『レッドクリフ Part I』金城武 単独インタビュー
「三国志」の時代に生きていたら武将じゃなくて、農民かな
取材・文:福住佐知子 写真:高野広美
世界中で愛されてきた英雄伝「三国志」の“赤壁の戦い”を壮大なスケールで描いたジョン・ウー監督の歴史アクション大作『レッドクリフ Part I』。劉備(りゅうび)軍の天才軍師、諸葛孔明(しょかつこうめい)を魅力的に演じた金城武が映画への思いを語ってくれた。
孔明(こうめい)役に抜擢されたときの素直な感想
Q:アジア映画最大規模となる、100億円の製作費で作られた本作への出演依頼が来たときの感想は?
映画化は知っていたのですが、呼ばれたときは本当にびっくりしました。孔明役と聞いて、うれしかったです。「三国志」の中では、若いころは武道に長けた関羽(かんう)や張飛(ちょうひ)にあこがれていましたが、成長するにつれて賢い人物に惹(ひ)かれるようになりました。
Q:孔明という人物のどんなところに魅力を感じますか?
最大の魅力は、やはり孔明の賢さですよね。あと、今回はアクションがなかったのが逆にうれしかったです。この映画を撮る前にずっと中国にいて、4か月位アクション絡みの撮影をしていて意外と疲れていたので、「孔明だけアクションがないよ」と言われたときに、ホッとしました(笑)。
Q:ジョン・ウー監督からは何か特別な指示はありましたか?
監督からは人物同士、あまり堅苦しくならないでリラックスして、ユーモアのある関係を築いてほしいと言われましたね。同じ現場でジョン・ウー監督の魅力を垣間見ることができたし、彼が持っている特質だと思うんですが、人物のとらえ方、関係、男と男の友情など、それは誰もまねできないものなんだと実感しました。監督はハリウッドへ行って、たくさんのものを吸収したんだと思います。そして監督は自分の持っているものを皆とシェアしたいという気持ちを持っている方なんです。スタッフをとても大切にしていて、みんなにもドンドン良くなってほしいと思われているんですね。とても寛大な方だと思いました。
本作の中でお気に入りのキャラクターは?
Q:どんな現場だったのでしょうか? 印象に残っていることはありますか?
どの登場人物もすごく味が出ていると思うし、個々の登場シーンとか、見ているだけで愉快になるんです。今回、特別にいいと思ったのは一般的には極悪人として知られている曹操(そうそう)ですね。監督の物ごとに対する判断、別の目で一つの事件を見ているとき、曹操を極悪人と描いていない部分がこれは意外と合っていると思いました。本作では周瑜(しゅうゆ)が主役になっているけど、ひょっとしたら曹操という人物の偉大な人生にみんなが絡んでいるともいえるし、曹操側から見れば、曹操は物ごとすべてを自分の誠意だと思ってやっていたのかもしれない……。
Q:孫権軍の名将・周瑜(しゅうゆ)を演じたトニー・レオンさんとはどんな風にコミュニケーションをとっていたのでしょうか?
今回は、自分の役でいっぱいいっぱいだったので……(笑)。登場人物が多いし、自分のやっている役に対していろんな思いがあったので、自分のことだけでしたね。ただ、役者同士のやり取りや監督が「こういう風に動いてほしい」というの要望はあったので、それは一緒にやるようにしていました。
Q:周瑜と孔明が一緒に琴を弾くシーンがありましたが、練習はどのようにされたのでしょう?
「練習してくれ」ということで先生も用意されていたんですが、その先生が中国の中では国宝級の方で、その方が演奏するのを見た瞬間に「これはもうダメだ。無理!」って思いました(笑)。多分3年ぐらい時間をもらっても無理だと……(笑)。僕たちができるのはそのときそのときで何を弾くかということと、撮影当日に曲を覚えながら、頑張ってやっていた感じですね。後は、表情の芝居でした。
Q:ご自分の出演しているシーンで一番印象に残っているシーンは?
撮影初日のシーンで、孔明が孫権に会いに行って同盟を提案する場面です。僕にとって最初のセリフなんですが、とにかく長いシーンなんですよね。そのシーンではほとんど孔明しかしゃべってないんですよ。初日で緊張していたし、本当に大変だった。しかもセリフは現代語じゃない言い回しもあって難しかったし、何日もかけて覚えていましたね。
もしも「三国志」の時代に生きていたら
Q:本作では歴史上の英雄が多く登場していますが、あなた自身が英雄と呼べる人物はどの人物でしょうか?
みんな、自分の英雄があると思うんですよね。ただ、自分の家族を救った英雄と、大衆を救った英雄、どちらも英雄と言えますが、本作に関してはどちら側の視点に立って見るかですね。
Q:前編を観終わって、すぐに後編が観たくなりました。後編について少しお話していただけますか?
見どころは、クライマックスの赤壁の戦いですかね(笑)。実は僕もまだ観ていないので……(笑)。いろんな戦略や両軍の知恵の戦いがあって、すごく熱くなると思うので、楽しみにしていてください。
Q:もし「三国志」の時代に生まれていたら、どんな人物になっていたと思いますか?
普通の農民かな。武将にはなっていないと思います。戦うのは苦手ですから(笑)。
Q:今後挑戦してみたい役柄はありますか?
役柄を希望するというよりは、まずはオファーが来ないと始まらないので……(笑)。今回の『レッドクリフ Part I』への出演も計画になかったし、本当に縁だと思うので、これからもそういう縁があれば、大事にしていきたいと思っています。
Q:最後にこの映画の魅力について、メッセージをお願いします。
とにかく観てほしいです。2話になっています。2話ありますよ(笑)。楽しみに待っていてください。
目の前に現れた金城は黒曜石のような瞳の持ち主で、その容姿や語り口があまりに魅力的だった。「時代劇への出演は珍しい」という金城だが、中国で最も有名な人物ともいえる孔明を聡明(そうめい)に、そしてイキイキと演じている。圧巻のアクションシーンはもちろん、孔明を含む魅力的な登場人物が多数登場する。歴史物は苦手という人も、熱い男たちのドラマに胸が熱くなることだろう。
『レッドクリフ Part I』は日劇1ほか全国にて大ヒット上映中/『レッドクリフ Part II』は2009年4月より全国公開