第14回
今月の5つ星
毎月公開される新作映画の中から、シネマトゥデイ編集部おススメの5本を紹介します。
本年度アカデミー賞作品賞&監督賞を含む6冠を制した反戦映画をはじめ、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞など賞レースをにぎわせた人気スターの話題作を紹介!
監督デビュー(単独)作『ニア・ダーク/月夜の出来事』、そして大ヒットアクション映画『ハートブルー』など、女性監督にしては珍しい男勝りで骨太な演出スタイルを持つキャスリン・ビグロー。イラクに駐屯している3人の爆発物処理班の男をメインに据えた本作では、その硬派なスタイルがプラスに作用。本年度アカデミー賞で女性初の監督賞受賞という偉業を成し遂げた。ドキュメンタリータッチのカメラワークはリアリティーを醸し出し、そのざらついた映像は、緊迫と恐怖がまん延する中で任務を遂行する爆発物処理班の心情を見事に表現。戦争批判の一面を持ちつつも、説教くさい社会派かというとそうでもない本作は、バリバリの反戦映画『告発のとき』の原案者マーク・ボールによる脚本が、ビグロー監督の柔軟で社会派を気取らない職人監督気質に中和されたということなのだろうか。
シャーロック・ホームズ役に今ノリにノっている男、ロバート・ダウニー・Jrを、ワトソン博士役に演技派イケメン、ジュード・ロウを迎え、ガイ・リッチー監督が新たなシャーロック・ホームズを誕生させた。とはいえ、全く新しいキャラクターを生み出したのではない。これまでの映像化で作り上げられてきたホームズではなく、コナン・ドイルによる原作のキャラクターへと軌道修正した、というのが正しい。探究心が旺盛で女嫌いな彼は、ボクシングの達人であり、事件に目がないどころか、事件がないとうつ状態になってしまう人物。何とも現代的なヒーローだったのだ。リッチー監督の十八番(おはこ)ともいえる迫力あるファイトシーンに加え、ウイットに富んだジョークも満載。それを実力派の二人の俳優が演じるのだから、その絶妙かつ完ぺきともいえる相性がたまらない! スマートでスタイリッシュだけど男くさい、まさしくガイ・リッチー監督のブリティッシュ節がさく裂した新世代の「シャーロック・ホームズ」だ。
愛のために詐欺を働くわ、刑務所から脱獄するわ……というトンデモ男が主人公の本作。なんと彼は、懲役167年で服役中の実在の人物なのだ。ジム・キャリーふんする、IQ169の天才詐欺師スティーヴンは、弁護士や企業のお偉いポジションへ転職したり、「世の中ってこんな簡単にダマせるの!?」と思ってしまうほど。もっとダマしのテクニックを見せてほしかった。しかし、そんなスティーヴンより多くの人が心奪われるであろうユアン・マクレガー演じるフィリップ。スクリーンの中のユアンを観れば「彼のためなら詐欺をしてでも喜ばせたいかも!?」と思わせてくれるほどの説得力あるかわいらしさ!! 強いていえば、あと3年くらい早く撮影してくれれば、ジムとユアンも、もう少しピチピチだっただろうなぁ……。
映画『NINE』は、映画『シカゴ』のロブ・マーシャル監督が、トニー賞を受賞した同名ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した、最高にゴージャスなエンターテインメント作品。主人公のダニエル・デイ=ルイスを取り巻くニコール・キッドマン、ペネロペ・クルス、 ケイト・ハドソンといった豪華女優陣たちのセクシーぶりが話題になっている。しかし、ご注意! 本作は底抜けに明るいミュージカル映画ではなく、男の苦悩と妄想がこれでもかという男目線で描かれている作品だ。男性は、仕事がうまくいかずに悩んだり、美女に目移りしたりする主人公に共感する人多し。『シカゴ』のようなミュージカル映画を期待すると、それは見事に裏切られるが、本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたペネロペの開脚&もん絶ぶりや、ケイト・ハドソンのエネルギッシュなダンスなど1,800円分の見ごたえは十分!
映画『ゴーストバスターズ』のアイヴァン・ライトマン監督の息子であり、アカデミー賞受賞作の『JUNO/ジュノ』でその才能が高く評価されたジェイソン・ライトマン監督による最新作。飛行機のマイレージをためることを生きがいとするプロのリストラ宣告人の主人公を軸に、人を「切る」ことではなく、人と「つながる」ことの大切さを、ジェイソン監督ならではのユーモアを交えて描いた本作は、第82回アカデミー賞で5部門もノミネートされた良作。主演を務めたジョージ・クルーニーは、惜しくも主演男優賞を逃したが、独身を謳歌(おうか)する主人公を等身大とも言える演技で見事に演じ切ったジョージは物語をより、リアルに見せてくれている。ジョージのキャラクターなしには成立しない映画である。