セカンドシーズン2006年10月 私的映画宣言 2006年9月24日 『ワイルド・スピードX3…』の公開を記念したイベントで本物のドリフト走行を体験。映画のカー・アクションを監修した土屋圭市氏率いるチームの車に乗ったはいいが、案の定、激しい車酔いに。だいたいタクシーですら酔う体質なのに、ドリフトなんてドクターストップ級の自虐行為。ミーハーな性格が裏目に出た32歳の夏……。 今週末、引っ越しなのだが、全く何もやっていない。そのせいで夜も不安で眠れない(起きているなら、やればいいのに)。現実から逃げられるのは試写室だけと飛び込めば、やたら主人公が引っ越す映画を見るはめに。しかも『アダム』2回、『手紙』は5回以上。ああ、映画みたいにすぐ次のシーンでは片付いた新居での新生活……ってなれ! 遅い夏休みで、屋久島に行った。根がアウトドア派じゃないのに、付き合いで行くハメになり、どんなことになるかと心配していたが、ミヤザキハヤオな世界にしっかり浸って、ウルルンな旅を堪能。絶対にいつかは縄文杉まで歩いてやろうと思ったっす。 仕事中、ネットで調べ物をしていたらYOU TUBEで“SORAMIMI”というキーワードを発見。クリックしてみると、過去の「空耳アワー」の映像が大量にリストアップされた。一個一個再生する度に爆笑。書きかけの原稿に再びとりかかったのは、それから3時間後。仕事にならねえよ! ブラック・ダリア (C) 2005 Millennium Films. All Rights Reserved. 『L.A.コンフィデンシャル』の原作者としても知られるジェイムズ・エルロイの同名小説を 『アンタッチャブル』の名匠ブライアン・デ・パルマが映画化。40年代のロサンゼルスを舞台に、女優志望の女性が惨殺された“ブラック・ダリア事件”を追 う刑事ふたりの運命が描かれる。主演は『パール・ハーバー』のジョシュ・ハートネットと『アイランド』のスカーレット・ヨハンソン。残忍な事件の全ぼうが 徐々に明らかになるサスペンスの醍醐味と、濃厚で艶めかしい人間ドラマが絶妙なバランスで絡み合う。 ジョシュ・ハートネット スカーレット・ヨハンソン アーロン・エッカート 監督:ブライアン・デ・パルマ 誰にでも好きな監督っているでしょう? 僕にとっては本作のブライアン・デ・パルマ監督は特別な存在で、『アンタッチャブル』で心ウチ抜かれて以来(これが初とは遅いけど)、盲目的に追っかけている監督のひとり。だから作品に対する評価だってどうしても甘め、という私情を完全に抜きにしても、これかなりイイのでは? 元来『虚栄のかがり火』などの原作モノや『ミッション:インポッシブル』などのリメイク系など既存のモノを映像化するのが得意な監督だけに、まさにブラック・ダリア事件はうってつけのネタ。なにより独特の演出法を崩さず、60歳を過ぎても自分のやり方で仕事するってステキ。観たかったデ・パルマ映画にまた会えて嬉しい。 クラシックに仕上げるためなのか、やたら役者の演技が芝居がかっている、特に脇。普段そういうテイストではないスカーレット・ヨハンソンやアーロン・エッカートらはそれでも勘がいいのか、違和感なく存在しているのだが、ジョシュがまずい。完全に目が泳いでる。しかも元ボクサーの警官たちが交錯する男たちのドラマのはずなのに、ヨハンソンの存在感が完全にジョシュを上回り、立場なし。頑張ってジョシュ。それにしても最後まで謎に包まれた映画だった。というのも、ヒラリー・スワンク演じるマデリンのそっくりさんがエリザベス(ミア・カーシュナー)という殺された方の女性のはずなのだが、口や目、眉の感じから、どう見ても似ているのは生きている方の女性ローナ(ジェミマ・ルーパー)なのである。ひどく不親切だと思った。 原作を読むと、そもそも主演ジョシュはミスキャスだと思うし、彼が最高の美女と絶賛するのが、ヒラリー・スワンクってのもムリがあるなど、文句はいろいろ。ストーリーも端折りすぎてわかりづらく、猟奇殺人事件の謎解きも肩透し。でも、冒頭のボクシングシーンでわざわざドピュッ!と飛ばした血を大写しにしたり、殺人現場を俯瞰で撮ったり、エルロイの世界でデ・パルマおやじが遊んでます。それに、デ・パルマの手にかかると女性がエロい! その昔『殺しのドレス』を観たとき、一見品よさそうな女性も猥雑に撮るところが好きで……。今回はただでさえ、顔がエロいスカーレット・ヨハンセンがいつもに増してエロい。なんて満足して☆4つ。 フラガール (C) 2006 BLACK DIAMONDS 昭和40年代、福島県の炭鉱町に誕生した常磐ハワイアンセンターにまつわる実話を基に、フラダンスショーを成功させるために奮闘する人々の姿を描い た感動ドラマ。『69 sixty nine』の李相日監督がメガホンをとり、石炭から石油へと激動する時代を駆け抜けた人々の輝きをダンスを通じて活写する。