い切って現ナマで真っ赤なポルシェを購入した監督。
うれしくって、大喜びで高速を走ってはみたもののなにかがちがう……「オレが乗ってちゃ、自分のポルシャが見えねえ!」。急いでマネージャーを呼び出して、ポルシェを運転させると、自分はタクシーでその後を追い、さっそうと走る愛車を見て大満足だったそうな……。めでたしめでたし! じゃないですね。監督にまっかなポルシェを追跡させられた運転手さん、間違いなく何かの事件に巻き込まれたと思ったことでしょう。そして、そんな監督の思い出の愛車真っ赤なポルシェが劇中にしっかり登場!! 要チェックです!!
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あの頃はせつなかった……
(C) 2005『TAKESHIS’』製作委員会
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作中で、華麗なタップダンスを披露する北野監督。いくらマルチアーティストといえども、なんでも出来るわきゃないでしょう~なんて思ってるあなた!! そんなこたあございません。絵本をかいたり、小説を書いたり、もちろん映画の監督もしたり。監督の未知数の才能はとどまるところを知らないのです。
そして、あまり知られていない監督の隠れた才能のひとつがその歌唱力! といっても、超うまい!……ってわけではなく、下手なんだかうまいんだかよくわかんないとこが魅力なんです。味があるんですね。北野武の味がします。 無名時代の浅草を歌った名曲「浅草キッド」は作詞、作曲を手掛け、リスナーのハートにじんわり染み入る素晴らしいバラードです。
さらに、われらが監督は、作品を自らの才能をおしみなく発揮する場としても活用しております。『HANA-BI』でみせた美しい絵画の数々、『菊次郎の夏』でみせたジャグリング、そして今回『TAKESHIS'』でみせるプロフェッショナルに近いタップダンス。俳優のみならず、アーティストとしての北野武にも大注目です!
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監督、編集、脚本ぜんぶやっちゃいます!
(C) 2005『TAKESHIS’』製作委員会
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大杉漣、寺島進、國本鍾建などなど北野監督を取り巻く人々はなんだか怖い人が多いです。仕方ありません! だって北野映画には、ヤクザを描いた作品が多いから。
『DOLLS』や、『菊次郎の夏』みたいな、ちょっとテイストの違う映画には、この怖そうな俳優さんたちはあんまり登場しません。ヤクザ系北野映画ファンにはちょっとガッカリだったかもしれませんが、ご心配なく!
『TAKESHIS'』では、怖い系常連俳優達が見事復活します。しかも、かなりありえない姿で登場する人も!
さらにさらに、『TAKESHIS'』のみどころのひとつは、「一人の役者がいろんな役を演じる」ということ。さっき、ヤクザだった人がこんなキャラに! また、自分の好きだったあの人がこんなことに! いつもの北野映画ではみられなかった大爆笑の一面が満載です。キャラたちのあまりの奇想天外ぶりに、最後まで抱腹絶倒まちがいなし!
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たったいへんなことに~!
(C) 2005『TAKESHIS’』製作委員会
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これまでは、北野武ばかりが世界で注目されてきた監督でしたが、実はここ数年で大きな変化が! なんと、ビートたけし(殿)として監督が出演していた「風雲たけし城!」(英題:Takeshi's
castle)がアメリカなどで一大ブームを呼んでいるのです。
「最近ビートたけしとしても人気みたいですね?」とインタビューで尋ねてみると、監督もなんだかうれしそう。「そうなんだよ。でもあっちじゃ、あれの“殿”とオレが同一人物だって気付いてるヤツ少ないみたい(笑)」とのコメント 。確かに、大物カリスマ監督が、あの白塗りの殿だなんてきっと誰もきづかないはず!
思えば、“北野武”については、私たちにもわからないことだらけ。北野武の素顔はどんなんだろう? ビートたけしみたいに面白いの? それとも、映画の中みたいにめちゃくちゃ怖いの? それとも、私たちが今まで観たことないようなまた、ちがう北野武が存在するのか? 『TAKESHIS'』にも、いろんな監督の一面が映し出されます。さて、どれがホントの北野武か、それともホントの北野武はやっぱりスクリーン上にはいないのか? よーく探してみてみましょう!!
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本物のTAKESHIはどこだ?!
(C) 2005『TAKESHIS’』製作委員会
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『その男、凶暴につき』で鮮烈なデビュー飾った監督、北野武。世界中にキタニストとよばれる熱狂的な北野映画ファンを生んだ『SONATINE』、ベネチア国際映画祭で見事金獅子賞に輝いた『HANA-BI』を世に送り出し、常にヨーロッパで支持され続けている北野武が、2005年世界に放った衝撃作品『TAKEHIS'』。
「とにかく体感してほしい」と監督自身も語るスペシャルな本作を楽しむもう一つの方法。それは、過去の北野映画をとりあえずぶっ通しで観てから劇場に足を運ぶことだ。今回、北野武は視覚によるデジャヴ-効果を演出した。あれ? この俳優さっき違う役だったような……ってこともしばしば。しかし、それよりさらにこの映画を楽しく観るにはやはり全作品観ておくしかない! 映画の中のデジャヴだけでなく、「あ、このシーンどっかで……」という場面に遭遇し、脳みその中の北野作品を探し出して絵合わせのように一致させる。
まさに、北野武に直接脳みそをくすぐられているような、おかしなトリップをしてしまう不思議な映画『TAKESHIS'』は北野映画のファンだけでなく、純粋に映画を楽しむことが出来る体感映画! ぜひ、劇場で体感してみよう!
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なんだかデジャヴなんです……
(C) 2005『TAKESHIS’』製作委員会
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文・構成:FLiXムービーサイト編集部
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