『遠くの空に消えた』行定勲監督、神木隆之介、大後寿々花 単独インタビュー
“うんこ爆弾”に大爆笑です。経験できて良かった!
取材・文・写真:シネマトゥデイ
『世界の中心で、愛をさけぶ』『北の零年』など、ヒット作品を撮り続けている行定勲監督が、初めて自らオリジナル脚本を書き下ろした作品『遠くの空に消えた』。子どもたちが、自らの手で奇跡を起こす、ひと夏の思い出を優しく描いた本作で、のびのびとした演技を見せた神木隆之介と大後寿々花、そして行定監督に話を聞いた。
「この3人で良かった」何の後悔もなく映画を作れた
Q:神木さん、大後さん、そしてささの友間さん。3人のキャスティングが完ぺきでした。
行定:偶然なんでしょうね。神木くんに初めて会ったとき、声変わりをしていたんですよ。そのときには、この映画を撮りたいという気持ちがあったので、これはもう時間がないな……と。今、神木隆之介で撮らないとマズイ! というのが自分の中にあって、それから、ヒハルの役は大後寿々花だなと思っていました。この2人が同い年で、ささの友間が見つかって、この3人は絶対だったなと……多分、数年後も、僕の中のこの3人のイメージが崩れることはないと思うし、間違いなくこの3人で良かったと、何の後悔もなく映画を作れました。
Q:脚本を読んだ感想は、いかがでしたか?
神木:最初に読んだときは、不思議すぎてあまり分からなかったんです。場面とか、状況とかが、全然想像できなくて、でも実際に撮影が始まると、自分が読んだときに想像していた状況をはるかに越えていて、とてもきれいな場所で、不思議な雰囲気が漂っていて、本当に“どんな映像”になるんだろうって、撮影しながらもすごく楽しみでした。
大後:この映画の話は、行定監督から直接いただいて、絶対にやりたいと思いました。脚本を読んだときは、わたしたちと同世代で、等身大の子たちの話だったので、すごく面白そうだと思いました。
神木くんの声が違っていてびっくりした
Q:お2人は2年前に「あいくるしい」で共演されましたね。久しぶりの共演はいかがでしたか?
神木:ドラマのときよりも、背も高くなってとても大人っぽくなって、しかも落ち着いた雰囲気になっていたので、自分は「どうしよう……」って焦っちゃいましたね。すごくビックリしました。
大後:ドラマの撮影のときと、声が違っていたのにビックリしましたね。最初に会って話したときにもう……「あっ、声が」って……(笑)。
Q:今回はどのように役作りしていったのですか?
神木:僕は亮介という役とはまったく正反対の性格で、とても感情的でにぎやかなやつなので、どうすればクールに見えるかと考えながら演じました。そういうところは難しかったので、家族とかに聞いていましたね。
大後:わたしが持っているヒハルと似ている部分を、行定監督に引き出してもらいながらやっていたので、「難しいなあ……」と思うことは、あまりなかったですね。
“うんこ爆弾”は、子どものときに普通にやっていました
Q:映画には、子どもたちが喜ぶようなエピソードがたくさんありますが、その中でも最高に面白い、うんこ爆弾のアイディアはどこから?
行定:うんこ爆弾は子どものときにやっていました(笑)。今の子どもたちにしてみれば、あんなイタズラはないだろうけど……。何か楽しそうに思えるんじゃないですかね。僕の子どもが今4年生なんですけど、すっごい反応していました。やってみたい! って(笑)。
神木:実際にささのくんも、普通に楽しんでいたし、やっぱり今の時代というか何というか、今はできないイタズラだから、経験してみて良かったなと思いますね。楽しかったです。
Q:男の子は、永遠に“うんこ”ネタが好きという印象がありますが、神木さんも同じですか?
神木:僕も、友間も、聞いただけで大爆笑です(笑)。
Q:大後さんはそういう男の子たちを見てどう思いますか?
大後:映像で観て、「うわ、すっごいなあ……」って思いました。そのシーンの撮影現場にはいなかったんですけど、2人の反応を直接見たかったですね(笑)。でもそういう男の子たちって、男女の差を考えないでいろいろ話してくれるので、とても楽しいです。恥ずかしがることもなく、普通に話せるっていいですよね。
Q:神木さんは同世代の女の子をどう思いますか?
神木:僕は、小学校のときから女の子とは友だち感覚で普通に話していました。
奇跡は自分たちの手で起こせるということを、教えてくれた映画
Q:この作品をどんな風に観てもらいですか?
行定:今、日本映画って人気あるんですよね。でも、こういう映画はここ数年なかったんじゃないかと思います。ファンタジーなんだけど、すごく遠いファンタジーではないんです。自分たちがどこかに重ね合わせることのできるファンタジーなので、本当に肩の力を抜いて、理屈抜きで楽しめると思います。親子で観るのも良し、カップルで観るのも良し。誰だって、かつて子どもだったんだから、多分、全員が分かるような、何かくすぐられるところがあると思うんで、「作られた物語の中に、“自分だけが分かる真実”みたいなものが見つかるといいな」と思います。
神木:僕自身この映画を観て、前向きになったり、勇気付けられたりしました。奇跡は自分たちの手で起こせるということを教えてくれる映画なので、人間的にもすごく大事なことを、観て下さった方に感じてもらえればいいなと思います。
大後:大人も子どもも本当に楽しめる映画なので、観ていただいて、自由にいろんなことを感じてもらえたらいいなと思います。
屈託のない笑顔を見せながら話す神木と、時折はにかみながらうつむいて話す大後。これからの未来が楽しみな2人の役者をうれしそうに見守っている行定監督は、まるで父親のようなまなざしを見せた。神木と大後、そしてささの友間。3人の子どもたちが、優しい監督に見守られながら、のびのびとした演技を見せる、不思議で、どこか懐かしいファンタジー映画『遠くの空に消えた』は、家族や友だちとともにぜひ観に行ってもらいたい作品だ。
(C) 2007 遠空パートナーズ
『遠くの空に消えた』は8月18日より渋谷東急ほかにて公開。