今年のアカデミー賞は、国際色豊かで粒ぞろいといわれています。それだけに、どの作品がとってもおかしくないほど接戦です。シネマトゥデイでは、私的映画宣言<セカンドシーズン>のライターに今回のアカデミー賞の行方を真剣勝負、本音で語ってもらいました。
下馬評通り、主演女優賞は間違いなく『クィーン』のミレンだと思うが、ここはあえて『ボルベール〈帰郷〉』のペネロペちゃんに。で、主要6部門をマイノリティーが占拠! 今のハリウッドは彼らによって支えられていることを象徴するようなノミネート作品・俳優の数々なので、せっかくだからこの機会に、白人至上主義の、考えの古い連中の鼻を今こそへし折ってやれっ!という心情である。とはいえ、アカデミー賞は例年、底意地の悪い結果を人々に投げつけるからなァ……。すでにノミネートの段階で、論議を醸し出しそうな不穏な空気がプンプン。オリジナル歌曲賞に3曲もランクインするなど、他の部門でも多数ノミネートされている『ドリームガールズ』が、なぜか作品賞には漏れた。主演女優賞に至っては、5人中米国女優はたった一人で、もはやどこの国の映画祭だ!?ってな感じだ。まっ、WOWOWが放送するアカデミー賞授賞式のメインパーソナリティは「SAMP」の木村拓哉だし、もう世の中何でもアリってことで(笑)。
作品賞
『硫黄島からの手紙 』
監督賞
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
『バベル 』
主演男優賞
フォレスト・ウィテカー
『ラストキング・オブ・スコットランド
助演男優賞
エディ・マーフィー
『ドリームガールズ 』
主演女優賞
ペネロペ・クルス
『ボルベール<帰郷>』
助演女優賞
ジェニファー・ハドソン
『ドリームガールズ 』
『硫黄島からの手紙』
(C) 2006 Warner Bros. Entertainment Inc. and Dreamworks
LLC. All Rights Reserved.
フォレスト・ウィテカー『ラストキング・オブ・スコットランド』
(C) DNA Films Ltd and Channel Four Television Corporation
2006
よく言えば、今までになく国際色豊か。候補作も監督も俳優も世界的にばらけた感じ。悪く言えば、口うるさい批評家とか、世界各国のメディアに気を使いまくった感じがミエミエ。ヒネてる人間にはハリウッド&アカデミー会員たちの心の広さというより、傲慢さとかいやらしさを感じるんですけど……。うがち過ぎ? で、裏予想として、物申したいのはまず主演女優賞。ミレンは女優として好きだが、個人的には『あるスキャンダルの覚え書き』のデンチに絶対あげたいっ! 孤独すぎる人間の悲劇&喜劇をリアリティたっぷり見せてくれる。「007」ではM役で寝姿まで披露したんだから(見たかないが……)合わせ技でどーよ。あと、この作品ではケイト・ブランシェットの夫役、ビル・ナイが素晴らしい。助演男優賞を個人的にはあげたい。『リトル・ミス・サンシャイン』のアーキンも好きだが……。それから、ウィル・フェレル主演の『主人公は僕だった』が全くノミネートされなかったのが、残念。せめて脚本賞に名があがってもいいぐらいのオリジナリティはあったと思うが。よくわかんない基準ですな、アカデミーは。
作品賞
『バベル 』
監督賞
ポール・グリーングラス
『ユナイテッド93 』
主演男優賞
フォレスト・ウィテカー
『ラストキング・オブ・スコットランド』
助演男優賞
エディ・マーフィー
『ドリームガールズ 』
主演女優賞
ヘレン・ミレン
『クィーン』
助演女優賞
ジェニファー・ハドソン
『ドリームガールズ 』
『バベル』
(C) 2006 by Babel Productions, Inc. All Rights Reserved.
ポール・グリーングラス『ユナイテッド93』
(C) Universal Studios Photo by Jonathan Olley
思い入れナシ、ト○カ○チョならコレ!という真剣(?)予想。『バベル』みたいな映画は最近のアカデミー賞の好みと思われる。が、スコセッシにはそろそろあげないと……というアカデミー会員の心情が反映されてもおかしくない。俳優部門はほとんど本命寄りだけど、ヒネッたのは助演男優賞アーキン。順当ならエディだろうけれど、この人がアカデミー会員に好かれているとは、どうしても思えない。ならば年長者に……というのもアリなんじゃないか。思い入れで言うなら、『硫黄島からの手紙』とイーストウッドにあげたいけれど、監督協会賞にスルーされた時点で不利は否めない。もっと思い入れこみで言わせてもらえば、『ユナイテッド93』が作品賞候補からもれていたり、『トゥモロー・ワールド』がまったく無視されていたりするのは不満。さらにさらに思い入れて言うなら、『スネーク・フライト』や『ホステル』『THE HILLS HAVE EYES』をシカトする賞なんて、どうでも いいよ。まあ、シカトされて当たり前なんですけどね……。
マーティン・スコセッシ『ディパーテッド』
(C) Warner Bros. Entertainment Inc.
