『幸せの1ページ』ジョディ・フォスター 単独インタビュー
力を入れ過ぎないで 自分の足を一歩ずつ 確実に前に出していくことが大切
取材・文:島田佳奈 写真:秋山泰彦
大人気作家、ウェンディー・オルーの児童書を映画化した冒険ファンタジー『幸せの1ページ』が公開される。孤独で引きこもりのベストセラー作家をコミカルに演じるのは、ハリウッドきっての演技派ジョディ・フォスター。タフな女性のイメージから一転、潔癖症に広場恐怖症……と多くの問題を抱えた女性作家を、コメディー色たっぷりに演じて新たな一面を披露した彼女が、映画の見どころや、『リトル・ミス・サンシャイン』で底知れぬ演技力を高く評価された子役アビゲイル・ブレスリンとの共演や子役スターへの思いについて語ってくれた。
子どもも大人も一緒に楽しめる作品に参加したかった
Q:この作品に出演することになった決め手があれば、聞かせてください
これまでわたしが出演した映画は、緊張感の高い映画だったり、サスペンスであったり、あまり自分の子どもと一緒に楽しめる映画ではなかったの。でも、この映画は勇敢で独立した女の子が大活躍するでしょ? 子どもも、大人も一緒に楽しめる作品に参加したかったのよ。それから、この映画のロケーションは最高に美しい場所だったわ。私の子どもたちも、何度かロケに遊びに来てすごく楽しめたの。すごくリラックスできた撮影だったと思うわ。
Q:潔癖症に広場恐怖症と、何かと問題の多いアレクサンドラの役柄とあなた自身の共通点はありましたか?
そうね、わたし自身とアレクサンドラの性格はだいぶ違うわね。彼女はすべてのことを恐れる性格で、わたしは何ごとにも動じないタイプ。ただわたしたちの共通点と言えば自立していて、頭の中にクリエイティブな世界観を持っていて、それに情熱を注いでいるということかしら。それは作家であっても、女優であっても、ディレクターであっても、すごくすてきなことだと思うわ。
自分の足を一歩ずつ、確実に前に出していくことが大切
Q:劇中で、あなたがアフリカン(コニカ)ダンスを踊るシーンがとても面白かったのですが、あのダンスは練習されたのですか?
ええ(笑)! まずはあのシーンに適した民族探しから始めなきゃならなくて。まずはニムの島の近隣に住むポリネシアン系民族の踊りを見てみたんだけど、全然面白くなかったの(笑)。「これじゃ何も面白くない!」ってことで。それで世界各地にいるダンスをまねるだけで、みんなが楽しめる民族のリサーチを始めて、やっと見つけたのがコニカだったのよ。
Q:アレクサンドラは、大冒険を通して自身の問題や恐怖を乗り越えることができましたが、あなたならどのように問題を克服しますか?
わたしは何に対しても、あまり怖いと感じたりすることがないんだけど……何ごとにも少しずつ、一歩ずつ前に進むことが一番だと思うわ。いきなりエベレストに登るなんて力を入れ過ぎないで、ただ自分の足を一歩ずつ確実に前に出していくことが大切なんじゃないかしら。
長い望遠レンズがある今は、若いスターたちにとってすごく大変だと思う
Q:あなたには主人公の女の子ニムと同年代の息子さんがいらっしゃいますが、ニムを演じたアビゲイル・ブレスリンとの共演はいかがでしたか?
アビゲイルは最高よ! すごく素晴らしい女優さんよ。撮影を経て、彼女の変化を見ることができて良かったわ。初め彼女はニューヨークから来た都会っ子で、海で泳いだこともなければ、山に登ったこともなかったし。彼女にとって、アウトドアで体を動かすという初めての体験ばっかりだったんだけど、撮影の終わりには完全なる野生児と化していたわ(笑)。何も怖がらなくなったし、波に向かって走っていったり。子どもらしい彼女の成長を見ることができたことは、素晴らしかったわ。
Q:あなたはアビゲイルのように子役出身でしたが、今ハリウッドでは子役出身の役者がさまざまなトラブルを起こしていることが目立っています。あなた自身はどのように自分を強く持ち続けてきたのですか?
そうね。どこにいても思春期って大変だと思うの。それは日本にいても、ロサンゼルスにいてもね。パパラッチが持っているような長い望遠レンズがある今なんて、若いスターたちにとっては特に大変だと思う(笑)。わたしの小さいころはそんな物はなかったから良かったわ(笑)。思春期というものは、自分探しの時期で失敗もたくさんするし、大変だろうと思うけど、その失敗をスクープされてしまわないように気を付けるのが、プロフェッショナルだと思うわ。
Q:先輩として、アビゲイルには何かアドバイスをしましたか?
アビゲイルに? いいえ、彼女はわたしのアドバイスなんて必要なかったわ。とても素晴らしい子だから。彼女には素晴らしい家族がついているから、何があっても支えてくれると思うわ。
どんな撮影にも耐えられるように、いつでも体を鍛えている
Q:2児の母親であるあなたは、いつもどのようにして素晴らしいプロポーションを保っているのですか?
ジムに通ったりして体を動かして、作品のために体作りをするのが大好きなのよ。だって映画の撮影ってすごい体力勝負なんだから。例えば『フライトプラン』の撮影のときなんてすごく大変だったの。映画の半分以上、8歳の女の子をずっと抱えて撮影していたのよ! 8歳の女の子って、結構重たいんだから(笑)。子どもを抱っこしたまま階段を駆け上がったりしなきゃならなくて。映画を作るってすごく大変で、台本の2ページ分を撮影するのに1日かかるの(笑)! だからこういうときのために、どんな撮影にも耐えられるように、いつでも体を鍛えているのよ。
Q:この作品で、一番タフだった撮影はどのシーンでしたか?
水中のシーンが一番きつかったわ。何日間かあったんだけどね。わたしは水の中にいるのは、とっても好きなんだけど、季節が冬だったから寒くて寒くて。水は氷のように冷たいから、アビゲイルとわたしと、ジェリー(ジェラルド・バトラー)と3人でブルブル震えながら頑張ったのよ!
いつもチャーミングな笑顔で魅了してくれるジョディは、インタビュー中も終始キラキラと輝いていた。これまでタフで強い役柄が多かった彼女だが、『幸せの1ページ』を通じて、チャーミングでコミカルな一面を見せてくれる。「一番リラックスできた撮影」と話していたとおり、チャーミングな役柄は彼女の素顔そのままなのかもしれない。コメディーという新たなカテゴリーに挑戦した、ジョディから、これからもますます目が離せない。
『幸せの1ページ』は9月6日より丸の内ピカデリー2ほかにて全国公開