セカンドシーズン2006年6月 私的映画宣言 2006年6月28日 夏、冬恒例のテレビ番組の解説を収録。テレビは“尺”という単位を頭に入れて話さなければいけないのだが、これがけっこう準備した原稿と合わないの。おまけに超大作モノなんて映画を観られない段階でコメントするので、なんかほとんど勘と根性で乗り切った感じ。しかも毎回そんな感じ。そして次もそんな感じ(←努力しろ) 先日、ロスでWWEのレスラー、ケイン主演の『See No Evil』を観た。面白かったす。が、土曜なのに、デカいシネコンがガラ~ん。ちなみにそのスクリーンにはたった6名の観客。近くに出来たシネコンに客を奪われたらしいが、ホラー映画を観た後に、通路に人の姿のない映画館のほうが怖かった。 先日、クドカン脚本の「メタルマクベス」観劇。当日はW杯開催中、イングランドの初戦の日でもあり、会場にはイングランドのユニフォームの方を約一名発見。ところが、芝居は上演時間4時間越。キックオフの時間は完全にオーバー。彼の真の狙いは何だったのか、他人事ながら、とても気になりました。 ドラマ好きの私はなんたって刑事モノ!だが、最近のお気に入りは『CSI』+『ER』+『モンク』なノリの『HOUSE』。主演のヒュー・ローリーが最高!『プリズンブレイク』『24Ⅴ』『LOST2』も絶好調、「ビバヒル」ファンには『TheOC』がオススメ。サンプルを消化しきれないのが悩み。 デスノート前篇 (C) 大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2006「DEATH NOTE」FILM PARTNERS 「週刊少年ジャンプ」で連載がスタートするやいなや、衝撃的なストーリーが話題となった大人気 コミックを実写映画化。書き込んだ名前の人間に死をもたらすことができる不思議なノート“デスノート”を所有する夜神月(ヤガミライト)の暗躍が描かれ る。監督は『あずみ2 Death or Love』の金子修介。主人公・夜神月を『バトル・ロワイアル』の藤原竜也が演じる。緊迫した展開が終始続く、サスペンスフルな世界観が見どころ。 藤原竜也 松山ケンイチ 瀬戸朝香 監督:金子修介 神のようなパワーを持ったことで正義を履き違えてしまうような勘違い男が主人公の場合、狂気に取り憑かれていく過程の演出が難しいものだと思うけど、デスノートを駆使するライト役に藤原竜也を起用することで上手に省いた感アリ。狂気じみた微笑をやらせたら若手俳優ではナンバーワンなのではないかな? だから映画的にはデスノートのアイテム的な恐怖をジワリジワリと盛り上げることに集中すればいいので、結果、頭脳サスペンスとして面白い映画になったと思う。秋公開の[後編]への期待を募らせるラストも好感が持てたし(原作読んでないので余計に驚いたぜ!!)、久々にスリリングな時間を日本映画で堪能。レッチリのテーマ曲もイカしてます!! まーったく期待せずに観たからなのか、意外とハマった。着ぐるみみたいな死神野郎のリュークがやけにひょうきんなキャラで、傲慢な主人公・夜神月をクールに見下ろしてるのがなかなかいい。とくに、藤原竜也の1人芝居になるところは彼の舞台を観てるようで、後編さらにシェークスピア劇のごとく、悩める主人公を熱演してくれるんだろうなと期待。が、個人的には、L役の松山ケンイチの色気っーか、妖気にヤラレマシタ! 彼のカメレオン役者ぶりには驚く。あ、驚いたついでに、細川&瀬戸カップルのキスの拙さには引いた。藤原と香椎のキスシーンも大事な場面なのに、イマイチ。金子監督、お茶目にカメオ出演してる場合じゃないんでは……。 藤原竜也と松山ケンイチは原作のビジュアルそっくりに作っており、演技の面でも頑張っていた。が、どうにも全体的に安く、子供っぽい印象。リュークのCGでの登場場面もがっかりだし、FBI捜査官メンバーが明らかに演技者でなくモデル風外人なのも苦笑。バイクに乗るわけでもない瀬戸朝香がずっと黒革の上下着ているのも変。見た目重視しすぎて、相当、痛い仕上がり。テーマやストーリーが面白くセンセーショナルなのはわかっているのだから、細部にも力を入れて欲しかった。日本の警察があまりに間抜けに描かれてるのも気になる。主演二人のカリスマ性がもうちょっと強ければ、気にならなかったのかも知れないが。レッチリの主題歌のPVの方がよっぽどクオリティ高いってのはどうなの。 M:i:III (C) 2006 Paramount Pictures. パトム・クルーズが製作と主演を兼ね、名作TVドラマ「スパイ大作戦」をリメイクした人気スパイ・アクションのシリーズ最新作。第3弾となる今作は、TV界 出身の新鋭J.J.