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青い空、白い雲、そして、さんさんと輝く明るい太陽。こんな当たり前の風景が、近い将来、変わってしまったとしたら……。ダニー・ボイル監督の最新作『サンシャイン 2057』は、太陽滅亡の危機に瀕した50年後の世界を描いている。太陽って、いつか消えてしまうの? そのとき、地球はどうなるの? 映画の世界をより深く理解するための重要なキーワード“太陽”について、ちょっと勉強してみましょう! |
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約46億年前、宇宙にある巨大なガス雲の中の物質が凝縮し、中心部の温度と圧力が上昇して核融合が始まった。これが、太陽の誕生である。その寿命はおよそ100億年とされ、まだ半分も過ぎていない計算になる。太陽の一生で考えれば、現在は働き盛りの中年といったところ。およそ50億年後には水素を使い尽くして赤色巨星となり、衰退の途をたどり始めるが、少なくとも、いま生きている我々が太陽の最期を見ることはなさそうだ。 |
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『サンシャイン 2057』の舞台は今から50年後の2057年だが、早くも太陽の滅亡が目前に迫っているという設定。衰えた太陽は、もはや地球上で人類が生き延びるために必要なエネルギーと太陽光を供給しない。太陽からの恵みを受けられなくなった地球は、氷河期に突入している。そこで、人類は起死回生のプロジェクトを立ち上げた。死にゆく太陽を再び活性化させるべく、核爆弾を搭載した宇宙船を飛ばすのだった。 |
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地球から太陽までの距離は、約1億5000万キロ。これは、東京とニューヨーク間を約7500往復できる距離である。あまりにも膨大な数字なので実感するのは難しいが、例えば時速4キロで歩くとすると、片道だけで4000年以上かかる。時速300キロの新幹線を使っても、片道50年以上はかかる。1秒間に地球を7回転半するという秒速30万キロの光の速度をもってしても、地球と太陽の間を往復するには16分を必要とする。 |
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現実問題として太陽まで新幹線で行けるわけはないから、ロケットで考えてみよう。ロケットの地球脱出速度は約11.2km/s、時速にすると約4万キロなので、単純計算すれば太陽までは片道160日前後で到達するということになる。だが、しっかりルートが定められている道路や線路、視界の利く空路とは違い、宇宙の航路は単純ではない。『サンシャイン 2057』の劇中でも、思わぬアクシンデントによって、計画が大幅に狂っていく……。 |
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遠く離れた地球に熱を送ってくる太陽は、それ自体が非常に高温な物体だ。太陽の中心部では水素が核融合反応を起こしてヘリウムに変換され、毎秒400万トンのエネルギーが作り出されている。その中心部の温度は1500万℃にもなり、表面温度でも6000℃もある。ちなみに1気圧(地上)では、鉄の融点(固体から液体になる温度)は約1800℃、沸点(液体から気体になる温度)は約3100℃。うかつに太陽に近付けば、何もかも無に帰してしまう。 |
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『サンシャイン 2057』に登場する宇宙船イカロス2号は、シールドで太陽光線から船体を守っている。観測ルームではサングラス着用の上で、シールドを調整して太陽光線を浴びることができる。だが、太陽が放つ全熱量のわずか数パーセントを受けただけで、乗組員の生命に危険が及んでしまう。それはもうヤケドするとか、焼け死ぬとか、そういうレベルではない。まさに、融けて消滅してしまうほどの強烈なエネルギーなのだ。 |
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もし太陽がなかったら、地球は冷え切ってしまい、人類はおろか生命体が存在することはできない環境になる。また、地球は太陽から重力を受け続けて公転しているので、太陽が消滅して重力の影響がなくなったら、地球は宇宙のどこかへ飛んで行ってしまう。太陽の光で植物が光合成を行い、酸素を生み出すからこそ、地球上の生命は存在できる。太陽エネルギーはすべての生命の源であり、人類は太陽がなければ生きていけない。 |
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『サンシャイン 2057』において、イカロス2号に乗り込んだ8人の乗組員の目的は、もちろん地球を救うこと。太陽の学術的研究でもなければ、ましてや太陽の観光ではない。だが、次第に太陽に魅せられていくクルーの描写がある。精神科医の乗組員が観測ルームで太陽光を浴びることを「すごいヒーリング効果がある」とみんなに勧めるほどだ。生命の源たる太陽には、人類があらがえない不思議な吸引力があるのかもしれない。 |
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