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毎年アメリカのユタ州パーク・シティでサンダンス映画祭と一緒に開催されるスラムダンス映画祭。今年で、すでに12年目になる。その中で、観客賞を受賞したのが『Abduction (拉致)横田めぐみ物語』である。監督は、地球の反対側に住むアメリカ人というのには、いささか驚き、その国境を越えて伝えたい熱い想いを、監督のクリス・シェリダンに、吐露してもらった。
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Q:まず最初に、スラムダンス映画祭での観客賞受賞おめでとう!
ありがとう! 僕たち(彼の妻パティ・キムも監督のクレジットを共有している)は、常にめぐみさんの家族には、アメリカがこの事件に関わるように最善の努力をすると言ってきた。今回の受賞は、明らかな形で証明されたと思っています。
Q:家族会事務局長の増元さんが早期解決を訴えるため映画祭を訪れたのですが、観客の反応は、いかがでしたか?
僕にとって一番価値のある経験だったのは、増元さんが映画を観終わった直後に立ち上がり、観客から質問を受けたときに、その中の1人が「僕に何かできないですか?」と言ったことです。
Q:アブダクション(拉致)は、世界中が抱えている共通の問題とはいえ、なぜアメリカ人のあなたが、日本のこの問題に取り組もうとしたのですか?
われわれが最初にこの事件を耳にしたのが、2002年に平壌で開かれた北朝鮮の金正日総書記と小泉首相との首脳会議で、そのときにようやく金正日総書記が、過去にめぐみさんを含め13人を拉致したことを認めたんです。
当然それには、驚かされたのですが、さらに衝撃を受けたのは、その中に13歳の少女がいたことです。そのことが、さらなる情報収集と研究を呼び起こす、われわれの探求の始まりでした。
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Q:現在(インタビューをしたのが2月9日)北京で日朝並行協議が行われている最中ですが、この会議にどれくらい着目していますか?
もちろん、撮影後の今も、片目を日本と北朝鮮に向け、もう片方はこのアメリカの対応に注視し、今回の協議では、どういった言及がされるかを見ています。それと今でも日本から関係者の方が最新情報をE-mailで送ってくれています。こちらでは、入らない情報がたくさんありますからね。ただ、われわれが今も追いかけている理由は、映画を撮影したからでなく、彼らに親密な関係を個人的に感じているからです。
Q:3年ぶりの国交正常化交渉で、3つの議題を並行して協議する形で、こんな広い範囲で、果たして早急な解決策にたどり着くことは可能でしょうか、拉致問題だけでもそれ以上かかると思うのですが?
毎回彼ら会議を行うたびに、ほんのわずかな貴重な情報がでてくる訳ですが、日本の家族の人たちと政府の方々にとって、一番大きな問題点であり困難を招く原因は、北朝鮮側が一度否定したことを肯定したりと、一体いつ事実を表明しているか判らない状況化です。
Q:日本は現在、容疑者の引き渡しを要求しているですが、それが成立すると北朝鮮側は、この問題の全ては終結したと主張し、われわれが本当の黒幕を知らずに終わることになるのではないでしょうか?
それは、僕には返答する事ができません。あなたは、何が次に起こるか質問している訳ですから。う~ん、(ひと呼吸)いい質問だけどね。
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Q:事件が発生したのが1977年、どれだけ保管された映像記録を使用し、どこから手に入れたのですか?
映画内では、かなりの量を占めているのですが、最初から事件当時の状況が判らなければ映画にならないと思い、フジTVの協力を得て映像を手に入れたんです。彼らの協力なしにわれわれの映画を完成させることはできなかった。
Q:『ある貴婦人の肖像』と『ピアノ・レッスン』の監督ジェーン・カンピオンさんが、この映画のプロデューサーをしているのですが、どういった経緯で彼女が関わったのですが?
わたしの妻のパティは特に彼女と親密な関係ではないのですが、ジェーンの映画『スウィーティー』を見て気に入ったときに、パティがジェーンに手紙を送ったんです。それから長年のペン・パルになり、彼女が世に知られてきてからも連絡を続けていたのです。この製作を始めた時に、誰か高潔で創造的な人材がこの企画には必要だと思ったんです。そこで始めに、いくつか撮影した映像と一緒に頼んでみたんです。彼女は気に入ってくれ参加する形になったんです。
彼女がこういうことをするのは、まれでいつも自分で題材を決め、自分で制作していますから。われわれにとって全く完璧なエグゼクティブ・プロデューサーだったのは,彼女は一度も、こうやって欲しいと主張してこなかったことです。
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Q:最後に、ある人はめぐみさんがいまだ北朝鮮に拘留されていると信じているのですが、そう言った人を見てきた貴方は、観客に彼らの信念と家族の思いをこの映画でどう見て欲しいのでしょうか?
われわれのゴールは、常に知的や政治的やり方でなく、彼ら観客に何か心の中で感じさせることでした。どの国の人でも理解できる家族愛という観点で、横田さんが経験してきた真の困難や苦痛を感じ取って欲しいんです。いつの日か、北朝鮮が明かした事実が確証され、彼ら(横田さん家族を含め)に何らかの心の平穏が訪れることを期待します。
誠実で熱心に語る言葉と泣きながら撮影していたこともあったという彼、目頭を赤くしながらインタビューをしたときに誓ったことは、この映画をあらゆる手段を使って人の目に触れさせることである。きっとわれわれとは裏側に住む人たちにも届かせるとクリスと約束をした。現在、日本と北朝鮮は、安全保障問題の並行方式による協議を継続する事を確認している。
(ニューヨーク:細木信宏)
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細木信宏プロフィール
海外での映画製作を決意し渡米。フィルム・スクールに通った後、テレビ東京ニューヨ-ク支社の番組モーニング・サテライトでアシスタントとして働く。しかし、夢を追い続ける今は、ニューヨークに住み続け、批評家をしながら映画製作をする。 |
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