主演の松雪泰子をはじめ、『花 とアリス』の蒼井優や南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代らが魅惑的なフラダンスを披露する。 松雪泰子 豊川悦司 蒼井優 監督・脚本: 李相日 エネルギー転換でパワーバランスが変わりつつある炭鉱町。そこにまつわる人間ドラマがテンコ盛りで、とにかく濃厚な内容にお腹いっぱいに。ただ、ラストで披露される完全版フラダンスショーの迫力にはマジ驚いた。同時に建設中のハワイアンセンターの全貌が明らかになって、これって思いのほかビッグなプロジェクトだったんだなと。それと小さな気づきなんですけど、時代の流れに乗り切れないで固執しているのは良くないですね。新しいモノを受け入れない姿勢って決してホメられたもんではないと思う。まぁそこで頑張ってた人がこれまでの生き方にサヨナラをして新たな道を模索する過程がなければ、人間ドラマとしては面白くはないのですが……。 『リトル・ダンサー』の感動再び。しかも、またしても同様の場面で号泣。前回はバレエに反対する父親が子供のためにスト破りする場面で泣いてしまったのだが、今回もフラに反対する母親(富司純子)が炭鉱の人を相手に娘のためにアクションを起こす場面で嗚咽。さらに他にも泣きポイントが次々に襲いかかり、涙を耐えるのが大変。覚えているだけでも5回はあった。蒼井優がいいのはいつものことなのだが、しずちゃんや徳永えりといったこれが初の大役といった感じの人たちも安定した演技で泣かせてくれる。そして驚いたことにかわい過ぎるよ、しずちゃんが! 笑えて、泣けて、音楽が耳によく残って、人情もので、よくできていて……どこか懐かしい香りのする正しい邦画。老若男女楽しめるのでお正月公開でもよかったかも。 炭鉱の町に、常夏のハワイを作る! 当時を再現したセットがリアルなだけに、常磐ハワイアンセンターを作った人々はエラいっ! と、感じ入ってしまった。物語はプロジェクトX的な話なので、周囲の反対や、いっしょにフラを始めた仲間が離脱するなど、さまざまな困難が主人公・蒼井優に降りかかり、それを乗り越えていく……というお約束通りの展開だが、蒼井優ほかキャストがフラを上達させていく姿も手伝って感動させる。とはいえ、試写時、私の隣にいた女性は泣きのポイントとおぼしきところで見事にハマり、大泣き。そんな泣きじゃくりを耳にしてたら、わたしゃ、完全に引きました。蒼井優ちゃんの腰のフリの素晴らしさと女をあげた松雪泰子には感動したけどねー。 ワールド・トレード・センター 9.11同時多発テロの標的となったワールド・トレード・センターを舞台に、大惨事から奇跡的に生還した男の姿を描く実話を基にした感動ドラマ。監督は『アレキサンダー』のオリバー・ストーン。『ナショナル・トレジャー』のニコラス・ケイジと『クラッシュ』のマイケル・ペーニャが、ワールド・トレード・センターに閉じ込められた警官を演じる。生粋のニューヨーカーであるストーン監督がリアリティにこだわって撮り上げた迫力の映像と人間ドラマが見どころ。 ニコラス・ケイジ マイケル・ペーニャ マリア・ベロ 監督:オリバー・ストーン 事件当日「これオリバー・ストーンがそのうち絶対映画化する!」なんて言ってましたけど、本当に実現。現実が映画を越えてしまった日でもあって、そんなフザけた会話をしないと事態を受け入れることができなかった幼かった自分を思い出す。映画は渦中のビルに閉じ込められた警官たちの奇跡の生還をリアルに再現する内容で、“激突”という映画で扱いたいだろう題材をメインに据えなかった点に好感を持った。ご存知の通り社会派監督として形容されるストーン監督。今回は『アレキサンダー』の迷いはなく、水を得た魚のようにメガホンを振っていたろうとは思うけど、テロがなければ本作のような渾身作もなかった。そんな矛盾に胸が苦しくなります。 ニコラス・ケイジがモデルになったおじさん警察官に似せているのだが、それが無理な感じがなくて好印象。痩せていい感じに枯れて、普通のおじさんでよろしい。ケビン・コスナーがやらなくて本当によかった。ケイジとペーニャ演じる警官が表向きの主役だが、ベロとギレンホールが演じたそれぞれの妻たちの演技が素晴らしい。「おんなたちの忠臣蔵」か。ヒーローの影に良妻の支えあり。衝撃だったのはウィリアム・マポーザー。この時期、救出現場に彼のキャスティングはまずくない? 『LOST』を思い起こさせ、「この人、大丈夫?」とイメージ先走り。スティーヴン・ドーフも危険。久しぶりに大作で彼を見ることに違和感。そして何より気になったのはモデルになったご本人たち。登場するのはいいが、2回も出ないで、気が散る~。 オリバー・ストーンというと、数日間、胃に重たくのしかかるような作が多いのに、意外なほどあっさり。もっとも、一機目の飛行機が突っ込む瞬間、機影だけが映るシーンに、ベン・スティラーの『ズーランダー』の看板が入り込む。