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ついに始動したプレイバックXXXX。
こちらで勝手にセレクトした作品の思い出話を、当時を振り返りながらアニキに語っていただくプレイバックXXXX!
第2回目は、先週に引き続き北野映画『その男、凶暴につき』を語っていただきます。 |
川上麻衣子ちゃんを襲う役が決まったとき、おれはまだ芝居のこととか全然わかってなくてさ。腰とかガンガン振るのかとか思ってたんだけど、違ってた。今でも覚えているのは、北野監督に「こするような感じでやって」って言われたこと。それから、「台本読んじゃダメだよ」って言われたんだ。どんどん現場で変わるから(笑)。だから北野監督には「読まないで来てくれる?」って言われてた。
あれはきっと先入観を持たせたくなかったんだろうなって、今になって思うんだけどね。まさに北野監督独特のやり方だよね。
でも当時のおれは役者なんてやってなくて、斬られ役だったからさ。まっさらだったから、北野監督流の芝居にも入りやすかった。まだ役作りってなに? ってときだったもん。
斬られ役っていうのは現場でずいぶん差別的なこと言われたりするんだよ。でも北野監督は違った。役が小さかろうが、大きかろうが、有名だろうが無名だろうが、みんな一緒。平等な目線で接してくれたからすごくうれしかった。
緊張感をなくすために、現場でギャグ飛ばしてくれるんだよ。それがめちゃくちゃ面白いんだよ。で、みんなを和ませてから「こうやってもらっていいかな」って演出してくれる。
そういえば北野監督が怒鳴ったところを、おれは見たことがないなあ。
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でもあの人が、何も言わずにうつむいて立っている姿って特別でねえ……。黙っていると、怖いんだよ(笑)。なんとも言えない緊張感がある。パッと目が合ったときに、すべてを見透かされた気持ちになるんだ。この人にうその演技をしても全部ばれるって悟ったんだよ。
だから勝てねえやって思って。正直に自然体でやろうって思えたんだよね。この現場で、おれは北野監督に心底ほれたから。
今でも心に焼き付いてることがあるんだよ。
撮影が始まったころ、ボス役だった白竜さんがね、「この映画は、きっとすごいものになる。だから頑張ろう」って声をかけてくれたんだ。
そのとき、「おれらも、もしかしたら可能性があるのかもしれないな」って、そういう気持ちになれたんだ。何がこの先起こるか分からない。おれたち、まだこの世界でやり続けて大丈夫なんだって。そんな空気を作ってくれたのは、北野監督だった。現場全体が、そんな不思議な空気に包まれてたんだ。
撮影を重ねていくにつれて、「この映画はすごいことになるぞ」って、みんなが感じてた。ほんとに毎日現場に行くのが楽しくて、うきうきしてたよ。あんな現場は、生まれて初めてだった。
あんなドアップで撮ってもらったのだって、生まれて初めてだったし。もう、ありがとうございますぅ~~~! って感じだったな(笑)。
こんな底辺の役者に光を当ててくれて……。この映画で、飛び出ていけるかもしれない。そんな期待や興奮や緊張や、感動。いろんな気持ちが混ざり合った現場だったな。
あの現場は本当に、一生忘れないよ。 |
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1989年8月に公開され、日本のみならず世界中に北野旋風を巻き起こした北野武初監督作品。
犯罪組織に立ち向かう刑事の孤独で、暴力に満ちた戦いを描く。
本作で寺島進は、初めて北野作品に参加。脇役ながらも、鮮烈な印象を残した。
発売元:バンダイビジュアル |
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