セカンドシーズン2006年9月 私的映画宣言 2006年8月22日 故郷の唯一の映画館が閉鎖するというニュースにショック。映画にのめりこんだ10代の一時期、そこは自分にとって確かに世界の中心だった。エグいホラーでも血みどろバイオレンスでもエロ映画でも、どれほど教育上悪かろうと、学ラン姿の自分を迎え入れてくれた夢のような場所でした。ただただ、寂しい。 ハロプロ・メンバー出演の「リボンの騎士 ザ・ミュージカル」へ。筆者が見た日のトリプル・キャストは石川梨華ちゃん。微妙に音程がズレていた。映画『スケバン刑事』の、取り巻きを連れた学園の女王役がハマっていただけに残念。ガンバレ!チャーミー。 先日、日本代表の対トリニダード・トバコ戦を国立で見てきました。さすが自由席はサポーターの熱気がすごい。乗せられやすい性質の私は、会場で配られた青い扇子を応援のしすぎで壊すほど熱狂。ただ選手の背番号がまだわからず、髪型で判別するしかなかったので、三都主や坪井とか、坊主頭の人くらいしか認識できかなった~。 8月10日はマイ・バースデー。またムダに歳を重ねてしまったんですが、最近、現在人気急上昇の速水もこみちも同じ誕生日だと知った。数年前、取材で誕生日フェチな林家ペーさんを取材したとき、「8月10日」を当ててもらうのに、「アントニオ・バンデラスと同じなんですが…」と言ったんだけど、わかってもらえなかったんだよなー。今なら、もー大丈夫か? キンキーブーツ (C) Buena Vista International. サンダンス映画祭で絶賛され、本国イギリスで社会現象を巻き起こしたハートフルドラマ。ドラッグクイーン用のブーツを作ることになった靴工場の経営者と、 自分らしさを模索するドラッグクイーンの友情物語が展開する。靴工場の経営者を「スター・ウォーズ」シリーズのジョエル・エドガートン、ドラッグクイーン を『堕天使のパスポート』のキウェテル・イジョフォーが好演。笑って泣けて、最後には心が温まるストーリー展開が感動的。 監督: ジュリアン・ジャロルド ジョエル・エドガートン キウェテル・イジョフォー サラ=ジェーン・ボッツ 『フル・モンティ』以降のイギリス製市井コメディーの流れをきちんと押さえている点が、まずいい。失業の危機に追い込まれ、ふんばろうとする人々の姿に自然と感情移入してしまう。それと地方出身者としては田舎の閉鎖的な空気もリアルに感じたし、ドラッグクイーンに対する偏見も"そうだよなあ"と納得。同時に、ゴミ置き場にしゃがみこんで"ここにいると落ち着く"というオカマ姉ちゃんの疎外感にも気持ちがシンクロしてしまう。ひとりひとりの胸の内がわかってしまう、心ニクい作り。それだけに、偏見を乗り越えるきっかけとして設置されたアームレスリングのエピソードにはグッときた。目新しさはないけれど、こういう良質の人情劇はもっと作られていいと思う。 筆者の足は、サイズは24.5cm~25cmとデカいだけじゃなく、横幅もなければ甲も低い。「だから靴はイタリアで買うの」と言えば聞こえがいいが、甲が低いのは単なる扁平足だ。そんな足元の悩みをドラッグクイーンの方たちもお持ちだとこの映画で知り、興味津々。確かに、女性用ヒール靴では男子の体重を支えるには心許なく、ふくらはぎは鬱血しそうだ。それでも彼(彼女?)たちは"美"のために、そして溢れるフェロモンをダーリンにアピールするために、ヒールにこだわり続けている。女性として猛省。ついついラクだし、靴が脱げないから紐靴ばっかり履いていたよ。でも全世界の靴会社の皆さん。扁平足用のオシャレな靴の開発もお願いネ。 デヴィッド・ボウイの歌声で始まるオープニングにやられた。やっぱり英発女装男映画なら、彼へのリスペクトなくしては始まらない。劇中でも彼の名曲「野生の息吹き」のオリジナルが使われていて興奮。キレイなオトコに弱い私にはたまらない1本だった。誰がキレイって、メインのドラァグ・クイーン役のキウェテルじゃないことは確か(あまりにごつくてメイクしてもシアターブルックのタイジにしか見えない。脚こそきれいだが)。彼ではなく、その周りのエンジェル・ボーイズがホント魅力的なのだ。まさに70年代ロンドン。メインのキウェテルよりずっと念入りな化粧と凝った衣装はどう見ても本物、全員、自前と見た。実話ベースのストーリーだが、話そっちのけでビジュアルに目を奪われっ放しだった。 X-MEN ファイナル ディシジョン (C) 2006 TWENTIETH CENTURY FOX 人気アメリカンコミックを映画化した大ヒット・アクションシリーズの第3作。遺伝子の突然変異で超人的パワーを得たミュータントたちを主人公に、人類との 共存の道を探る彼らの壮絶な戦いが描く。監督は『レッド・ドラゴン』のブレット・ラトナー。