あの頃の公開作だったんだと思う反面、こんなところに引き合いに出されるベンがお気の毒。ま、主演ニコラス・ケイジが今までになく体を引き締めて渋い中年オヤジと化しているあたりに意欲を感じるのだけど、話自体はワールドトレードセンターという場を抜きにすると、フツーの感動作になっている。想像による話で構成した『ユナイテッド93』のほうが、よっぽど9.11テロについて改めて深く考える作になっていたことを思うと、なんで今回オリバー節をさく裂させなかったのか、ホント不思議。 レディ・イン・ザ・ウォーター (C) 2006 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved アパートに突然現れた妖精のような娘と、彼女を救うために団結する住人たちを描いたファンタジードラマ。娘の正体を突き止め、奔走する管理人に『サイドウェイ』のポール・ジアマッティ、住人たちの運命を予言する謎の娘に『ヴィレッジ』のブライス・ダラス・ハワード。M.ナイト・シャマランが脚本・製作・監督を兼任し、現代のおとぎ話を独創的なアプローチで演出する。伏線を張り巡らせた巧妙なシャマラン式の脚本にうならされる。 ポール・ジアマッティ ブライス・ダラス・ハワード フレディ・ロドリゲス 監督・製作・脚本: M・ナイト・シャマラン シャマラン作品を観る人は、毎回『シックス・センス』を期待すると思うんです。今回のシャマランはその期待に応えようとしているのかどうか分からないけど、なんか微笑ましいサプライズを用意。まずそれがカワイイ。ストーリー的には乗っかれば楽しめるし、乗っかれなくても展開の巧妙さにビビルって感じでしょうか。おとぎ話のように地に足の付いていないファンタジックな日常を送っている自分などは、まったく話自体に興味ないのだが、ちょっとしたシャマランのイイ話にに丸め込まれた模様。ちなみによく行くパチンコ屋にシャマラン監督そっくりなガイジンの客がいるの! 彼は座ると毎回、即座に当てるのだが、この話にオチはありません……。 ここまでオリジナルブランドを作り続けられるシャマランは間違いなく天才。ただし、本人はもっと評価されたいのか、回を追うごとに出たがりに。この調子じゃ次回は主演? 今回の役だって、自分の作品が世の中のためになるという男の役。きっといつかは彼自身そうなるだろうに、自ら声高にそんなこと言い出すなんて、どこまで褒められれば満足なのか。まあ才能がある彼だってそうなのだから、凡人住人の登場人物たちが皆、嬉々として、次々に役割を引き受けてしまうのもしょうがないのだろう。世の中の役に立っていることを実感したがる、自分探し人間が集合した住宅の物語であった。キャラが豊富で、RPG風なのは楽しかった。特に韓国人母子がユニーク。韓国人同士の会話って外人から見ると、怒っているように見えていいのね。 『アメリカン・スプレンダー』や『サイドウェイ』など、サエない男をやらせたらピカ一のポール・ジアマッティ。今回も中年オヤジのうらぶれ感を漂わせて、人生を諦めたような男を好演している。だが、ブライス・ダラス・ハワードはデカくて重そうで、水の精の柄じゃない気がするが、彼女を使えば、パパ、ロン・ハワードの恩恵があったりすんのか?と、うがった目で観る私には、今回のファンタジックな話は全くピンと来ず。むしろ、同じアパートに住み暮らすだけで国も人種も異なる住人が力を合わせ、怪獣もどきが出てくる現実か、幻かわからぬ世界で展開するトンデモ話に、ふと『LOST』と似たようなものを感じた。シャマランにTVドラマを作らせたら案外面白い作品ができるんじゃあ……。 ★だれが何と言おうとこの映画を愛します宣言! ライターが偏愛してやまない1本をご紹介!★ マーダーボール (C) 2005 EAT Films LLC. ALL RIGHTS RESERVED “殺人球”というタイトルは凄いアクション映画を連想させるが、これは立派なドキュメンタリー。しかし、それは当たらずとも遠からず、であった。マーダーボールとは、パラリンピックの正式種目になっている車椅子ラグビー(ウィルチェア・ラグビー)のこと。とはいえ、ここで訴えているのは“体の不自由な人たちがこんなに頑張っているんです”という教育映画的なことではない。カスタマイズされた車椅子に乗って試合に臨む彼らは「マッドマックス」シリーズに出てきそうなワイルドな戦士そのもの。戦士に哀れみをみせるなど、失礼なことだ。その試合の重量感もさることながら、選手や監督たちのドラマがしっかりとらえられ、気持ちが高まらずにいられない。 選手たちは私やあなたのように酒を飲む、バカ騒ぎもする、ケンカもナンパもセックスもする。見上げも見下ろしもせず、あくまで人間の目線で捉えた熱血アクション・ムービー。友達になりたくなる、そんな野郎どもの奮闘に男泣き必至だ! ADVERTISEMENT