第17回
今月の5つ星
毎月公開される新作映画の中から、シネマトゥデイ編集部おススメの5本を紹介します。
女性に大人気のテレビドラマシリーズの劇場版第2弾『セックス・アンド・ザ・シティ2』、北野武監督が久々にバイオレンスに回帰した『アウトレイジ』など、話題のラインナップを紹介!
1作目の映画『セックス・アンド・ザ・シティ』より、そのゴージャスさは格段にアップ!? 冒頭からダイヤモンドがキラキラ輝くゴージャス・ムービーといった印象。理想のだんな様ミスター・ビッグのグウタラぶりを見せ付けられ、「ああ、どんな男もしょせんこんなものなのね」なんてがっかりしてみたり、子育てに悩むシャーロットに同情してみたり……。夢のような世界で生活する彼女たちだが、女性なら誰しも共感する悩みが浮き彫りになってくる。彼女たちのような生活なんて送れるわけがないのだけれど、この映画とはそういうもの。そんな世界にトリップするのがこの映画の楽しみ方だ。特に、本作の舞台は中東の一国、アブダビ!! 彼女たちのようなリゾートファッションに身を包み、世界に飛び立つ日を夢見よう。
2009年に本屋大賞に輝いた湊かなえのベストセラー小説を、『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』の中島哲也監督が映画化。物語は、「娘は事故死ではありません。このクラスの生徒に殺されたんです」という、松たか子ふんする中学校教師・森口の衝撃的な告白から始まる。森口の告白にショックを受け、ヒステリー状態となった生徒たちの犯人への陰湿なイジメ、事件のいきさつを知らぬまま的外れな熱意でクラスを盛り上げようとするKYな新任教師・良輝、通称ウェルテル(岡田将生)の空回りぶりなど、異様な状況をハイテンションに演出する中島監督の作風は健在。この中島マジックによって、他者を犠牲にすることで己の苦しみから逃れようとする人間の悲しい業、負の連鎖が強調され、やるせない切なさが胸に迫る。法で裁けない悪と対峙(たいじ)したとき、人はどう立ち向かえばいいのか……? 森口が犯人に下した“制裁”をどう受け止めるのか、原作とは一味違うラストになっていることからも論議を巻き起こしそうだ。
前作の『アイアンマン』を上回るアクションシーンを期待していたが、今回は銃撃戦が大フィーチャーされているところにも度肝を抜かれた。アイアンマンの装備はもちろん、ミッキー・ロークふんする悪役の電撃ムチのド派手さや、アクション初挑戦となるスカーレット・ヨハンソンが披露する、アンジー並みのキレのいい格闘シーンに大興奮! グウィネス・パルトロー演じる口うるさい秘書ペッパーも健在で、ロバート・ダウニー・Jrと息の合った掛け合いを見せてくれる。そういえば、今回の主演を務めたロバートとミッキーはどちらも過去にスキャンダルで低迷の一途をたどり、近年カムバックした“返り咲き組”。スクリーンで生き生きとした彼らを観ていて、素晴らしい役者だと改めて痛感した。特に、ミッキーのいかにもワルな雰囲気漂う不敵な笑みに注目! とにかく何も考えず、ポップコーンを片手に楽しみたい快作だ。
ハリウッドで最も過小評価されている俳優と言われてきたジェフ・ブリッジスが増量し、たるんだお腹で酔いどれカントリー・ミュージシャンを熱演、念願のアカデミー賞主演男優賞に獲得した本作。不本意な地方回りが続き、かつての弟分の前座を務めることになっても、マギー・ギレンホールふんするシングルマザーとの恋に破れても、文句を言いながらギターを磨き続ける姿には、これしかないという熱い信念を感じる。そして、なんといってもジェフやコリン・ファレルの歌う姿がかっこいい!! そんな彼らの姿が、人生の苦境を乗り越えてきた男たちの魂を伝えてくれる。彼なしにこの作品は語れないというぐらい強烈な存在感を放ちながらも謙虚(けんきょ)に脇役に徹するコリンや、エンドロールの最後に驚きの名シーンを披露するロバート・デュヴァルら、クセのある俳優たちの映画愛を存分に感じる逸品だ。