はっきり言って現在の日本は“バカ映画”に冷たい。この範疇にくくられる作品の主要供給源であるジャンル=コメディーやB級映画は、もともと日本では当たらないとされておりビデオスルーが当たり前だったが、最近ではDVD化さえままならない。洋画大作の一極集中的な売り方や日本映画バブルなど理由は色々考えられるが、それにしても冷遇され過ぎ。くだらない、下品と決め付ける観客の意識にも問題がある。旅客機内の毒ヘビ・パニックがバカらしいなら、蜘蛛に刺されてヒーローに変身したり、イカ面のバケモノと海賊が戦ったりする方が、よっぽどバカバカしいじゃないか。要は飲み会のバカ話に笑うぐらいの気持ちで、無防備なバカになって映画と接してもいい、ということ。心をオープンにして楽しんでしまいましょう!
アドレナリンを出し続けないと死んでしまうという、毒薬を射たれてしまった殺し屋。そんなワンアイデアだけで面白さは保障されたようなもの。自分を興奮させるためにドラッグをキメるだけでなく、カーラジオの音楽に合わせて無理矢理ヘッドバンギングしたり、むやみに他人にケンカを売ったり、チャイナタウンのド真ん中で恋人とエッチしたり。主人公が必死だからこそ、これらのハチャメチャな行動が笑える。夏休み映画のイチ押し!
護送中の裁判の証人を殺すために、マフィアが旅客機内に送り込んだ刺客は無数の毒ヘビ! 機内を混乱させて機を墜落させるという目論見は、他の乗客には迷惑な話だが、パニック映画としては大歓迎のシチュエーション。ヘビのグロさの中にも、“体のココに噛み付けば笑えるぞ”という見る側の期待に寸分違わず応える、かゆいところに手の届く描写は、まさに娯楽映画の鏡。冒頭とラストの、まばゆいビーチの無意味な映像にもサービス精神を感じる。
『ボラット』でアメリカをオチョクりつつ全裸バトルを演じて好評を博している(?)サシャ・バロン・コーエンの、もうひとつの快作。ラッパーに見えない、トロそうなヒップホップ野郎が伝統ある英国議会に議員として殴りこむという、ムチャクチャだが痛快な展開。下ネタで政治を笑い飛ばし、返す刀で王室までギャグにしてしまう、怖いもの知らずの笑いはコーエンの真骨頂。日本では決して作れない、ある意味過激なバカ映画である。
『スネーク・フライト』ではヘビが旅客機をパニックに陥れるが、こちらはゾンビ。貨物室に持ち込まれた、ウイルスによってゾンビ化した屍が人間を襲い出して機内が地獄絵図と化す、モロにB級な作りはヘビに負けていない。特に、それまで貨物室だけにいたゾンビが床下からボッコン、ボッコン出てきて客室を客室を血みどろにする急展開は凄い。一応スリラーなんだけど、ゾンビ化したCAや尼さんのビジュアルが、妙にノンキだったりする。
全米での大ヒットから約1年待たされて、ようやく日本でDVDリリース。ウィル・フェレルふんする天才的ナスカー・レーサーの栄光と挫折というスポ根ドラマの定番的展開にギャグを盛り込んだ作り。主人公は、好調時はムチャクチャいい気になり、不調時になると泣きわめく幼児的キャラに。この落差の大きさが漫画的で面白い。ライバルを演じるサシャ・バロン・コーエンの、ボラットともアリ・Gとも異なるスノッブな妙演も絶品!
独身時代なら付き合って面白い、ハメを外しすぎる友人も、結婚後はハタ迷惑な存在になりかねない。学生気分が抜けない、そんな困った男に『ウェディング・クラッシャー』のオーウェン・ウィルソンがふんして、友人夫婦の新婚生活をかき乱す。女を連れ込んでフェティッシュなプレイに興じたあげく、夫婦の愛の巣を燃やしてしまっては同情の余地ナシだが、それでもオーウェンだから憎めない。バカの反面、振り回される夫婦の描写はけっこうリアル。
大学入試に失敗した少年が厳格な親の手前それを打ち明けられず、架空の大学に入ったことにして、そのHPまで立ち上げたら全米中の落ちこぼれが殺到。やむなく少年はニセ大学を運営するハメになる……。やり過ぎもここまで来ると立派で、ニセの校舎にニセの寮、ニセ教授まで作り出すのだから、さすがバカ映画。『ドッジボール』で注目され、『ダイ・ハード4.0』でブルース・ウィリスの相棒を演じるジャスティン・ロングが主演。同作に併せて日本公開祈願!
『バス男』のジョン・ヘダー主演とくれば、やはりダメ男ストーリー。ヘダーがふんするのは、好きな女の子の前に出ると緊張してぶっ倒れてしまうほどの小心者。そんな彼が、タフガイを養成する自己啓発スクールに通い、ビリー・ボブ・ソーントン演じる鬼講師のシゴキを受けることになる。ヘダーのヘタレぶりもさることながら、ソーントンの助手でこれまた鬼講師の巨漢マイケル・クラーク・ダンカンは女装演技も披露して悪ノリ全快。
これまたいつまで経っても日本公開の気配がない、ケビン・スミスのデビュー作『クラークス』の続編。火災で店を失ったコンビニ店員コンビがハンバーガー店の店員に鞍替えし、そこで恋愛騒動を繰り広げる。年齢を重ねたとはいえ大人になれないのは相変わらずで、婚約者がいるのに女店長を妊娠させて慌てふためく情けなさ。名物コンビ、ジェイ&サイレント・ボブはもっとバカで、チ○コを股間に挟んでのバッファロー・ビルごっこには失笑するしかない。
劇場公開中の『主人公は僕だった』も好評でこれが日本では代表作とみられそうだが、『俺たちニュースキャスター』『タラデガ・ナイト』でのバカっぷりこそフェレルの本領であると、あえて断言したい。ジョン・ヘダーと共演した新作『BLADES OF GLORY』も待ち遠しいが、前記2編のバカ映画がビデオスルーであることを思うと、これもその線濃厚!?
ブラック・ムービー、コメディー、そしてバカ。日本スルー必至の三重苦状態ではウェイアンス兄弟に日が当たらないのは仕方がないが、パロディ満載の『最終絶叫計画』、白人美女に扮装する囮捜査官を演じた『最凶女装計画』のバカバカしさは捨て難い。ベビーに変身する新作『LITTLE MAN』は『最凶赤ちゃん計画』の邦題で、めでたくDVD発売中。
『スクール・オブ・ロック』で一瞬日の目を見たものの、キャラも存在も暑苦しいデブに日本は冷たく(?)、自身のバンドで主演した新作『TENACIOUS D IN THE PICK OF DESTINY』は日本公開のメド立たず。しかし、馬力型のオバカ演技で強引なストーリーに説得力を持たせられる稀少な存在。『ホリデイ』が代表作などとは言わせない!?
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