1959年6月16日、アメリカのブラウン管のスーパースターが、すべての新聞の一面を飾った。その名はジョージ・リーブス、彼は1952年秋から1958年春まで、エピソードの数は、104話にのぼる。テレビシリーズ「スーパーマンの冒険」で元祖スーパーマンを演じた男だ。
その日の記事は、アメリカ全土に衝撃を与え、子どもたちを悲しみに追い込んだ。記事は、輝かしいヒーローである彼が銃で頭を撃って自殺したことを告げていた……。
だが、この死は後に大きななぞに発展した。ジョージ・リーブスの死は、スーパーマンを演じ、型にはまった役しか得られぬ極度の精神不安定からの自殺と思われていたが、彼の知人ら周辺がこぞって彼の自殺を疑問視したことで、新たな展開を見せた。
映画会社MGMの有力者の妻との交際、交通事故、結婚3日前の死……と新たな事実が明らかになるたびに、謎はさらに深まっていく……。
今回この事件を映画化した、『ハリウッドランド』(原題)で、事件を追いかける探偵ルイス・シモを演じたエイドリアン・ブロディとMGMの大物の妻トニ・マネックスを演じたダイアン・レイン、そして監督のアレン・コールターがこの映画について語ってくれた。
Q:アラン、これまであなたはHBOテレビの番組から『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』や『SEX and the City セックス・アンド・ザ・シティ』などの数多くのエピソードを監督されてきたのですが、今作が映画での最初の作品で、キャラクターの設定が決まっているテレビ番組の監督から、映画への挑戦は難しかったのでしょうか?
(アレン・コールター) 妙なことに、比較的楽だった。束縛から解放され、テレビではできないことに着手できたしね。それが何だかは、公表はできないけど……。
テレビは、基本的にプロデュサーと脚本家の媒体。それが今回、映画の監督として自分が気になっていた分野で更なる機会を与えられ、そのほかにキャスティングや映像に関してのすべての面を含めて心地よい挑戦になった。
Q:ブロディ、あなたはこれまで、いろいろな役を演じてきたのですが、父親役は初めてですね。なぜあなたがこの役に引かれて演じる気になったのか教えてください。
(エイドリアン・ブロディ)
うん、僕も年をとってきたんだよ(笑)!
脚本は非凡で、微妙なせりふの言い回しなど、良く思考された、まれに見る脚本で、読んだ時に非常に印象深いものだった。この映画が完成するまで結構時間がかかったけど、僕の立場から、この役を理解することは意外と簡単だったんだ。この役自体が大人であり、それでいて子どもっぽい役なんだ。
もっともそれは、僕自身の性格とたいしてかけ離れた役柄じゃないけどね(笑)。皆どのように人生を送るか心に描き、精進している訳だけど、結果は必ずしも自分の描いたものと違っているかもしれない。でも、この映画の通り人は常に向上することを欲しているんだ。
Q:ダイアン、あなたは早い段階からこのプロジェクトに参加し、一貫して演じようとしてきましたよね。そこでトニー・マネックス役のどこに引かれ、演じようと決断したのですか?
(ダイアン・レイン) あなたはそんなことも知っているの? わたしは、前身のプロジェクトの段階からオーディションを受け、その後に脚本が再考され、監督が代わり、多くのことが変わった。
もちろん、わたしもね。(笑)実在の人物を誠実に演じなければいけないという不安で、わたしは現在も生き残っている彼女の親友に話を聞いたけど将来、自分のことを誰かが映画の中で演じるとは思っていないでしょ。そう考えると実在の人物を演じることは名誉なことでまれなことでもあり、何ごとにも代えがたいものだと思ったの。
Q:ばかな質問ですが、なぜタイトルにスーパーマンの文字を使わなかったのですか?
(アレン・コールター) それは、スーパーマンではなく、1人の人間の映画だからだ。われわれは、一人の人生の悲劇をあつかったんだ。
その悲劇の一つが、彼が亡くなった際、すべての新聞のヘッドラインがスーパ-マンが自殺したと、冷やかし半分のばかげたものだったことなんだ。
なぜ、『ハリウッドランド』(原題)(セレブリティを追求した町)というタイトルが気に入ったかと言うと、タイトルに不釣り合いなのではなく、人の精神状態を指しているためなんだ。確かに議論を呼ぶかもしれないけど、今回のケースは、人々がセレブリティ(有名になること)を追求している精神状態が引き起したものなんだ。今では、良く見かける光景だけど、ジョージ・リーブス自身もそれを追求していたんだ。今では、われわれ皆、このハリウッドランドに住んでいると言っても過言ではないでしょう。
Q:ベン・アフレック(ジョージ・リーブス)のキャストには、好印象を受けたのですが、この役自体がベン自身の人生に似通っていて、浮き沈みがありますよね。これは無意識のうちに選考されたものなのですか?
(アレン・コールター) ベンもそのことに気付いていて、彼自身も、ゴシップなどで苦境のときにマスコミから一定の人物像を作り上げられていたよね。
本当のところは、本人に聞かなければ分からないだろうけど、誰かが自分の感情を理解してくれるという幻想を持つことに関して、ベンは深い部分で理解してくれていたんだ。その上、彼は非常に教養が高く、愛嬌を振りまくことなど、ジョージ・リーブスの持つ性格も兼ね備えていて、彼に会ってからはっきりとこの役に適していると思ったんだ。ジョージは実際鼻腔が広がっているため、ベンは鼻に継ぎ足しを入れ、その上に20ポンドも役のため太ってくれたんだ。
Q:探偵ルイス・シモは、ジョージと感傷的な部分で共感を得たのでは?
(エイドリアン・ブロディ) 探偵のシモは多少、同情的な見方をしていたが、彼らには、似通った部分がたくさんあった。その中で明らかなのは、もっと良い状態(生活)を望み、成功し有名になることで、自分の中で足りていなかった部分を埋め合わせようとしたことなんだ。
家族という形態には、彼らは十分準備ができていなかった。探偵シモは、息子を愛していても、どうコミュニュケーションを取っていいか理解してなかったしね。ジョージに対する印象が変化し、それが多くの人の印象と同じだと気付いたとき、ジョージ(スーパーマン)の本当の人間性を、誰も気にしてはいないことを悟ったんだ。
そして、探偵シモは成長し始めていくんだ。
現在この事件現場に居た人々は、全員亡くなっているため、真相は暗闇に閉ざされたままである。鑑賞の際に自分自身でこの謎を解いていただきたい。その謎解きの援助をするのに適した本がある。それは、ジョージ・リーブスの死は陰謀だと告発したノンフィクション「Hollywood Kryptonite」だ。さらに追求してみようと思っている方はぜひご覧になって欲しい。
細木プロフィール
海外での映画製作を決意をする。渡米し、フィルム・スクールに通った後、テレビ東京ニューヨ-ク支社の番組モーニング・サテライトでアシスタントして働く。しかし夢を追い続ける今は、ニューヨークに住み続け、批評家をしながら映画製作をする。
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