サードシーズン2009年9月
私的映画宣言
昨日、2本も電車を乗り間違え、映画『ファイナル・デスティネーション』的恐怖を感じた。そして、今日もまた電車を乗り間違えた上に、試写室も間違えてしまった。こうなってくると次なる恐怖は映画『明日の記憶』。
数年前にある人から「両国国技館にウディ・ハレルソンがいた」と聞き、来日なんかしてねーだろ? と半信半疑だったが、先日、ウディ本人に取材したとき尋ねてみると、「相撲行った、行った。興奮したよ」と大盛り上がり! おかげで楽しいインタビューに。
なかなか信じてもらえないんだけど、東京23区内でもアンテナを立てただけでは地上波のテレビを見ることのできない場所は存在する。本当だって! 引っ越し後、先払いしていたNHKの受信料を「返せ」と言ったら、「そこじゃあしょうがないですね」とあっさり。都心にも未開の地はあるのです。
全米9月公開の映画『フェーム』(原題)やドラマ「V」といった1980年代リメイクもののトレーラーを楽しみつつ、ブルーレイで映画『グーニーズ』などを鑑賞。そんな中、ジョン・ヒューズの訃報に涙。心よりご冥福をお祈りします。
しんぼる
第1章はファンシーな映画『CUBE』といった感じで、そこからのあの展開は意外。第2章で、あんな形に発展していくのもなるほどって感じ……って、ホント回りくどいが、情報公開の制限が厳し過ぎるせい。映像が面白いから、公開してもネタばれにはならないと思うが。もっと簡潔にして、ショートフィルムなら傑作だと思う。全体的に爆笑ではなくて、ゆるい感じの笑いなのが現代的。ただし、DVDでちょうどいい。劇場でわざわざ観る意味はないような気も。
不可解なタイトルは……観たら、あっさり納得。そんなに深い意味はない。この映画を観て率直に感じたのは、松本人志という人は自分が大好きなんだなーってこと。映画という媒体を使った、芸人・松本のパフォーマンスクリップというノリなので、彼の笑いがツボの人なら、そこそこ楽しめるとは思う。でも、いくらネタが積み重なっても、予想外の驚きには至らない。並行して進む2つの物語は、割と素直にリンク。アイデアは尽きない人だと思うので、次に期待します!
始めに断わっておくが民放受信不可能な難視聴地域に住む、テレビを見ない身なので、その世界で活躍しているこの監督の芸風については不勉強で申し訳ないが無知。おかげで、先入観ナシで映画に向き合えたのだが、これは意味不明だったなあ……。下ネタは嫌いじゃないし、前衛にも寛容だが、笑えないし、何を訴えたいのかよくわからない。良く言えばゴダール的、悪く言えば独りよがり。いずれしても、自分はこの映画に入場料を払いたいとは思わない。
個室に閉じ込められた松本人志ふんする男がそこから出ようと、あれこれ試しバカバカしくも頑張る。密室から出るため、命懸けになる『CUBE』シリーズとは大違い。正直、そのくだらなさに面食らったが、ちょうど試写に来ていた外国人が大笑いしているのに釣られてクスクス笑い、そのうち大笑いしている自分がいた。職業柄、意味するものは何だとかあれこれと考えるが、個室に閉じ込められた主人公よろしく、観客が映画を観て途方に暮れる様子を監督は楽しんでいるんじゃないかと思ったが、どーでしょう。
松本人志の監督デビュー作『大日本人』は、映画としてはともかくエンターテインメントとして、これはこれでありだと思った筆者。2作目はどういう戦法でくるのかな? と興味はあったが、奇抜なアイデアも尻つぼみで凡庸なオチにがっかり。もっとあれこれ練ってから2作目を撮ってほしかったが、何を急いで作る必要があったのだろうか? 前半の独りコント集を喜べる松っちゃんのファンなら、楽しみどころはあるかも。
TAJOMARU
中野裕之作品らしく、おしゃれな衣装や音楽と時代劇を組み合わせたスタイリッシュな演出。ところが今回のストーリーは正統派。小栗旬君は器用なので、おしゃれ場面ではモデルのようにキマるし、演技の見せ場は舞台かと思うほど熱演。が、このばらつきこそがこの作品を象徴しているよう。すごくチグハグな印象。スタッフやキャスト、それぞれ色があっていいが、ベクトルは同じ方向に向いていてほしい。唯一、一体感があったのは泥棒一派の面々のみ。
オープニングでの因縁話がストーリーに大きく絡むのに、その子ども時代が、やけに甘いノリで描かれるため、ユルユルなリズムがずっと持続してしまう。物語上、重要である地獄谷の深さが曖昧(あいまい)だったりと、肝心な部分の映像が不足しているのも、大きな問題。EXILEみたいな盗賊集団の痛快さや、主演・小栗旬の存在感が印象深いだけに残念だ。それにしても小栗のセリフ回しは、観る者の心をとらえる。舞台俳優としての大成を見守りたい!
