そろそろ世界の終末がやってくる!? 2009年黙示録映画特集
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そろそろ世界の終末がやってくる!? 2009年黙示録映画特集
皆既日食がある年は不吉なことが起こると言われており、世界の終わりがやって来るなどというウワサをよく耳にする。今年を乗り切れたとしても、今冬の話題作映画『2012』でも描かれているようにマヤ暦の最終年に当たる2012年は、オカルト・ファンの間では終えんの年だとささかれているのだ。映画『ターミネーター』シリーズでいうところの“審判の日”のような破滅的な何かが起こるのか? それはどのようにやって来て、その後の世界はどう変わるのか? 映画の分野では、そんな未来をシミュレーションしてみせた作品にこと欠かない。現実となるかどうかはともかく、絶望的の物語にドキドキしつつ心の準備をしておこう!
作品セレクト・文/相馬学
迫るアポカリプス編
天災を描いたディザスター・ムービーでは、迫り来る脅威に対して人類がどこまで抵抗できるかが未来への鍵となる。被害を最小限に食い止めて、世界を維持することができるのか? それとも破滅するしかないのか? 神の意志か、悪魔の仕業かはわからないが、こんな状況で人間に何ができる!? ここでは、その可能性について考えてみよう。
50年前のタイムカプセルに残されていた、予言めいた数字を解読していたら、すべての人間が死ぬという大惨事の到来が発覚。折しも太陽の異常活動によりフレアが地球に近づき、世界は焼き尽くされようとしていた! こうなると人間にできることといえば祈るか、科学を信じ続けるかくらい。いずれにしても世界を通常に保つのは困難で、そのときに向けて心の準備はしておいた方が良さそうだ。本作の主人公のように、愛する者のために全力を尽くすのは人生の達成感を得る手段の一つかもしれない。せめて満たされた心で世を去りたいものだ。
隕石(いんせき)の落下により、いまだかつてない大津波がやって来て地上は埋没の危機に直面! 大統領は、科学者は、宇宙飛行士は、そして名もなき市井の民は、そのときどんな決断を下すのか? 空前のディザスターに直面した人々のそれぞれの決断を描く、この群像劇でも人はどう終えんを迎えるべきかを考えさせる。大好きな人のそばで終えんを迎える者もいれば、愛する者を救おうとする人もいる。そんなパニックのドラマの中にも、希望がないわけではない。生き残る可能性を高めたいならば、とりあえず少しでも高いところへ逃げた方がいい。
アフター・アポカリプス編
史上最大規模の災難に襲われ、たとえ幸運なことに生き延びたとしても、文明が完全にマヒした世界で生きていくのは大変だ。生活面で不便があるのはもちろん、映画『アイ・アム・レジェンド』のように完全なる孤独と闘わねばならないかもしれない。いっそ死んだ方が良かったかも? と思える状況下で、人間は希望を持ち続けることができるのか!?
舞台は、未知のウイルスがまん延するイギリス。最初にウイルスが発生したスコットランドは、病人隔離地域としてイギリスから隔離されてしまう。ところが20数年を経て、そこに生存者たちの姿が認められ、ウイルスの再流行の兆しが見られるロンドンから、女特殊部隊員が送り込まれた。目的は生存者から抗体を持ち帰ること。しかしスコットランドは生存者たちの無法地帯と化しており、彼女は生き延びるために壮絶な戦いを余儀なくされる。主人公の女戦士は、何事にも動じない肝っ玉の持ち主。もちろん戦闘スキルにも優れている。生き延びるために、まずは心も体もみっちりと鍛えておくべし!
出生率の急激な低下を経て、人類が完全に生殖能力を失った近未来。18年前に生まれた最後の子どもが殺され、人類は絶望を深め、各地で無秩序化が進行している。そんな絶望的な状況下、政府の役人が一人の少女と出会う。彼女は奇跡的にも妊娠していたのだ! この役人は彼女をどうするのか? P・D・ジェイムズの人気小説に基づく本作は、次世代のために人類は何をすべきか? ということを問いかける。死んでしまえばおしまいだし、好き勝手に生きてやる……という意見もあろうが、本当にそれでいいの? 広義の責任について考えさせられる秀作だ。
極私的アポカリプス編
世界的な破滅とまではいかなくても、個人的な破滅はいつでもどこでも起こりうる。逃げることがほぼ不可能な状態で、地獄の責め苦のような思いを味わうとしたら、破滅を意識せざるを得ないだろう。人間は、どこまでそれに耐えられるのか? できれば体験したくないけど、動揺を最小限に抑えられるよう備えておくべし。
幼いころ何者かに監禁されて精神を病んだ女の子が復讐(ふくしゅう)を遂げるものの、自らも命を落とす。代わって謎の監禁一味は、彼女に協力した友人を新たに拘束し、拷問まがいの暴力を加える。絶望した彼女が、その先に見たものは!? 一見バイオレンスが売りの残酷ホラーだが、テーマは意外に深淵。ちなみにマーターとは殉教者のことで、暴力はその境地に至るまでのプロセスと取ることもできるのだ。魔女狩りの犠牲となったジャンヌ・ダルクのお国フランスの闇を見るような怪作。果てしないバイオレンスに耐えられるか!?
広大なオーストラリアでは、まったく人がいない荒野があるのは当たり前。そんな場所で冷酷非情な殺人鬼に襲われたら? そいつは一見クロコダイル・ダンディーのような気さくなオッサンだが、デカいナイフでさばくのはワニではなく人間だ! この恐ろしい状況下に置かれたのはバックパッカーの男女3人組。ケータイは圏外で、どんなに叫んでも、その声は誰にも届かない。人のいる場所ははるか遠くなので車がないと、とても逃げられない。世界には、このような絶望的な場所が存在する。劇場公開される映画『ブラック・ウォーター』と併せて、戦慄(せんりつ)を体感してほしい。