『ありがとう』特集
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。多くの尊い命が奪われ、多くの人たちの心に深い傷を残した。そんな中で、被災しすべてを失いながらも、街の復興に力を尽くす一方で、プロゴルファーを志した男がいた。今もシニアツアーで活躍するプロゴルファー古市忠夫氏を主人公にしたノンフィクション「還暦ルーキー」を基に映画化。主演・赤井英和ほか、田中好子、薬師丸ひろ子をはじめ、豪華ベテラン陣が顔をそろえるほか、人気スターたちがカメオ出演しているのも話題だ。勇気と希望を与えてくれる感動作の見どころをぜひチェックして、映画館へ行こう。
神戸市鷹取商店街で、カメラ店を営んでいた古市忠夫。1995年1月17日未明、いつもと同じように寝室で寝入っていた。だが、突然の激しい揺れに目覚めた彼は尋常ではない様子に、妻・千賀代と二人の娘を避難させると、街の消防団の一員として救助活動に向かう。しかし、外に出て目にした街の光景は昨日までとは一変。あるはずの建物は倒れ、押しつぶされ、その中には仲間や隣人が下敷きに。忠夫は救いたくても救えず、なす術もなく、ただ、ぼう然とするばかりだった……。 劇中では、当時のニュース映像をはさみながら、阪神・淡路大震災が発生したその日、突然見舞われた不幸に戸惑うしかなかった人々の姿が、主人公・忠夫の目を通して描かれる。高速道路がなぎ倒され、炎で焼き尽くされた街は、まるで地獄絵図のよう。その地震の大きさに改めてあの日のことを思い起こさずにはいられない。そして一瞬にして、幸せを奪われた人々の哀しみ、苦しみには胸が詰まる。 |
何もかも失い、日々泣いてばかりの妻・千賀代。そんな妻に、「生かしてもろてんねん、文句言うたらあかん」と励まし、街の復興のためボランティア活動に奮闘する忠夫。だが、復興のやり方に街の人々の意見が対立し、思うように進まない。話し合いの席でもイラ立つ忠夫だったが、そんな彼を救ったのは震災で長年連れ添った妻を失った街の長老だった。街の人々もようやく一致団結。多くの命を救えなかったという悔しさから、「震災に強い町を作ろう」と頑張る忠夫。その熱意が街の人々すべてにうまく伝わらないあたりは歯がゆくて、思わず忠夫を手助けしてあげたくなる。そんな彼の気持ちをくみ取る長老が毎日、海を見に行っては、亡くなった妻との思い出に浸るシーンには涙誘われる。 |
ある日、忠夫は自分の車が震災にもめげず、無事だったことを知る。その車のトランクにはゴルフバックが無傷のまま入っていた。それを見て、何か運命を感じた忠夫は「プロゴルファーになる」という目標を掲げる。そして、プロテストに挑むため、憑かれたように毎日練習を続ける忠夫。そんな姿を、最初は呆れたり、バカにしていた街の人々は忠夫の懸命な姿に励まされ、中には一緒になってスウィングの練習をする者も現れるようになる。昔から、夫のゴルフ好きをよく思っていなかった妻の千賀代は冷たく、無謀な夢と相手にもしないが、次第に忠夫の真剣さに心打たれて、見守っている。そんな夫婦の支え合いや、父を思う娘の気持ちがあたたかく描かれている。プロテストを受験のため出発する朝、親友や街の人々が忠夫を温かく送り出す。そんな彼らに忠夫が「ありがとう」と感謝するシーンには、人の心の優しさ、ぬくもりを感じる。 |
ゴルフのプロテストに臨んだ忠夫。若いゴルファーたちに混じって、忠夫だけが白髪交じりの頭で頑張っている。彼の担当になったキャディは「プロテストはその人の人生を決めるから、苦手」と敬遠気味。だが、ほかのゴルファーたちが神経をピリピリさせる中、忠夫はプレッシャーにも負けず、プロテストを楽しみ、一日一日、ゴルフコースに感謝しながら自分の力を出していく。そんな様子に、キャディも「きっと古市さんなら、大丈夫です」と励ましていく。まるで夫婦愛にも似た信頼関係で、テストに挑む忠夫とキャディの支え合いには胸が熱くなる。そして夢をあきらめず、今、生かしてもらっていることに感謝の気持ちを忘れない忠夫に、“ある奇跡”が訪れる瞬間、スクリーンにくぎ付けになるはず。 |
未曾有の災害にもくじけることなく、「生かしてもらってることに感謝して生きる」という主人公・古市忠夫を演じるのは赤井英和。熱血漢で情にもろく、家族にはちょっと困り者な父親を好演。そんな夫を支えるしっかり者の妻に、田中好子。またプロテスト会場で忠夫の真摯(しんし)な態度に胸を打たれて、彼をサポートするキャディを演じた薬師丸ひろ子の演技も光る。そのほか、「えっ!?」と目を疑ってしまいそうなほど豪華スターたちのカメオ出演。永瀬正敏に豊川悦司、佐野史郎、仲村トオルなど、思わぬシーンに登場。また吉本新喜劇の役者やお笑い芸人も多数、顔をのぞかせている。どこに出ているか、要チェック! |