プレイバック1989 『その男、凶暴につき』その1 週刊 寺島進 2008年8月5日 ついに始動したプレイバックXXXX。こちらで勝手にセレクトした作品の思い出話を、当時を振り返りながらアニキに語っていただくプレイバックXXXX! 記念すべき第1回目は、アニキにとって初めての北野映画『その男、凶暴につき』を語っていただきます。 来月の9月20日に公開される武さんの新作映画(※映画『アキレスと亀』)で、おれは北野監督映画10本目になるんだ。 『その男、凶暴につき』に出たとき、おれはまだ斬られ役だったんだよ。だから役をもらえるってこと自体が、おれにとってはありえないことだった。 みんな、この作品に出て初めて監督に会ったんですかって聞かれるんだけど、北野監督と初めて会ったのは、この映画じゃないんだよね。北野監督が映画『夜叉』っていう映画に出ていたときに、おれは、その映画の殺陣を担当してた殺陣師の宇仁貫三さんのもとで修行をしてて、運転手として現場に行ってたんだ。もちろん、そのときは話しかけることもできねえよ! 師匠のことを気遣うことに神経集中させてたからな。 あ! でも、その前の「風雲!たけし城」の現場で見たときが初めてかも! 当時、「風雲!たけし城」の突破員として出てて、おれは北野監督……、あ、殿か(笑)。目指して一直線に行くわけだ。でも池に落ちたりしてさ(笑)。 あのとき北野監督には、すっげーたくさん付き人がいてさあ。まさに風雲たけし城って感じで、近寄れないんだよね。ロケ中に1回だけエレベーターで一緒になったんだけど、もうオーラがすご過ぎてさあ。やばかったよ! あのころのおれは、まだどこの馬の骨かもわからねえような存在だったんだから! ごろつきみたいなもんだったよ。 あ! TBSの「青春夫婦物語 恋子の毎日Ⅱ」の撮影でも実は会ってた! あんときは、確か北野監督が機関銃持って部屋に入ってきて、おれらはそれにびびって逃げる役だったんだよね(笑)。おれ金髪だったんだよなあ。当時、舞台で無国籍の傭兵部隊を演じててさ。それで金髪にしてたんだよ。なっつかし~~! そんな時期を経て、『その男、凶暴につき』のオーディションを受けることになったわけだよ。あれはまだ、おれが26のときだな。 オーディションには、そうそうたるメンバーが集まっててさ。名だたる役者さんもいっぱい来てたから、会場着いたときは、「これは受からねえかなあ」って思った。 でもね、オーディションのとき一切北野監督とは話せなかったんだけど、終わったときに受かるような気もちょっとしてたんだよ。電話で「白竜さんが演じる凶暴なヤクザの手下の一人に決まったから」って言われたときは、うれしかったなあ。当時は仕事もなかったしね。本当にうれしかった。 ただそのときは、手下の一人としか聞いてなかったから。どんな役かも全然わかってなかったんだよ。白竜さんの手下っていうのが3人組なんだけど、役者が集まって東宝で衣装合わせしてるときに、「一人、オカマになってくれない?」って言われて……(笑)。「誰かオカマになりたいひと~」ってなって、結局違う人がなったんだけどさ。それでおれが川上麻衣子ちゃんを襲う役になったの……。 この作品が自分の運命をどう変えるかなんて、まったく考えてなかったよ。 ~つづく~ 1989年8月に公開され、日本のみならず世界中に北野旋風を巻き起こした北野武初監督作品。犯罪組織に立ち向かう刑事の、孤独で暴力に満ちた戦いを描く。本作で寺島進は、初めて北野作品に参加。脇役ながらも、鮮烈な印象を残した。 発売元:バンダイビジュアル ADVERTISEMENT