『ヴァン・ヘルシング』のヒュー・ジャックマン、オスカー女優 ハル・ベリーらが主人公のミュータントを演じる。シリーズ史上最大級の戦闘が繰り広げられる怒とうの展開に興奮必至だ。 監督: ブレット・ラトナー ヒュー・ジャックマン ハル・ベリー イアン・マッケラン 回を重ねるごとに主要キャラが増えていくのは、このシリーズの場合、仕方がないだろう。にしても、生え抜きレギュラーの扱いが巨人軍以上にぞんざい過ぎる! あっけなくフェイドアウトするサイクロップス、ほとんど活躍しないローグもかわいそうだが、3作通して全裸ペインティングでがんばったミスティークの扱いはヒドいんじゃないの……と男性ファンとしては憤りを隠せないのだが、そんなキャラクターへの思い入れを抜きにするとアクションのスケールはシリーズ随一で満足。金門橋をアルカトラズ島に架けてしまう、恐れ知らずの発想に拍手喝采でした。マジメなブライアン・シンガーが監督を続けていたら、このトンデモ・アイデアは実現しなかっただろう。 映画『NANA』には出来なかった出演者全員の続投を、『X-MEN』は3度も達成(笑)。巨額なギャラの力なのか? それとも出演者がとっても良い人たちばかりなのか? でも、肝心なブライアン・シンガー監督を逃してしまったのは痛かった。本作品を蹴って撮った『スーパーマン リターンズ』の出来が良いだけに尚更だ。今回は新薬誕生でミュータントがそのまま生きるか、人間になるかの苦悩がメーンのはずなのに、なぜか生き返ったジーン姉さんが、これまたなぜか分からぬパワーを発揮して大暴れ。『ラッシュアワー』のラトナー監督だけにドタバタ、はちゃめちゃがお好みのようで。ちなみに『NANA』の場合は監督が替わった方がむしろOK! 可もなく、不可もなく。これまでの作風を踏襲しながら、最後だからキャスト全員に均等に見せ場を作ったって感じ。ラトナー監督のバランス感覚には拍手。やはり、シンガー監督のお気に入りサイクロップス(「スーパーマン・リターンズ」まで連れてった)の出番は少なめ。そして、前作ではいろんな能力のミュータントが登場して楽しかったが、今作の新メンバーに限ってはエンジェル以外、その能力の必要性がいまいち疑問視されるメンツだらけ。それにしても、マグニートーのフェイスマスクには最後まで慣れなかった。彼がデカ女ジーンと練り歩く場面はどう見てもゲイパレードの仮装。もちろん最高に気になるのは、誰が見てもクライマックスのウルヴァリンの服はなぜ下半身だけ溶けないか、だろうけど。 グエムル -漢江の怪物- (C) 2006 Chungeorahm Film. All rights reserved. 韓国の人々のオアシス、漢江(ハンガン)に突如出現した怪物を巡る事件に肉迫するパニック映画。怪物に娘を奪われた一家の奮闘を描く。情けない父親から一 変、闘うお父さんを体当たりで演じるのは『南極日誌』のソン・ガンホ。その妹役を『リンダ リンダ リンダ』のペ・ドゥナ、弟役を『殺人の追憶』のパク・ヘイルが演じている。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどを手がけたニュージーランドの WETAワークショップが、魚に似たリアルな怪物を作り上げた。 監督・原案・脚本: ポン・ジュノ ソン・ガンホ ペ・ドゥナ ピョン・ヒボン 怪獣映画、泣ける家族愛のドラマ、ダメ男のコミカルな奮闘記、米国批判の視点を持つ痛烈な社会派映画……納豆をツマミにワインを傾けながらヘビーメタルを聴いている、そんなムチャクチャな組み合わせが自然に受け止められるように、これらが違和感なく併走する奇跡の逸品。最初は誰もモンスターだと気づかず、川にやってきたアザラシのような感覚でエサをあげたりしているノンビリ・ムードから一転、大パニックに転じるオープニングに引き込まれたと思ったら、参列者号泣の葬儀の場でドロップキックが飛び出す。悲劇と喜劇、緊張と脱力の絶妙の配合。予定調和に陥らない、予想を裏切る展開に驚きを禁じえない。マジで今年の個人的ベスト候補。 ガンバッているとは思うが、どーも納得いかなかった『海猿』&『日本沈没』。その理由を、本作品を見てよく分かった。愛する娘がナゾの怪獣に奪われたパク一家。彼らは政府が制しようが、その怪獣がどれだけ危険なのかとか全く意に介さず、ただ闘うのみ! いや~、実に痛快だ。そうそう、危機に面した時に、思い出に浸っていたり、プロポーズしているような余裕はないんだよ。まして日本の場合、自衛隊の協力を仰いでいるから仕方ないが、『グエムル』では弱者をないがしろにする政府を批判し、しゃしゃり出てきた米国までぶった切る。ポンちゃんの反骨精神に、改めて惚れました。どんなジャンルであれ、要は自分が何を描きたいかだよネ、ポンちゃん。 怖すぎて笑ってしまうこと数回。