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サイエントロジーの事務所で、ストレス診断テストを受けるこはたとガイドのレイナルドさん。 |
サイエントロジーと言えば、トム・クルーズやジョン・トラボルタが信仰している宗教として有名。と同時に、「カルトっぽい」「お金をふんだくられるのでは?」「洗脳されるのでは?」などといった、マイナスイメージを持つ人たちも、アメリカでは少なくなくありません。でも、トム・クルーズは、わたしが会ったスターの中では、最も誠実な感じを受けた人の一人。へんてこりんな宗教に洗脳されている人には見えません。「こうなったら、もう自分の目で確かめるっきゃない!」とサイエントロジーへの取材を敢行しました! |
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サイエントロジーの生みの親、人気SF作家としても知られていたロン・ハバード氏。父親がアメリカの海軍で仕事をしていたため、少年時代に中国や日本など、アジアで過ごし、仏教思想に触れたことも。1986年にこの世を去った。 |
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今回取材をしたのは、サンセット通りにあるサイエントロジーの事務所。ガラス張りで、ダイナミックな外観だ。 |
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建物の受付。 |
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取材を許可してくれたトムさん。なぜわたしの取材をOKしてくれたのかと聞いたら、「こはたさんは、ほかのメディアにはない、礼儀正しさと、根気強さがあった。」とのこと。とてもうれしかった。 |
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ノエルさん。とても、孫がいるとは思えない若々しさ。ダンサーでもあるので、体がものすごく柔軟。床にぴったり手がつく! |
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ストレス診断テストや「オーディティング」のときに使われるエレクトロ・メーター。わたしの場合は、とにかく針が振れっぱなしだった。 |
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試写室。ここでサイエントロジーの紹介ビデオを見せてくれる。 |
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ハバード氏の代表作「ダイアネティックス」の日本版。このほかに、各国の言葉に訳されている。 |
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アカデミーと書かれた部署。ここから奥は、信者専用。向こう側では、若い生徒たちが「オーディター」になるための授業をこれから受ける。若いメンバーには、親がサイエントロジーの信者であるという、2世メンバーが多い。 |
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サイエントロジーの電光掲示板。「ストレス診断テストを受けませんか?」という文字が今は出ている。「無料です。どうぞ、お入りください。」という文字も。でも、一人で入るのには、ちょっと勇気がいるかも。
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*発端*
1954年にサイエンス・フィクション作家、ロン・ハバードによって設立された宗教。1950年に、彼の著書「ダイアネティックス」が出版され、ベストセラーとなる。そこに書かれている人生をより良くしていくためのユニークな方法論を、ロン・ハバード本人から直接学びたいという人たちが集まり、それがサイエントロジー教会の発端となったそう。
*オーディティング*
方法論の核となるのが「オーディティング」と呼ばれる、マンツーマンで行うカウンセリングのようなメソッド。これを受け、自分の成長を無意識に妨げている、過去のトラウマなどの原因を発見し、すべて取り除くことで「クリア」という段階に到達することが目的。例えば、成功の一歩手前でいつもくじけてしまう人。オーディティングを受けることにより、小さいころに「お前はだめだ」と言われたことが、原因だったと気づく。すると、その過去から解き放たれ、自由になれる。「クリア」の段階に達すると、自分の本来のあるべき姿が現われ、能力も意識もパワーアップするそう。仏教などで言う、「開眼」みたいなものなのか?
*目的*
「基本的に人間は善である」と考え、ロン・ハバードが開発した様々な方法によって、「具体的」に悩みを解決し、人生をより良くしていくことが目的。サイエントロジーは「実践的宗教哲学」だそう。だから、信仰心は無くても良いし、ほかの宗教を信仰していてもかまわないそう。メンバーにとって、ハバード氏は「友人」のような存在だという。 |
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興味本位にアプローチするメディアにうんざりしてたのでしょう。なんと、取材許可が下りるまで、3か月もかかってしまいました! 根気よくやり取りを続けてくれたPR担当のトムさんと会うことに。
「なんだか、緊張するなあ。誰か、一緒に来てもらえればよかった……」と一瞬、不安が頭をよぎる。
気を取り直して、いざサイエントロジーの建物内に突入! すると、トムさんをはじめ、PR担当のノエルさん、ガイド役のレイナルドさんの3人が、温かく出迎えてくれました。そして、まず始めに紹介してくれたのは、サイエントロジーの本のコーナー。さすが作家だけあり、「ダイアネティックス」を始め、ハバード氏の著書が多数並びます。目に付いたのは、人生の問題を具体的に解決する、マニュアル本シリーズ。「幸せな結婚生活を維持する方法」や「仕事で成功する方法」など、ハウツー本として、思わず手に取りたくなる? 次に「ストレス・テスト」を受けられる器具(エレクトロ・メーターというそうです)を発見! わたしも恐る恐る体験してみることに!
アルミの筒のようなものを、両手で一個ずつ握ります。微量の電流が流れているそうで、「ストレスを感じたときに、この針が大きく触れます」とガイド役のレイナルドさん。
「気分の良くなることを思い浮かべてください」と言われたので、いいなと思っている人を思い浮かべてみました。すると、ストレスなど感じるはずはないのに、大きく針が振れました!
