いよいよ5月13日より開催される第62回カンヌ国際映画祭。今年はどんな名作が誕生するのか。本映画祭で話題になり強烈な印象を残した過去の名作から、昨年本映画祭に出品し、いよいよ5月より日本公開される映画『ベルサイユの子』までをチェック! |
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今年の審査委員長は、2001年の映画『ピアニスト』で強烈な印象を与え、最優秀女優賞に輝いた名女優イザベル・ユペールが務める。本作は、映画『ファニーゲーム』の巨匠ミヒャエル・ハネケ監督が手掛け、同賞のほかにグランプリと最優秀男優賞も受賞した作品。
本作は、ウィーン国立音楽院のピアノ教授をする主人公エリカ(イザベル)と、その生徒である青年ワルター(ブノワ・マジメル)との恋愛を軸に物語が進んでいく。この設定からよくある中年の女と年下の男との恋愛を想像しがちだが、本作はいわゆる恋愛映画という枠では収まらない。厳格な母親のもとで育ったエリカにとっては、人を愛すことも、愛されることも困難。そんな中年女性の混乱をイザベルが見事に体現している。また、青年ワルターを演じ、エリカを惑わせるブノワの演技も圧巻! 最初から最後まで意表をつきっぱなしで、本映画祭で3冠を受賞するのは当然といえる傑作だ。
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今年のカンヌ映画祭の審査委員長は、フランスのイザベル・ユペール
Eric Ryan/Getty Images |
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クエンティン・タランティーノ監督作の映画『パルプ・フィクション』。本作は、1994年のアカデミー賞授賞式で7部門にノミネートされ、そのうち脚本賞を受賞。同年カンヌ映画祭では、最高賞のパルム・ドールを受賞している。
本作は、タランティーノ監督自らが脚本を手掛けたオムニバス作品。さすが脚本賞を受賞しただけあり、時間の構成も実に見事! 複数の話から構成されているため、多少話は前後するが、最後にはすべてが不思議な形でリンクしている。個性的なキャラクターも魅力で、ティム・ロス、ブルース・ウィリス、ジョン・トラヴォルタ、サミュエル・L・ジャクソン、そしてユマ・サーマンら、超豪華な俳優陣が出演している。
また、このストーリーにはタランティーノ監督の仕掛けがたくさん盛り込まれているのも面白い。例えば、ヴィンセント(ジョン)とミア(ユマ)が訪れたレストランのメニューは、「ダグラス・サーク・ステーキ」と1940年代に活躍したドイツの映画監督の名を基にしているなど、ほかにもスターの名にちなんだ料理が登場する。またタランティーノ監督が日本映画の大ファンであることは誰もが知っているように、映画『キル・ビル』だけでなく本作でもブルースふんするブッチが日本刀を武器として使用するシーンがある。また、ミアが口笛で口ずさんでいた曲は、映画『キル・ビル』でも使われているなど、ただの犯罪者映画ではなく、実は観れば観るほど深みのある作品なのだ。ちなみに今年のカンヌ映画祭では、タランティーノ監督の待望の新作映画『イグローリアス・バスターズ』がコンペティション部門に出品されるそうだ。
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ちょっと古いけど……裏ピース!
F Micelotta/American Idol 2009/Getty Images for Fox |
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昨年のカンヌ映画祭で、ある視点部門に出展され、高い評価を得た『ベルサイユの子』。社会からはみ出て独り暮らす男と、母親に置き去りにされた5歳の子どもとの交流と、やがて芽生える愛を描いたヒューマンドラマが、いよいよ日本で公開される。
日本で「ベルサイユのばら」という漫画がヒットしたように、ベルサイユと聞けば華やかなイメージがあるが、フランスは失業率も高く、ベルサイユ宮殿周辺にホームレスが集まっているそうだ。『ベルサイユの子』でも、なかなか職につけない人々やベルサイユ宮殿の外れにある森で暮らすホームレスたちの現状を、本作が長編映画デビューとなるピエール・ショレール監督が鋭く描写している。
驚きなのが、劇中に流れるBGMがほぼ皆無であること。セリフも少なく、ほぼ動作や表情、そして映像に映し出された情景で、登場人物の心情を感じ取ることができる。ピエール監督が「最近の映画は、あらかじめ用意された感動ばかり」と批判していたように、本作は観客それぞれの感じ方で受け止められる作品だ。
またキャストも魅力的。母親に置き去りにされた5歳の少年エンゾを演じたマックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴがとってもキュートで、濁りのないキラキラと輝く瞳が印象的だった。また、社会に適応できずホームレス仲間とベルサイユ宮殿外れの森に暮らす主人公ダミアンを、昨年、急性肺炎により37歳の若さでこの世を去ったギョーム・ドパルデューが熱演している。ギョームは、1996年にフランスのセザール賞で、「最も将来が期待される若手俳優」に選ばれ、最近では映画『ランジェ公爵夫人』で主演を務めるなど、今後の活躍も注目されていた俳優だった。彼の葬式には、父親であり、フランス映画界の名優のジェラール・ドパルデューを初め、リュック・ベッソン監督、女優のナタリー・バイ、ニコラ・サルコジ大統領夫人のカーラ・ブルーニも参列したそうだ。
ギョームの遺作になってしまったが、ベルサイユの今を描いたピエール監督の力作をぜひ劇場で感じてほしい。
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映画『ベルサイユの子』より
(C) Les Films Pelleas 2008 |
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文・構成:シネマトゥデイ編集部
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