『墨攻』アンディ・ラウ 単独インタビュー
何を解決するときも“勇気”というものが一番重要
取材・文・写真:シネマトゥデイ
ハリウッドをも熱狂させた『インファナル・アフェア』シリーズで、警察に潜入するマフィアを熱演。香港四天王として、20年間にも渡って活躍し続けている香港のトップスター、アンディ・ラウが来日を果たした。今回アンディが挑戦したのは、日本のコミックスを映像化した『墨攻』。戦乱の世の中国で攻撃せずに防御だけを貫く“非攻”を掲げていた墨家の天才戦術家・革離(かくり)を知的に、クールに、そして人間味たっぷりに演じたアンディが、日・中・韓合作の超大作『墨攻』を語った。
理想を持ち、信念の固い“革離”に引かれた
Q:“革離”という主人公のどんな部分に魅力を感じて、出演を決められたのでしょうか?
僕が彼に魅力を感じたのは、理想を持っているということ、そして信念のすごく固い人間だというところでした。それはわたし自身とも共通している点でもあるし、人間というのは、理想を持つことが必要だと思っているからです。
じん帯を切るアクシデントも……
Q:撮影ではハードなアクションシーンも多かったようですが、一番大変だったことは?
一番大変だったのは寒かったことです(笑)。ロケ現場がすごく寒かった。そんな中で、ヒロインを演じたファンを水にもぐって助けに行くシーンを撮影したんですが、とにかく水が冷たくて大変でした。
Q:一度、中国の新聞に大ケガをしたという記事が出て大騒ぎになったそうですね。
そんなにたいしたケガではないんですが、足を痛めてしまったんです。じん帯を切ったので、動けなくて、固定するために大きなギブスをはめて、車椅子に乗っていました。撮影が2週間ぐらい遅れましたけど、なんとか撮影に戻れて良かったです(笑)。
“革離”だったら、どんな風に感じるかを常に意識した
Q:革離には、歩いているだけでも独特なオーラがありました。ああいった迫力はどこから出していったんですか?
オーラ(笑)? それは編集や効果で、そう見えたんだと思います(笑)。僕は撮影してる途中、特に何をやろうとか意識していたわけではないので(笑)。ただ、役作りに関して“革離”は、墨家という思想を持った、ある種の生徒であったわけですから、彼ら墨家の考え方、行動というのをどういう風に演じるかということには、とても気を遣いました。“革離”のどんな行動にも、大きな愛を持って苦難に直面していくことを大切にし、彼だったらどういう風に考えるかということを常に意識しながら演じました。
Q:“革離”は、10万の兵を持った国に、たった一人の知略で戦いを挑むという難題を押し付けられました。ご自身が役者として、大変な難題をぶつけられたときはどうやって対処されるのでしょうか?
難題が起こったときに、どう対処するかはそれぞれ違うと思いますが、何を解決するときも“勇気”というものが一番重要だと思います。勇気がないと、問題の解決には到達しないわけですから。壁にぶつかってしまったとき、「どう解決するか」という問題ではなく、まず勇気を持って「その苦難に直面できるかどうか」ということが大切だと思います。
“革離”が感じた戦いのむなしさを、一緒に感じてもらいたい……
Q:本作を観ると戦いの無意味さを痛感させられますが、現代の世界情勢も踏まえて、あなたの意見を聞かせてください。
人類は、その歴史が始まってから「戦い」というものが尽きたことはありません。実際多くの人が、自分の子どものために愛を持って、歴史や文化などを守ってきました。でもそのために、人が血を流す意味はあるのか。この映画が出来上がって、皆さんに観ていただいて、どれくらいの影響が与えられるか、僕自身もちょっと分からないですが、少しでも多くの人に、人と人とが殺し合うことの悲しさ、革離が感じたむなしさを分かっていただけたらと思います。
Q:日本のスタッフや韓国の俳優と一緒に『墨攻』という映画を作られて、これからのアジア映画に対するあなたの期待は?
期待はとてもありますよ。アメリカの映画は、われわれが作るようなアジア映画ほどバラエティーにも富んでないと思っています。これから、アジアの映画は国境を越えてだんだん良くなっていくと思います。
アジアのトップスターでありながらも、自ら丁寧にあいさつをし、握手を交わす姿はまさに紳士! “心から愛している”恋人のような存在である映画について語りだすと、身を乗り出しすぎて、どんどんソファからずり落ちていってしまうおちゃめな一面も見せてくれた。次回作の役作りのために、坊主頭になっていたアンディはTシャツとジーンズにスニーカーというとても40代には見えない“好青年”! すでに出演作は100本を越えたというアジアの大スターにこれからも大いに期待したい!
『墨攻』は2月3日より丸の内ピカデリー1ほかで公開。