エイブラムズが監督に抜擢され、絶体絶命の危機の中でミッションを遂行する敏腕スパイ、イーサン・ハントの活躍を描く。『カポーティ』 でアカデミー賞の主演男優賞に輝いたフィリップ・シーモア・ホフマンが、トムを罠にハメる悪役を怪演している点も見逃せない。 トム・クルーズ ヴィング・レームズ ケリー・ラッセル 監督: J・J・エイブラムス トム・クルーズが主演と製作を兼ねる大人気スパイ活劇シリーズの最新作は、主人公イーサン・ハントが現場から離れ愛する人と平和な生活を送ろうとしているなど、前2作に比べエモーショナルな要素が強まったドラマ重視の展開。が、英国のジェームズ・ボンドの前例しかり、敏腕スパイに平穏無事な生活が送れるはずもなく、史上最悪の危険なミッションに引き戻されてしまうのです。シリーズ映画は回を重ねる度に“この悪党は史上最悪だ”とか“このミッションは遂行不可能だ”とか大風呂敷を広げる宿命にあるけど、これらの課題を乗り切ってしまうのだから、スター映画は貫禄&余裕が違う。やっぱ夏はインパクトの強い、アクション映画に限りますな!! TVシリーズの『スパイ大作戦』ファンだった者としてはトムクル印の映画版は、第1弾から別物と思って見てたが、今回は自分の女を救うために世界を股にかけて戦うという、“愛”に生きる男の話。もはやスパイ映画というより、完全、私生活のトムクルにかぶってる。そう思うと、ミシェル・モナハンの顔がケイティ・ホームズに見えて、仕方なかった私。ただラブな部分を除くと、最初から最後まで息をもつかせぬスリリングな展開。いつも以上に爆薬使ってます、ってな勢いの爆破シーンや超高層ビルの無謀極まりない潜入シーンなど見どころが続き、上海で全力疾走のシーンまである。43歳という年齢も超越して映画のために奮闘のトムクルに、改めてアッパレなプロ根性を感じましたよ。 自分一人の体ではなくなる時期だったためか(笑)、トム自身のアクション場面がこれまでより少なめだったことが気になるくらいか。が、それを補うためにホフマンが走る、走る。オスカー俳優の面白映像は逆にかなり貴重で笑える。さらに今度のイーサン・ハントは完全に恋にのぼせていて、演技が妙にリアル~。映画のなかでも、ソファーで飛び上がって、愛を叫ぶとかやって欲しかった。ヒロインたちも認知度はまだまだながら、好感触。マギーQもクールだし、ケリー・ラッセルの演技もよかった。トムの女優を見極める目は相変わらず確か。ヒロインのキャスティング難航も恋のスキャンダルも結局、味方にしてしまったトム。何だかんだいっても、プロデューサー能力はやっぱり、高い。 日本沈没 (C) 2006映画「日本沈没」製作委員会 小松左京の同名ベストセラー小説を映画化した1973年作品『日本沈没』を、『ローレライ』で長編監督デビューを果たした樋口真嗣が現代にリメイクした衝撃作。SMAPの草なぎ剛と柴咲コウがダブル主演し、未曾有の災害に立ち向かうヒロイックなキャラクターを熱演する。防衛庁や東京消防庁の全面的な撮影協力と日本を代表する特撮スタッフが生み出した臨場感あふれる本格的スペクタクル映像の数々は、日本映画史に名を残すほどの完成度を誇る。 草なぎ剛 柴咲コウ 豊川悦司 監督:樋口真嗣 ゴア元アメリカ副大統領が環境問題に物申すドキュメンタリーが本国アメリカで公開されたけど、『日本沈没』で描かれるドラスティックな天変地異もあながち絵空事ではないかもと痛感した。国家や人類の安全を脅かすのはテロだけではなく、環境破壊に対する僕らの怠慢も含まれているというわけ。そんなリアリティを帯びてきた題材に半分マジで打ちのめされそうになったけど、日本沈没説を唱える天才博士役トヨエツの神がかり的な怪演のおかげで、2時間以上の長尺をなんとか生き延びることができた。格段に進歩したCG映像もまあまあ凄くって、道路が割れてヒトがバラバラ落ちるシーンなんか、ピージャクの『キング・コング』を思い出しちゃったよ。 日本列島が沈没するシュミレーションCGは、確かに怖い。パニックシーンもさながら地獄絵図のようで、オリジナルを凌駕しようという樋口監督の心意気は感じる。しかーし、東宝さん、『海猿』に続いて、また『アルマゲドン』のニオイがするんですが……。おまけに、名だたる俳優たちの見せ場作りのために、無理無謀な設定や展開がいっぱい。ツッコミどころ満載過ぎて、全編、笑かしていただきました。そのほか、野次馬根性丸出しで気になったのが、危機管理大臣役で出演の大地真央。だって、現在、元夫のマツケン映画『バルトの楽園』が公開中に、自分の出演作も公開。まだ対抗意識を燃やしてるんでしょーか……。(ちなみに國村隼はその両作に出演!) 何だ、このキャプションの多い映画は? 