「その人のことを考えると、どうやらストレスを感じるようですね」とちょっと笑いながらレイナルドさんに言われてしまったわたし。えー!? そんなはずはない……。というか、何も考えてなくても、わたしの場合、筒を持って座っただけで、針がビヨンビヨン、振れているんですけどー!! うーん、わたしにとって、このエレクトロ・メーターはあまり効かないのかも……? |
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さて、次は、試写室。ここでは、「サイエントロジー」の紹介ビデオを観せてくれます。スーツを着た「まじめハンサム系」の男性がガイドとして登場し、1993年にアメリカの国税庁に正式に「宗教団体」であると認められたことや、現在、世界で一番急成長している宗教であること、また、さまざまなボランティア活動もおこなっていることなど、サイエントロジーとはなんたるかを紹介していきます。
最後は、メンバーたちがサイエントロジーによって、自分の人生がどれだけ変ったかを話しています。ハリウッドスターのジョン・トラボルタも登場したので、さあ、トムも出るぞ、出るぞ! と、待っていたのに、なぜか現れない。トムさんに理由を聞いたら、「彼ほどのスターに、わざわざ紹介ビデオに出てもらうのは、気が引けたのかもしれませんね」との答えでした。
さて、サイエントロジーの核となる「オーディティング」。わたしも受けられるかどうか聞いてみました。小さいころから極度の「注射嫌い」なので、その発端がわかるかも!?
すると、「取材のためにオーディティングを受けるのはどうでしょう。もし、本当に自分のために受けたいと思われていたら別なのですが」とトムさんに言われてしまいました。
とても残念だったけど、時間もかかるだろうし、受けたらやっぱり記事に書きたくなると思ったので、それ以上は押しませんでした。 |
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さて、そろそろ、気になるお金について。
「メンバーになると、オーディティングを受けたり、そのオーディティングを行うオーディターになるためのトレーニングを受けたりと、様々な授業を受けますよね。それにはどのくらいのお金がかかるんですか?」と、トムさんに聞いてみると、「ある程度のレベルまで行くのに、大体4年かかります。なので、費用は4年制の大学に通った場合と同じぐらいだと考えてください。」
ほほう……。4年制の大学。それは、かなり「本格的」な金額ですね。
「そうですね。でも、オーディティングは技能を持ったプロが行うものなので、それを受けるときは、当然彼らのサービスに対して報酬を支払う必要があるわけです。でも、訓練中のオーディターとパートナーになり、お互いにオーディティングをやり合うことで、費用を大幅にカットすることができますよ。」と、トムさん。
また、人生の問題解決法の授業などは、ワンコースが、30ドルから80ドルと、そんなに高くないそう。
「サイエントロジーの金額はすべて明確に表示されてあります。メンバーが受けたい授業やトレーニングがいくらか、はっきりしているので、見えない献金や寄付金を要求されることはありません」とのこと。 |
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ところで、サイエントロジーのメンバー同士、仲良くなったり、助け合ったりするんでしょうか。
「サイエントロジーのメンバーであるというだけで風当たりが強いですからね。お互い助け合うようになる」とトムさん。
その辺失礼だと思って、あまり聞けなかったんですけど、風当たりって、やっぱり強いんですね。
「悪いイメージを持っている人たちにいつも聞くのよ。『ロン・ハバードの本を読んだことがありますか?』って。皆『ノー』と答えるわ。想像だけで、いろいろ言っている人が多いんです。そのときは、サイエントロジーを理解してもらうように、説明するんです」とノエルさん。
*ノエルさんがメンバーになった理由*
最初の結婚がうまくいかなかったので、こちらの結婚のコースを受けたの。ものすごく勉強になったわ! おかげで今はすてきなハズバンドを見つけることが出来てとってもハッピーよ。
*トムさんがメンバーになった理由*
学生時代、何をやってもうまくいかなかった。でも、サイエントロジーのコースを受けたことで、いろいろなことが前向きに考えられるようになったよ。 |
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一日のツアーだけではなんとも言えないけれど、「カルト教団」「洗脳される」「お金をふんだくられる」といったイメージは、今日の取材からは、まったく感じられませんでした。
ただ、今まで、マイナスなことを書かれたこともあったのでしょう。彼らが取材に対し慎重になっていることは確かで、わたしも遠慮がちになってしまったことがちょっぴり残念。欲を言えば、出入りする若い信者たちに、自由に話しを聞きたかったし、ズバズバ質問したいこともたくさんあった。でも、それは、もっと時間をかけて、信頼を築いたうえでやれることだと思いました。
同時に、ほかのメディアをどんどん断っている中、わたしのような外国のメディアに心を開いてくれたことは、とても感動! わたしの質問1つ1つに、何時間もかけて説明してくれた彼らの姿に、きゅんとくるものがありました。
今回の取材を通して、サイエントロジーとは、それを必要としている人や、それに救われた信者の人たちにとっては、かけがえのないもので、他人がどうこう言うことじゃないのかもしれないと感じたのでした。
……というわけで、3か月間待ったサイエントロジーの取材。たくさん聞きたいことを残しながらも、わたしの中では、忘れがたい体験となりました。 |
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