『世界はときどき美しい』松田龍平 単独インタビュー
最初で最後の親子共演かもしれないので、貴重な作品です
取材・文・写真:シネマトゥデイ
5つの美しい映像短編から作り上げられた、シネポエム(映画詩)『世界はときどき美しい』本作の第4章『スナフキン リバティ』に主演したのは、『悪夢探偵』『長州ファイブ』など、最近ますます活躍がめざましい松田龍平。第1章『世界はときどき美しい』に、母親である松田美由紀も出演している。本作が初めての親子共演となった松田に、映画のこと、演技のこと、そして母のことを語ってもらった。
初めて母の作品を観たとき、自分が出るとは思ってもいなかった
Q:この作品を観たときの印象を教えてください。
1話目の母(松田美由紀)が出ている作品は、だいぶ前に観させてもらったのにも関わらず、印象に残っていますね。あの作品は、自分の作品よりもずいぶん前に撮っていたから、それはそれでひとつのものだと思っていたんです。その後に、依頼のお話をもらって、オムニバスの物語全部で『世界はときどき美しい』という作品になることを知ったんです。
Q:お母様の作品を観たときは、自分が出るとは思っていなかった?
そうですね、どういう風に考えていたのかは、監督にしか分からないんですけどね。自分が出るとは全然思っていなかったです。
Q:『悪夢探偵』などアクの強い役が多いですが、今回のような等身大の男性の役はいかがでした?
やっぱり何もないところでのセリフまわしや、現場の雰囲気で役を作っていくっていうのは意外と難しいんですよね。考え方次第では難しくないのかもしれないけど、でも何かに偏らせて演じたほうが自分の中でも楽しかったし……。たとえば『悪夢探偵』ような偏った役は、逆にイメージが作りやすくて、そのイメージを大切にしながら演じるっていうのはすごく楽しいんです。でも、今回の役は、脚本を読んだときに御法川監督のイメージがすごく強かったですね。監督とは、昔からの知り合いだったので。
Q:現場の様子はいかがでしたか?
演出が結構細かったんですよ。たとえば、最初の車のシーンとかそんなに暑い時期ではなかったのですが、脚本の設定が暑い時期だったので、「すごく暑い! みたいな感じでお願いします」って言われて……。演じながら、自分では気分的にぎこちなかったんですけど、映画観たらそんなことはなくて「あれ? 結構自然だったな」と思いました。
Q:御法川監督の演出で面白いと思ったところはありましたか?
台本にないセリフを、おれには知らせず、相手役の浅見さんにだけ教えたり、逆におれにだけ教えたりして、本番で相手の反応を楽しむっていう演出がありました。本番にいきなりそれをやられると「えっ?」みたいな。「そんなリアクションなかったでしょ!? 」っていう(笑)。そういう演出は楽しかったですね。
自分の母さんが出ている作品を敬遠していた
Q:母親の松田美由紀さんが主演されているエピソードを観ていかがでしたか?
すごいな~、と。でも、ずっと自分の母が出ている作品を敬遠していたっていうか。子どものころは、ドラマとかでやたらセクシーな役とかやっていると、なんとも言えない気分でしたね(笑)。でも、最近舞台をやっているのも観に行ったんですけど、普通の人が感じる「すごい」と、息子として感じる「すごい」は違うと思うんで、どう表現していいのか分からないけど、とにかく“すごいな”とは感じましたね。
Q:ご自分とお母様の親子関係をどう思いますか?
普通じゃないかな。反抗期とかダサいんで言いたくないですけど、あったかもしれないし。今でもけんかするときはするけど、けんかの仕方がだんだん変わってきたかな。おれからは、あんまりしないな(笑)。仕事については、やっぱりお互い言われる筋合いはないと思っているので、あまり干渉しないですね。
Q:もし親子でまた共演するとしたらどんな役でやってみたいですか?
もうやらないです(笑)。今回もやると思っていなかったし。親子での共演は……うーん、やらないですね、きっと(笑)。でも、今回は貴重な経験になりました。
松田龍平が、『御法度』でデビューしてから、約10年が経った。現代の若者たちには、いまや「松田優作の息子」でも、「松田美由紀の息子」でもない、「松田龍平」という1人の役者としての魅力が浸透し、多くのファンからカリスマ的な人気を集めている。「最近、やっと母親がすごい!」って素直に思えるようになったと話す松田龍平には、10年間、役者を続けてきた自信がみなぎっていた。役者として、どんどん変化を遂げてきた彼が、これからどう変身していくのか、松田龍平から目が離せない!
『世界はときどき美しい』は3月31日よりユーロスペースにて公開。