豪華キャストが空しくなるほど、文章で説明してくれちゃって! こんなに説明するなら、役者いらないから。しかも説明を文で端折って映像がないにも関わらず、その間もどうやらストーリーは進行しているらしく、突然、恋が芽生えたり、唐突に親子愛語り始められたりして、役者の急激なヒートアップ演技に観る側、置いてかれっ放し。さらに草なぎ&柴咲のクライマックスだけ、PVばりの悠長な展開。前作は怖くて、夢見そうだったけど、本作はあの悪評高い『ザ・コア』よりもひどい。どうでもいいCGばっかりで、日本列島から煙が出てるリアリティや緊張感のない図がしつこく登場。無精ヒゲで男っぽいミッチーを観れたことが唯一の収穫くらいか。 ゆれる (C) 2006『ゆれる』製作委員会 『蛇イチゴ』の西川美和監督が兄弟を主人公に、家族のきずなや絶望からの再生を描くシリアスドラマ。旧知の女性が転落死したことをきっかけに、法廷で裁判にかけられる兄と弟の姿を見つめる。『スクラップ・ヘブン』のオダギリジョーが“自由人”の弟を熱演。その兄役に『バッシング』の香川照之。実際撮影中に意気投合したという2人の息の合った演技が素晴らしい。人間のどろどろとした感情やエゴとそこからの救いを描く。 オダギリジョー 香川照之 伊武雅刀 監督・原案・脚本:西川美和 一人っ子の自分は前々から兄弟姉妹はミステリアスな関係性だと思っていたけど、今回『ゆれる』を観てますますその思いが強くなった。血が繋がっていることのメリット、デメリットを世の兄弟姉妹が考えているのかどうか知らないけど、『ゆれる』の香川&オダジョー兄弟のようにお互いを比較しながら生きるのはツライっすね。比較だけならまだしも、“兄弟だから”という理由だけで取り返しのつかない事態にまで発展してしまう皮肉。僕はこれから“兄になる”ことは間違いなくないはずなので映画を傍観して観ることができたけど、こんな面倒くせぇことに巻き込まれるぐらいなら、いっそ兄弟なんか要らねぇと思っちゃう。それはそれで寂しいか……。 冒頭、オダジョー扮する弟がクルマで帰郷するシーンに流れるベース音効きまくりのBGMに不穏なドラマの幕開けが漂う。この始まりにゾクゾクッ。西川監督にとって、デビュー作の『蛇イチゴ』に次ぐ兄弟の確執ものだが、野村芳太郎監督の『事件』ばりのサスペンスフルなストーリーには釘付けになる。キャスティングも絶妙だ。オダジョーはもちろんだが、律儀で生真面目な兄を演じた香川照之の上手さは出色。『静かなるドン』シリーズ以来のファンの私は、しみじみ見入っちゃいました。ほか、息を呑む法廷シーンで、検察官として登場するキム兄や、新井浩文クンもなるほどな役回りで好演。観客に委ねるラストも好きだなぁ。 『蛇イチゴ』も嫌~な余韻が残る映画だったが、今回もまた、来た~っ!! でもそれが癖になりそう。前回は兄妹だったが、今回は兄弟でやっぱり理解し合えない、むしろ他人より残酷な関係性を描く。同じ遺伝子の要素で、同じ境遇で育つからこそ生まれる、ライバル心、嫉みや羨みのような複雑な感情。持ちたくないけど、理解できる。小規模ながら、あっと驚く展開で、ぐいぐい話を引っ張っていくスタイルは作家性の強いヨーロッパ作品のよう。オダジョーのようなイケメン俳優は30代になるとチャレンジが妙な方向に向かってしまい、下手に三枚目を演じたがって、失敗してしまうものだが、彼の場合、自分の容姿やそれが与える印象をとても冷静に判断していて、賢い。香川照之はもはや当然だが、上手い! ★だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!★ キングス&クイーン 「フランス映画が好き(ミニシアター系に限る)」などとつぶやこうものなら、石でも投げられそうな映画業界。確かに、頭でっかちで観念的、ともすれば嫌味なすかしたテイストは十年一日のごとく。トレードマークともいえる成長しきれないうじうじした男に、いつまでもファムファタル気分で男を振り回す年増の気だるい物語や、ああでもないこうでもないといい年した男女の鬼のようなセリフの応酬は、疲れた大人にはもはや苦行なのだ。好きな人にとっては“それこそがフレンチ”、なのだが。 そんなフランス映画代表のアルノー・デプレシャン、久々の新作がこれ。『そして僕は恋をする』のマチュー・アマルリックとのコンビ復活で、フレンチびいきには嬉しい限り。かなりヘビーな展開の末に、他者との間に家族よりも複雑かつ強い絆のあり方を浮き彫りにして成熟した個人主義を伺わせるあたりは、「だからフランス映画はやめられない」といった感じ。エマニュエル・ドゥヴォスがいい女風なのが納得いかないが、マチューが魅力的なので、ま、いいか。 ADVERTISEMENT