まるで遊園地の絶叫マシーンに乗っているような興奮状態。邦画の特撮ものだとむしろ脱力の笑いだったりするのに、なんだ、この体感! ハリウッドものと違って微妙に暗いのもまた怖い。ゴジラが核実験によって生み出されたものなら、こちらは産業廃棄物垂れ流しが要因。そんな気味の悪い何者かもわからない怪物に立ち向かっていくのは普通の人々。しかも家族というのが面白い。それぞれが非力ながら助け合い、末娘の救出に挑む。カッコ悪い急ごしらえの戦隊もの的なチームだから、応援したくもなる。長女のアーチェリーの才能は後々生かされるんだろうなとは気づいても、なかなか一筋縄ではいかない。エンディングもちょっと意外で、監督らしい白々しくない展開だ。 40歳の童貞男 (C) 2005 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. 40男の"ロスト・ヴァージン"を描いた、おかしくて愛おしいコメディ映画。自分だけの世界に生きていた男が、人生の伴侶に出会うまでの紆余(うよ)曲折 を下ネタ満載のギャグで笑い飛ばす。エキセントリックな主人公を演じたのは、『奥さまは魔女』のスティーヴ・カレル。彼を大きな愛で包む心優しい恋人役に 『マルコヴィッチの穴』のキャサリン・キーナー。純粋に誰かを愛すること、相手を受け入れることの大切さを教えてくれる。 監督: ジャド・アパトー スティーヴ・カレル キャサリン・キーナー ポール・ラッド 一時はビデオスルーの可能性も囁かれたが、何はともあれ祝劇場公開。いい歳をして性体験のない主人公のいじられっぷれはもちろん笑えるけれど、彼をとりまく経験者たちの先輩面や勘違いもおかしい。ここぞとばかりに不要のエロビデオを主人公に押し付けるなんて、やってしまいそうだ。とにかく、セックスをステイタスのように考える男子社会を丸ごと笑ってしまおうじゃないの、という姿勢に好感が持てる。実際、性体験があるからといって恋愛上手とは限らないワケで、その辺の男のイタさが他人事と思えないほどリアルに伝わってくる。肉体的な童貞なんてかわいいもんで、精神的な童貞の方がずっと問題だよなあと、しみじみ思う40歳の夏……。 中身は、女性となかなか上手くいかない男性のラブラブ大作戦。40歳の男性が主人公と珍しいだけであって、『アメリカン☆パイ』のような青春コメディと何ら変わりません。ゲイの友人も「40歳で童貞の、何が悪いの?」とごもっともな意見を申しておりました。でも、おたくとかニートとか、人と真っ正面で向きあえなくなっている人が増えている現在、何とも目の付け所の良い企画じゃないですか。そもそも37歳独身の筆者にとっても、他人事とは思えぬ問題。今更結婚相手を捜すとなったらバツイチ、年下、ワケあり。つまり40歳童貞も参考内でありまして……。受け入れられるか否か。本作品を見ながら熟考。コメディの皮をかぶった社会派映画。奥が深い。 女に縁のないオタク男がその純真さで本当の恋を獲得……って、日本なら『電車男』。なのに、こっちは分不相応なエルメス級美女でなく、高校生の娘がいるオバサンをゲット。そんな40過ぎの二人が人目を気に(してくれ!)せず、いちゃつく姿がキモかわいい。特にそのおばさん役であるキャサリン・キーナーが童貞男相手にはにかんだり、すねたり……その痛々しさが癖になる。『カポーティ』より、こっちの演技を評価するべきだ。40歳で童貞と聞けば、誰もがひくはずなのだが、彼がまともにみえるくらいで周囲の人がおかしい。浮気男、ストーカー、変態……なかでも最高だったのは40歳過ぎのセフレ募集店長役のジェーン・リンチ。童貞男も引いちゃう熟女の猛モーションは爆笑。選曲センスも好き。 ★だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!★ マイアミ・バイス 80年代に大ヒットした人気刑事ドラマの製作総指揮に関わったマイケル・マンだが、映画『マイアミ・バイス』にはTV版の影も形もほとんどなしっ! ヤン・ハマーのテーマソングはなく、エンディングにフィル・コリンズの『夜の囁き』のカバーが流れるぐらいなのにはがっかりした。とはいえ、『コラテラル』でも使ったHDカメラを使った臨場感たっぷりな映像にはシビレる。冒頭、夜のマイアミを背にたたずむコリンとジェイミーからはちょいワルなオヤジ臭までが漂ってきそうだし、銃撃シーンの迫力には身震い。『ヒート』以上の壮絶な撃ちあいで、銃弾のリアルな音にはマジにのけぞりました、私。肝心な潜入捜査の話は失速し、大味なラブシーンなどツッコミどころ満載だが、寡黙で渋々なオヤジの世界が好きな私のツボを押しまくり。あと、悪党ホセを演じたジョン・オーティスに惚れた。コン・リーに嫉妬し、憎悪しながら、涙を浮かべる。メガネ顔がまたいーんだ、コレが。 ADVERTISEMENT