2時間を超える長さで、スッと気持ち良く息が抜けたのはほんの数分。痛快であるはずの主人公のキャラは泣いたり、迷ったり、悩んだりで閉塞感だけが募る。好意的に解釈すれば、それが今の時代の人間だからと言えなくもないが、「乱世」だの「時代は変わる」だの現代性を意識したセリフも、それをしっかり描かないことには説得力がない。小栗旬は頑張っているもののカリスマ的な盗賊にはほど遠く、悪役のキャラも魅力にとぼしい。松方弘樹やショーケン(萩原健一)のアクの強い芝居だけが印象に残る。
ウルヴァリン:X-MEN ZERO
X-Men Character Likenesses TM & (C) 2009 Marvel Characters, Inc. All rights reserved. TM and (C) 2009 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
全世界でヒットした、『X-MEN』シリーズ最新作。ヒュー・ジャックマン演じる特殊な能力を持つウルヴァリン誕生の秘密を描く。監督には映画『ツォツィ』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞した南アフリカ出身のギャヴィン・フッドを抜てき。キャストには、映画『オーメン』のリーヴ・シュレイバーや映画『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』のライアン・レイノルズら多彩なキャストが名を連ねる。シリーズ史上、類を見ない激しいアクションに注目。
[出演] ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、ライアン・レイノルズ
[監督] ギャヴィン・フッド
ヒュー・ジャックマンの魅力とそのファンの好みをおちょくっているのか、まあ、ヒューを脱がす、脱がす(笑)。見せ場はそこ! 一応、ライアン・レイノルズとか出ているけど(後半、誰?)、キャストのB級感がぬぐえないのはなぜなんだ。ウィル・アイ・アムのラップのようなセリフも、まあ味があるといえばそうだけど、微妙。特に、サイクロップスをあんな知らない俳優が演じていて無念。若いミュータントたちのルックスのクオリティーが低過ぎる。
少年時代から語られるウルヴァリンの運命が劇的だが、過去の『X-MEN』シリーズ以上に、周囲のミュータントのやさぐれ感に共感できた。アクション映像は可もなく不可もなく。もったいなのはヒロインで、もうちょっと魅力的なら、ウルヴァリンの苦悩に説得力が増したのに……。製作者の立場から、自分を目立たせないヒュー・ジャックマンのナルな欲望の表れか? 映画『オーストラリア』とは違って、ヒーロー映画としての筋肉美は男子も受け入れやすいけどね。
まず、アクションの描写にはかなり燃えた。特に、武装ヘリを相手にするウルヴァリンの活躍はすごい。『X-MEN』ファンとしては彼の過去がわかった点も収穫。しかし……それだけなんだよ! 幼くして図らずも人を殺してしまったことや、常人よりもはるかに長い人生を送らねばならないことといったミュータント体質がドラマに生かし切れていないのが惜しい。描くべき材料が豊富に存在するだけに、もう少し丁寧にドラマを語ってほしかった。
どうせシリーズ人気に乗っかったスピンオフ作と思ったが、意外にもウケた。ワイルドで、敵に対しては闘争本能ムキ出しにして戦うウルヴァリンのバックボーンをひもとき、彼の心の内面の葛藤(かっとう)を描いている。主演ヒュー・ジャックマンの演技にも熱が入っている。特に、鍛え上げた上腕二頭筋や胸筋が無敵ウルヴァリンを体現。これぞ、肉食系男のカッコ良さだ。兄ビクターとのガチファイトにも血わき肉踊った。このスピンオフなら、続編もわたしは観たい!