マル美 こんなゲイ映画が好き! 2006年2月27日 アカデミー賞の呼び声が高い『ブロークバック・マウンテン』は、一見ゲイっぽくない2人の美しい男の物語。美しい男同士の愛を描いた映画は実はたくさんあります。その中でも特によりすぐりをご紹介します。ディカプリオ、キアヌ、ジュード、リバー、美しい男たちがあんなことや、こんなことに……! (C)Focus Features/Photofest/MediaVastJapan 60年代のアメリカ西部という保守的な場所で、運命的に出会ったカウボーイ、イニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)の20年におよぶ愛の軌跡をつづった感動ドラマ。 『グリーン・デスティニー』の名匠アン・リーが、男同士の許されない関係に身を投じるカウボーイの情熱と葛藤を繊細に描き出す。アメリカの原風景をとらえた穏やかで美しい映像と、劇中に流れるカントリー調のアコースティックな旋律も珠玉。 季節労働のために訪れたブロークバック・マウンテンで、仕事仲間として知り合ったイニスとジャック。友情で結ばれた2人は、やがて互いに愛情を抱き始める。ホモセクシャルを否定する2人は強い罪悪感を感じるが……。 イニスとジャックが初めて結ばれるシーンは、本編中最も美しい場面であり、最も心ときめかされる場面でもある。凍える夜、イニスの腕を自らの体に引き寄せるジャック。驚いたイニスは彼の行為にあらがうが、しかし体の中には別の確かな感情が渦巻いていて……。男らしくも少々神経質そうな風貌のヒースと、つぶらな瞳が情熱的なジェイクが絡み合っていく姿はまるで1枚の絵画のよう。戸惑いながらも愛と欲望に身を任せる彼らの心情が胸の奥深くに迫ってくる。 (C)Focus Features/Photofest/MediaVastJapan (C)Fine Line/Photofest/MediaVast Japan 鬼才ガス・ヴァン・サントが放つロードムービー。緊張すると眠ってしまう奇病を持つ男娼マイク(リバー・フェニックス)と、彼の親友で、市長の息子でありながらも男娼として暮らすスコット(キアヌ・リーブス)が、マイクの母親を捜す旅に出る。ガス・ヴァン・サントらしい乾いた質感の映像と、その中で語られる青春ドラマのビタースウィートな味わいが魅力。リバー・フェニックスは本作でベネチア映画祭主演男優賞を受賞している。 マイクとスコットは男娼仲間であり、親友同士。肝心な時に眠ってしまうマイクを、スコットは常に守っている。マイクのスコットに対する気持ちは友情以上だが、スコットがマイクを思う気持ちはあくまでも友情のよう。 今は亡きリバー・フェニックスと、実生活でも彼と親しかったキアヌ・リーブスのツーショットだけで涙モノ。眠るリバーの穏やかな顔と、彼を抱きかかえるキアヌの慈しむような眼差しが美しい。アイダホの森で焚き火をするマイクが、隣に座るスコットに「俺のことをどう思う?」と呟くように告白するシーンは何度観ても心を揺さぶられる名場面! 「男同士は愛し合ってはいけない」と答えるスコットの空虚な台詞がこれまた胸を打つ。 (C)Fine Line/Photofest/MediaVast Japan (C)Sony Pictures Classics/Photofest/MediaVast Japan イギリスの文豪オスカー・ワイルドの半生を描いた伝記ドラマ。妻と子供にめぐまれながらも、美貌の青年貴族ボジー(ジュード・ロウ)との同性愛に走ったワイルド(スティーブン・フライ)が、いわゆる“男色裁判”にかけられるまでの過程とその末路が描かれる。ブレイク前のジュード・ロウが、若く美しいゆえの傲慢さを振りかざす貴族の青年を好演。無名時代のオーランド・ブルームやヨアン・グリフィズも出演している。 地位も名誉も手にしていたオスカー・ワイルドが若いボジーに一目ぼれ。そのため、ワイルドは稼いだ原稿料をボジーへのプレゼント代にあてる。一方、移り気なボジーも彼なりの愛し方でワイルドを愛するが……。 美青年同士ではなく、魅力的だが風貌はサエない中年男性と美青年が繰り広げるラブストーリー。しかしながら、青年貴族ボジーを演じたジュード・ロウが万人の10倍以上美しく、美しい青年同士の物語にも全く引けを取らない。そんなジュードがスティーブン・フライの上で恍惚の表情を見せるショットは本編最大の見どころ。