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因果なものです。もしも妻アナ(ニコール・キッドマン)が亡くなった翌日、小鳥が飛んできて、小鳥が妻だと言ったら、その小鳥を信じて一緒に暮らす、なんて言ったその日に自分が死んじゃった夫ショーン。いやあ、やっぱすぐに「でも僕は科学者だから生まれ変わりは信じません」と否定しちゃったものだから、「おいおい」と思った神様が、「身をもって体験したまえ」とばかりに、すぐに生まれ変わらせたのか、と思っちゃったですよ、はい。
10年後、やっと立ち直ったアナが再婚を決めた日に、いきなり現れた10歳の少年(キャメロン・ブライト)に「僕は君の夫のショーンだ。結婚するな」なんて言われても、そりゃ困るわね。ま、毎週「オーラの泉」を楽しみに観てる人なら、あっさり受け入れたりできるかも? まーね、ストレートなロマンチストならば、いくら姿は違っても、愛するあなたの目を見れば、すぐにあなただと分かっちゃうわ、のような展開を期待するけど、この映画はそんなベタベタに臭いファンタジーラブストーリーじゃなくて、「んなわけないわよ」が渦巻く現実的なドラマの中に、「不思議」が組み込まれているところが、逆に真の愛をじわじわ感じさせていきますね。
けれど、縁もゆかりもないはずの少年の両親が、同じ名前「ショーン」と命名していたり、少年の父がアナの住む高級アパートで仕事をしていたり、運命的要素もしっかりちりばめられているのがすてきです。しかも夫ショーンの親友クリフォード(ピーター・ストーメア)の妻クララ(アン・ヘッシュ)が、最初から不可解な行動、挙動不審な態度を見せて怪しいし、「寛大でいい人」なアナの婚約者ジョセフ(ダニー・ヒューストン)も、ニヤケた脂ギッシュ暴力オヤジに見えてしまったら、「結婚するな」は忠告かも、なんてサスペンスな思いもめぐらさせられてしまいました。それに、みんな、一見真意のつかめない無表情な上流階級の皆様だし。(ってそういう中での微妙な表情演技がすごい俳優ばっかなのですが)
10歳の少年ショーンも寡黙すぎて、「おい、夫ショーンだって証明できること、もっとずらずら一気に並べあげろよ!」なんて思ってしまうほどなんですが、あ、そうか、無表情で寡黙だからこそ、大人の男の生まれ変わりなんだな、子どもっていうのはもっと表情豊かなのがフツーなんだな、なんて実感します。アナの入浴中に平然と裸になって入ってきて、彼女を凝視しながら「僕の妻を見つめてるだけだ」という静かな口調は、ただの子どもにはできないワザです。ぶったまげ。だけど、ある日突然、「もうあなたの子どもではない」なんて(実の)息子から宣言されちゃう少年ショーン・ママが気の毒で気の毒で。ほんと、いろんな部分で、小鳥ちゃんかわんこにでも生まれ変わってきたら良かったのにね、と思わされます。10歳の子を夫と認めて夫婦生活したら、アナ、つかまっちゃうしー。
ここまでの態度を見せて、アナと2人しか知らないことを知っていても、本当の生まれ変わりかどうかは、まだまだ謎。『記憶の棘』ってタイトルの意味も、ラストで、「あ、なるほど!」と思いながらも、棘が~棘が~、抜けない痛みが~。 |
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