ヘレン・ミレン『クィーン』
(C) Miramax Films
『バベル』の作品賞受賞は十分、有り得るけど、監督賞とダブル受賞するほどの傑作でもない。その代わり監督賞は、今度こそイーストウッドを抑え、ついにスコセッシが受賞。しかも『ディパーテッド』でというのがミソ。ファン、そして誰よりも本人が一番、納得いかないであろう意外な作品での受賞、という展開がアカデミー賞と相性の悪いスコセッシらしくていい。どうにもすっきりしないスピーチ希望。オスカー相性悪仲間のレオはまだ時期尚早。もうちょっと寝かせられる可能性大。主演女優の理由は唯一のアメリカ人女優だから。もしかしたらペネロペ。イギリス人女優には助演はいいけど主演はあげないと思う。助演男優は『リトル・ミス・サンシャイン』で何かとるとしたら、この辺りしかないから。助演女優は増やした体重の量が多いハドソンが凛子より有利。ボディスーツ着ちゃったアビゲイルちゃんは論外。今年は、どれも捨てがたくてというパターンではなく、どれを選んでもそんなに大差ないって感じの混戦状態だ。絶対ないのは助演男優のマークくらいで、何が起こっても不思議じゃない。思わず贔屓してしまう作品もないなぁ。
プラダを着た悪魔
TM and (C) 2006 Twentieth Century Fox. All rights
reserved.
ジェニファー・ハドソン『ドリームガールズ』
今回もっとも気になったのは『ディパーテッド』の各部門へのノミネート。ご存知、レオ様&スコッセシ監督のコンビだけれど、まずノミネートされるほどのデキだったかという素朴な個人的感想が強い。彼らは“持ち上げられて落とされる”仕打ちには慣れているだけに、仮に受賞を逃したとしても精神的なダメージは少なかろう。しかし、スコッセシにはそろそろあげないと寿命がヤバイかも……。一方、監督賞は『バベル』のイニャリトゥとクリントのどちらかが受賞すると予想するも、昨年の“バラバラ受賞”パターンを思い出して作品賞が『バベル』、監督賞はクリントへいく結果を切望。主演男優&女優賞は前哨戦たるゴールデン・グローブ賞を参考のうえで選んでみたので手堅く、予想屋的な勢いにかけるものの、注目すべきは『ドリームガールズ』のジェニファーとエディの新旧コンビ。劇中の彼らの演技を観ながら、まず頭に浮かんだのがアカデミー賞のこと。大期待!
作品賞
『バベル 』
監督賞
クリント・イーストウッド
『硫黄島からの手紙 』
主演男優賞
フォレスト・ウィテカー
『ラストキング・オブ・スコットランド
助演男優賞
エディ・マーフィー
『ドリームガールズ 』
主演女優賞
ヘレン・ミレン
『クィーン』
助演女優賞
ジェニファー・ハドソン
『ドリームガールズ 』
エディ・マーフィー『ドリームガールズ』
TM & (C) 2006 DreamWorks, LLC. All Rights Reserved.
(C) 2006 Warner Bros.
Entertainment Inc.
近年の傾向とはいえ、お祭り気分を盛り上げてくれる作品が少なすぎてテンションがあがらない。せめて『ドリームガールズ』コンビにはがんばって欲しいが、助演女優もバラザだったりして!?と一抹の不安も。作品賞の中では『クィーン』が好きだが受賞はありえない。本命は『バベル』なのか?と思いつつ、ここはテーマもメッセージもより明確でストレートだった『硫黄島からの手紙』で。監督賞はぜひともグリーングラスにあげたいなぁ。“こんな年に『アビエイター』があったらね……”と何度も嘆息してしまうスコセッシは、まだ次がある!と信じて。主演男優は心からウィテカーにとって欲しいが、見てもいないのに『ヴィーナス』(原題)のオトゥールがなぜか気になる(笑)。『クィーン』のミレンの受賞は固そうだけど、『あるスキャンダルの覚え書き』のデンチもすごかった。毎回ベストの演技なのに『恋におちたシェイクスピア』で受賞とはなんの因果かと思うが、それがオスカーってもんなんでしょう。
作品賞
『硫黄島からの手紙 』
監督賞
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
『バベル 』
主演男優賞
フォレスト・ウィテカー
『ラストキング・オブ・スコットランド
助演男優賞
アラン・アーキン
『リトル・ミス・サンシャイン 』
主演女優賞
ヘレン・ミレン
『クィーン』
助演女優賞
ジェニファー・ハドソン
『ドリームガールズ 』
アラン・アーキン『リトル・ミス・サンシャイン』
(C) Twentieth Century Fox Photo by Eric Lee
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ『バベル』
(C) Paramount Pictures and Paramount Vantage
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