5時になり、プレスは一斉に2階のホールへ。座席を探し、カメラの準備をすると、さあ、いよいよノミネーションの発表だ。午前5時38分きっかりにアカデミーの会長が壇上に上がり、今年のプレゼンターのアン・ハサウェイを呼び込む。フラッシュが一斉にたかれ、アンがクリーム色のスーツで登場。うーん、きれい! 陶器のような白い肌に大きな目。まるでディズニーの白雪姫をそのまま人間にしたようだ。
そして間を入れずに二人のノミネーション発表が始まる。
「第82回、まずは助演女優賞の候補者です。『NINE』のペネロペ・クルス。『マイレージ、マイライフ』のヴェラ・ファーミガ……。」
二人が次々と候補者の名前を読み上げると、背景のスクリーンに候補者たちが映し出される。わたしはカメラのビューファインダーを見ながら、スクリーンの映像が変わるたびにパシャパシャとシャッターを押す。プレゼンのスピードが速いので、ぼやぼやしている暇はない。候補者の名前を追いながら、写真を撮るという作業は結構大変だ。誰が何の部門の候補になったのか、フォローする暇もない。時たま、観客から歓声が上がるのが聞こえる。口頭で発表されるのは24部門のうち10部門なので、あれよ、あれよという間にノミネーション発表が終ってしまった。始まって、10分もたっていない。
でも、発表が終わってからが記者たちの仕事。各メディアは一斉に立ち上がり、世界中に向けてレポートし始める。機関銃のようにパソコンのキーボードを打ち始める人がいたかと思えば、いきなりマイクの前でしゃべり始めるアナウンサーもいる。また、ライトを浴びて、カメラに向かって話し始めるテレビのレポーターも。このノミネーション発表の結果は、日本では、日本人がノミネートされれば別だが、一般的にかなり関心度が低い。でも、アメリカの映画関係者にとっては、その結果でキャリアと収入が180度変わってしまうほど重大なイベントだ。だから、学生にとっての大学入試発表ぐらいに気持ちが高まる。
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