今年のノミネーション発表を担当したのは、自身も映画『ラストキング・オブ・スコットランド』でアカデミー賞主演男優賞受賞経験のあるフォレスト・ウィッテカー。アカデミー会長のシド・ギャニス氏がまず登場し、あいさつをしてからフォレストをステージ上に招き入れ紹介する。いよいよノミネーションの発表である。
さて、実はこの発表というのは意外にもかなり淡々としていて、余韻も何もないような速度で進んでいく。司会の語りもジョークも何もなく、候補者と作品名がどんどん読まれていき、あれよあれよという間に終わってしまうのである。だが、毎年その中で目立って会場を沸かせる候補者や作品が、必ずいくつかある。
今回のノミネーション発表で目立ったのは、映画『ミルク』で助演男優賞候補になったジョシュ・ブローリン、そして同作品監督のガス・ヴァン・サントの発表時の声援と拍手。女優陣では、主演女優賞候補に挙がった映画『フローズン・リバー』(原題)のメリッサ・レオ、そして映画『レスラー』で助演女優賞候補に選ばれたマリサ・トメイへのエールが目立った。長編アニメ部門では、やはり映画『ウォーリー』への拍手が、そして何といっても全般的に拍手や歓声が多かったのは、映画『スラムドッグ$ミリオネア』である。ノミネーション会場での反響が、実際のアカデミー賞へどう反映されるかは当日にならないとわからないが、『スラムドッグ$ミリオネア』はノミネーション数だと、映画『ベンジャミン・バトン
数奇な人生』の13部門に劣っているものの(『スラムドッグ$』は9部門10ノミネート)、業界内でのサポートの熱烈度では勝っているように思われる。 さて、くしくもノミネーション当日は、映画『ダークナイト』で助演男優賞候補に挙がったヒース・レジャーの一周忌だった。ヒースのご家族や友人たちは、彼のノミネーション入りを喜んでいることだろう。
ただ、去年の時点では主要部門ノミネーションへの前評判が高かった『ダークナイト』だが、助演男優賞ノミネーションを除くと、美術賞や撮影監督賞など比較的に地味めなカテゴリーへのノミネーションが目立った。
今年は日本から、外国語映画賞に映画『おくりびと』、そして短編アニメ部門で加藤久仁生監督映画『つみきのいえ』がノミネーション入りを果たし、日本人にとって例年以上にわくわくするアカデミー賞になりそうである。受賞式はアメリカ西海岸時間の2月22日の17時(日本時間2月23日の10時)より、コダックシアターにて開催される。
(取材・文:神津明美 Addie・Akemi・Kohzu)
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