第7回
今月の5つ星
毎月公開される新作映画の中から、シネマトゥデイ編集部おススメの5本を紹介します。
リュック・ベッソンが製作を手掛けたアクション大作2本をはじめ、アニメ、青春映画など夏映画らしい充実のラインナップ!
物語は、わたしたちの身近にあるインターネットを利用したSNSが原型となっている。OPEN IDでほかのシステムにもログインできるなんてのは現代でもあることで、さらに先を行くのが本作の仮想都市OZ(オズ)だ。原子力発電所から何から何まで世界中とつながっている。一つの間違いで世界中が大混乱となってしまうとき、人はどうするのか? 顔も本名も知らない誰かとのつながりを通して、現実社会のつながりの大切さを教えてくれる作品。人は自然災害に抗えないといわれるが、ネット上の故意的災害も同じなのかもしれない……そう感じる怖さがあった。ちなみに、「アカウントって何?」「アバターって何?」という人には、ストーリーについていけない部分があるかも。
日本の名作映画『ハチ公物語』が、海を渡ったハリウッドでリメイクされた。舞台がアメリカになったこと以外、基本的な物語は忠実に描かれているので、日本人としてはうれしい限りだ。ハチという名前もそのままで、ご主人様のリチャード・ギアが「ハチ~」と呼ぶ声に、違和感ではなく妙な感動を覚えてしまう。それもこれも、親日家として有名なギア様の日本に対する愛が、作品の中にあふれているからだろう。大事件が起こるわけでも、CGを多用しているわけでもないが、淡々とした物語を実に丁寧に描いていて、とても静かな作品に仕上がっている。ハチに至っては犬なのでもちろんせりふはないが、ハチの表情を見ているだけで、ハチの心の声が伝わってきて、思わず涙が止まらなくなってしまう。古き良き時代の日本映画を思わせる、とても素直でシンプルな感動を味わえる。温故知新とでもいうか、ハリウッド映画から日本の良さを改めて教えられる一作だ。ちなみに、子犬のときのハチは秋田犬ではなく、柴犬を使っているというマメ情報もある。
本作で描かれるのは、映画『ドロップ』『ROOKIES -卒業-』などの体育会系青春映画にはない、もんもんとした青春。不良は出てくるが、それはサブキャラであり、メインはフリーセックスの島があると本気で信じる、アホなほど純真な童貞高校生たち。そして本作の一番のミソは、まるで映画『スタンド・バイ・ミー』のような成長記と過ぎ去った日々を懐かしむセンチメンタルなテイスト。このテイストがあるからこそ、本作は数ある青春映画とは一線を画す傑作になった。知らぬ間に変わっていく周りの世界と、きっと変わってはいるのだろうが実感のない自分。過去や未来ではなく、今この瞬間を謳歌(おうか)しろ! というメッセージがとても静かに語られていく。世代や性別によってさまざまな見方と感想が持てる青春映画の王道的作品だ。
今作でもジェイソン・ステイサムのキレのいい動きは健在。しかも、彼が思いっ切り脱ぐシーンで判明するのだが、前作よりその筋肉度がパワーアップしている。さらに車から20メートル以上離れると、ジェイソンが車もろとも木っ端みじんになってしまうという設定がエンターテインメント度をアップ。3作目だけに、今までのシンプルなプロットにうまくスパイスを加えているようだ。また、テレビドラマ「プリズン・ブレイク」シリーズのティーバッグ役のロバート・ネッパーが演じる粘着質なワルぶりもキャラ立ちしていていい味を出している。難点は、リュック・ベッソンがナンパしたことがきっかけで、ヒロインを射止めたナタリア・ルダコーワの魅力が、日本人にはわかりにくいというところか。
日本には、「わたしの娘をお前なんぞにー!」と娘が連れて来た彼氏を一本背負いしちゃうようなお父ちゃんがいるが、この作品に登場するお父ちゃんは、その上をいく最怖バージョンだ。本作のお父ちゃんはアメリカの元工作員で、フランスで売春組織に誘拐された娘 を救うために、ひたすら奔走する。銃撃戦や格闘シーンでは無類の強さを誇り、相手をばったばったと倒していく。さらには、自分の娘を誘拐したことにかかわった人物に対して、やり過ぎ……と思うくらい、一切の情けをかけないのだ。特に、携帯電話で誘拐犯とお父ちゃんが話をしているときの宣戦布告には、シビレた!! 「娘を返さないなら、お前を捜し、お前を追い詰め、そしてお前を殺す」ってこんなお父ちゃんすげーと単純に思ってしまう。そして、お父ちゃんを演じたリーアム・ニーソン、とにかく渋いっ!! でも娘さんには、絶対手を出したくない……。