~第16回 2010年2月~
INTERVIEW@big apple
巨漢俳優マイケル・クラーク・ダンカンが出演した映画『ザ・スラミン・サーモン』(原題)、次にオスカー候補の声も高いコリン・ファース主演の映画『ア・シングルマン』(原題)、そしてジェフ・ブリッジスの名演が光る映画『クレイジー・ハート』(原題)を紹介します。
映画『ザ・スラミン・サーモン』(原題)
レストランを経営するボクシング元ヘビー級チャンピオンのクレオン(マイケル・クラーク・ダンカン)は、日本のヤクザへの借金返済のため、ウエーターたちにありえない売り上げノルマを課して返済に充てようとするコメディー。
マイケル・クラーク・ダンカン、ブロークン・リザードのエリック、ジェイ、ケヴィン、ポール、スティーヴ
ブロークン・リザードのメンバーたちが書いた脚本の内容に、彼らのウエーター時代のエピソードが含まれていたため、取材はメンバーのうち三人が働いていたシティ・クラブというレストランで行われた。記者用に食事が用意されていることを期待したが、ドリンクさえも出てこず、待っている間は横の席でおいしそうに会食を楽しんでいる人たちをただ見ているだけに……。インタビューが始まると、ブロークン・リザードのメンバーは口々にジョークを言い始め、それに乗ってマイケル・クラーク・ダンカンまでもがジョークで質問に答える始末。
すると「この程度のジョークを書くのは難しくない」と言うメンバーたちに対して、マイケルが「だったら全米脚本家組合のカードを持っているのかい?」と質問。すると5人はテーブルに脚本家組合だけでなく、監督組合に所属している証明カードを出し始めた。そんな彼らをよそに、マイケルが懐から取り出したのはアカデミー賞にノミネートされた人だけがもらえるというオスカーのゴールドメンンバーシップ・カードだった。これには全員が驚かされ、ひとまずジョーク合戦は終了。さすがオスカーの力は違う!
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1962年のキューバ危機を背景に、パートナーを失ったロサンゼルスに住むゲイの教授ジョージ(コリン・ファース)の一日を描いた作品。
コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、トム・フォード監督
普通、長くても40分くらいで終わる記者会見。しかし本作の記者会見は違った。何と集まったスタッフ・キャストが一人一人記者会見するというのだ。急な変更のため、その後に入れた試写は急きょキャンセル。オスカーノミネートの呼び声高い作品だから、長く取材ができるのはありがたいことなのだが……。
最初の会見はニコラス・ホルト。映画『アバウト・ア・ボーイ』で鮮烈なデビューを飾った彼も、今ではもう20歳になっていた。次にコリン・ファース。彼は女性ファンも多く、最近めっきり見ることが少なくなったニュージャージー州在住の女性記者の姿もあったほどだ。監督のトム・フォードは、自分の背が小さく見えるのが嫌らしく、わざわざクッションを持ってきてイスに座る姿が印象的だった。
そして最後はジュリアン・ムーア。会見が行われた会場は道路に面しており、窓から中が丸見えの状態。にもかかわらずニコラス、コリン、トムが会見をやっていた際には立ち止まる人はほとんどいなかった。しかしジュリアンが登壇した瞬間に状況は一変。気付いた通行人たちが足を止め始めた。「さすが大女優」と感心していたら、よくよく考えるとジュリアンの会見ではすでに夕方になっており、ライトの光が外の注意を集め、結果ジュリアンに気付いたのだと判明。長過ぎる記者会見はもうこりごり?
映画『クレイジー・ハート』(原題)
アルコール中毒で、今では落ちぶれたカントリー歌手となったバッド・ブレイク(ジェフ・ブリッジス)が、シングル・マザーの女性記者と出会ったことで、その運命を変えていくドラマ。
ジェフ・ブリッジス、マギー・ギレンホール、スコット・クーパー監督
12月は休みもなく、仕事漬けの日々を送っていたせいか体調を崩し、この日の取材では立っているのがやっとの状態。しかしオスカーノミネートが有力視されているジェフ・ブリッジスの最新作とあれば、取材する価値はあると思った。
始めはコーヒー片手に渋い顔で質問に答えていたジェフだったが、コーエン兄弟の映画『ビッグ・リボウスキ』の話になると一転、ハイテンションで質問に答え出した。これまでの出演作で一番気に入っているとあって、すっかり上機嫌。
しかし僕の横にいた新顔と思われるインド系記者がインタビュー中にもかかわらず写真を撮り始めるものだから、こちらとしては気が散って仕方がない。普段なら声を掛けて撮影をストップさせるのだが、この日は風邪で声も出ず……。ジェフだったから良かったものの、次に取材が控えるマギー・ギレンホールだったら、激怒必至だ。どうやらこのインド系記者は、今回が最初のインタビューらしく、ルールを何も知らなかったようで、取材終了後には記者たちに頭を下げていた。
次に登場したマギーはとても明るい女性で、どんな質問にも陽気に答えていた。中でも子どもに関して聞かれるとうれしそうで「母親になったことで役柄が広がった」と笑っていた。最後はスコット・クーパー監督だったのだが、僕の体力は限界で、頭がぼやけてしまい彼が何を話していたのかまったく覚えていないという始末。体調管理はしっかりやらねばいけないと反省した年末だった。