あられもない姿で眠り込む光景にも常識を超えた艶かしさがあり、男色家のオスカー・ワイルドでなくともそそられる。 (C)Sony Pictures Classics/Photofest/MediaVast Japan (C)Sony/Photofest/MediaVast Japan スペインの名匠ペドロ・アルモドバルが放つ衝撃の問題作。若き映画監督エンリケ(フェレ・マルティネス)と彼の幼なじみを名乗る青年(ガエル・ガルシア・ベルナル)を中心に、愛と欲望、疑惑と裏切りに満ちた悲劇的な物語が展開する。現実と劇中劇が入り乱れる独特の構成と、鮮やかな赤、緑、黄色などを基調としたアルモドバル監督らしい色づかいがポイント。ラテンスター、ガエル・ガルシア・ベルナルの妖艶な女装姿も見逃せない。 若くして成功した映画監督エンリケは、幼い頃に愛し合った親友イグナシオに再会。しかし、エンリケはイグナシオを名乗る青年が偽者なのではないかと疑い始める。危うい2人の関係は徐々に親密さを帯びていくが……。 幼き日に愛し合ったはずの青年2人が、相手の正体がつかめない中で疑惑に満ちた愛の駆け引きを繰り広げる様にゾクゾクさせられる。そんな駆け引きの緊迫感が頂点に達するのが、プールサイドでのワンシーン。ややぽっちゃりめの肉体を無防備に晒すイグナシオに対し、獲物を狙うような目つきを見せるエンリケが淫らで美しい。その後、自称イグナシオの嘘を確信しつつ、彼の体をむさぼるエンリケ。ラテン俳優2人の濃厚な美貌が絵になる! (C)Sony/Photofest/MediaVast Japan (C)Paramount Pictures/Photofest/MediaVast Japan 過去にはアラン・ドロン主演の『太陽がいっぱい』として映画化されたパトリシア・ハイスミスの小説を『イングリッシュ・ペイシェント』のオスカー監督アンソニー・ミンゲラが映画化。貧乏な青年トム・リプリー(マット・デイモン)が富豪の放蕩息子ディッキー(ジュード・ロウ)を殺し、彼に成り代わろうと画策する。本作でアカデミー助演男優賞候補に挙がったジュード・ロウの美貌と、人間の欲望を見つめたストーリー展開が話題に。 ディッキーの父親に頼まれ、放蕩三昧の彼を親元に連れ戻そうとするリプリー。しかし、リプリーはまばゆいばかりの魅力を放つディッキーに心惹かれるように。そんなリプリーをディッキーが拒否した時、悲劇が起こる。 マット・デイモンがジュード・ロウに叶わぬ恋心を抱くという設定からして悩ましい。水を滴らせるジュードの露わな上半身を見て、思わずクラクラするマットが(見ようによっては)ベリーキュート。ボート上でディッキーを撲殺したリプリーが血まみれの死体にそっと寄り添うシーンには、残酷なまでの美しさが漂っている。 ちなみに、グウィネス・パルトロウ扮するディッキーの恋人とリプリーによる“女のバトル”も一見の価値あり。 (C)Paramount Pictures/Photofest/MediaVast Japan (C)Fine Line/Photofest/MediaVast Japan 19世紀フランスを舞台に、若き天才詩人アルチュール・ランボー(レオナルド・ディカプリオ)と名詩人ポール・ヴェルレーヌ(デビッド・シューリス)の魂のつながりを描いたラブストーリー。『僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ』の女性監督アニエスカ・ホランドが、男性同士の愛憎を美しくも赤裸々にえぐり出す。自由な精神と破滅的な衝動を抱くランボーを、少年らしいみずみずしさを残したレオナルド・ディカプリオが好演! ランボーの詩を愛し、若さを愛し、美しさを愛したヴェルレーヌ。だが、挑戦的で残酷なランボーと、飲酒癖のあるヴェルレーヌの凶暴な内面はしばしば衝突を迎える。しかも、ヴェルレーヌには若い妻と子供がいて……。 片方が平常心を保っている時はもう片方が狂気に陥るという、悪循環の上に成り立っていたランボーとヴェルレーヌの愛は、両者の身を滅ぼさんばかりに壊滅的。だからこそ輝いてもいる彼らが海辺で抱擁し合う場面は、若きディカプリオの美しさも相まって詩的な味わいをもたらす。ヴェルレーヌの肉体を責め立てきったランボーが、自分のものだと言いたげに彼を抱きしめた後、その隣で満足気に眠るという一連のベッドシーンも果てしなくエロティック。 (C)Fine Line/Photofest/MediaVast Japan (文・渡邉ひかる) ADVERTISEMENT