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『僕の大事なコレクション』特集

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僕の大事なコレクション 4月29日よりシネマスクエアとうきゅうほかにて公開
キーワードで観る『僕の大事なコレクション』
『ロード・オブ・ザ・リング』のイライジャ・ウッドが美しいウクライナの地で、自分のルーツを探す旅をするロードムービー『僕の大事なコレクション』。監督は『スクリーム』など多数のキャリアを持つ俳優のリーブ・シュライバー。初監督作品で、その新たな才能を見せつけてくれた。
 
ストーリー構成のすばらしさだけでなく、物語に登場するさまざまなアイテムやキャラクターがちりばめられた宝石のように輝きを放っている。その輝くキーワードをピックアップしてみた。
ガラクタのコレクション
ジョナサン(イライジャ・ウッド)の生きがいは「収集」。それは趣味という領域を超えライフワークだ。何を収集しているかはあまり人に胸を張って言えるものではない。それは祖母の入れ歯、兄が使ったコンドーム、父が捨てた何かの半券、亡き祖父の遺したペンダトヘッド……などなど、「家族のもの」を収集している。
 
他人にとってはどーでもよさそうなものをジョナサンは透明なビニール袋にパッキングして、いつでも見ることができるように部屋の壁に貼りつけている。それはまるで駄菓子屋に陳列された色とりどりのお菓子のように無秩序に、どこかさびしげで……それでいて精一杯何かを主張している。
 
ジョナサンにとってこれらの物を集めるのは何の意味があるのだろう? ジョナサン自身もそれが分からないでいる。わたしたちにも思いあたることがある。なぜだか分からないが無性に何かにかきたてられるとき、なぜか繰り返してしまう癖など、その行為自体に理由を探すことなんかできない。でも、もしそれを見つけることができたら? この映画はそんな自分探しの物語だ。ジョナサンはある思いを秘めて旅にでる。
サミーデイビス.Jr.Jr
エンターティナーのサミー・デイビスJr.のことではない。犬の名前。この映画で、一番の笑いどころ。そもそもジョナサン(イライジャ・ウッド)は犬嫌い。最初の対面では思いっきり腰が引けている。
 
犬の名前なんて短い方がいいのに決まっているのに、サミー・デイビスJr.だけでなく、さらにJr.をもう一度呼ぶ飼い主のアレックスのきまじめさがなぜだかとってもおかしい。サミー・デイビスJr.だけではいけないのか? だれもがつっこみたくはなるけど、その名前が呼ばれるたびに笑ってしまう。
 
しかも、この小さなボーダーコリーを盲導犬と言い張る祖父。お客様を迎えるために、よそ行き用に着せられている洋服もなんだかとってもお似合いだ。「犬は飼い主に似る」とよくいうが、飼い主のアレックスとその祖父がなんとなく犬のサミー・デイビスJr.Jr.に雰囲気が似ているのは見事なキャスティング!
デコボコ3人
収集癖のオッタッキーアメリカ人青年ジョナサン、ウクライナに住むアメリカ大好きの青年アレックス、そしてその祖父。ジョナサンは、アレックスとその祖父の大事な「客」だ。しかも、大金を払ってくれる。
 
この 3 人のデコボコ珍道中がなんとも楽しい。ウクライナを旅するジョナサンをガイドするアレックスはロシアなまりのヘンな英語を使う。会話がかみあわないことしばしば……でも、そんなことはまったくおかまいなしのおおらかさだ。きまじめなジョナサンはその言葉の意味を真剣に考えようとする。それもまた笑える。
 
祖父のキャラクターも最高。祖母が亡くなったショックで盲目になったと言い張りながらも車の運転をしている。英語はまったく使えないから、ジョナサンに話しかけるときはアレックスをとおしての伝言ゲームになるのだ。
 
そんなデコボコの3人だが、物語のクライマックスでその関係に劇的な変化が生じる。ジョナサンの亡くなった祖父を中心に、3人の隠れていた関係が次第に明らかになっていくのだ。
田舎の風景
物語の舞台はウクライナ。(実際に撮影したのは大半がプラハ)この町の風景がすばらしい! 車の窓から見える風景はどこまでも続く1本道と、どこまでも続く青空。何もない緑の大地。都会に長くいる人にとってこの風景はまさにオアシス。
3人が探す場所はジョナサンの祖父の足跡がある「トラキムブロド」という村。標識もない、歩く人もめったにいない土地でいったい何を手がかりに探せばいいのかさえあいまい。
 
しかし、やがて「トラキムブロド」の町に隠された悲しく、切ない物語も明らかになっていく。ジョナサンにとってそれは自分の中の何かを見つけたことと同じ。
 
圧巻なのはどこまでも続く、あざやかなひまわり畑。地平線まで続く黄色いじゅうたんは、おとぎの国のような美しさだ。その中に建っている小さな一軒家は、まるで美しい思い出に囲まれた小さなハートのように、その扉を開けられることを待っているようにたたずむ。
やがて、すべてを知るジョナサン、そしてアレックスとその祖父。そのとき3人の心に浮かび上がったものとは? 美しい風景と悲惨な過去、そして胸を締め付けられるような思い……ラストは意外にも衝撃的だが、それを深刻に引っ張らない、のどかな田舎の風景に救われる。
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