~第19回 2010年5月~
INTERVIEW@big apple
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今月のお題は、トライベッカ映画祭。本映画祭で取材した、アネット・ベニング主演の『マザー・アンド・チャイルド/Mother and Child』(原題)、次に名優ロバート・デュヴァルが熱演している『ゲット・ロー/Get Low』(原題)、最後に人気俳優コリン・ファレル主演の『オンディーヌ/Ondine』(原題)の3本をご紹介します!
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映画『マザー・アンド・チャイルド/Mother and Child』(原題)
35年前、わずか14歳のときに生んだ娘を里子に出した現在50代の母親(アネット・ベニング)と、その母親と対面したことがない娘(ナオミ・ワッツ)、そして養子縁組を求める黒人女性(ケリー・ワシントン)の3人の女性を交錯させて描いた感動のアンサンブル。監督は『パッセンジャーズ』や『美しい人』のロドリゴ・ガルシア。
アネット・ベニング、ナオミ・ワッツ、ケリー・ワシントン、ロドリゴ・ガルシア
この日は、パブリシスト・ファームが、ホテルの部屋代経費の削減のために『マザー・アンド・チャイルド/Mother and Child』(原題)と、別の作品『プリーズ・ギブ/Please Give』(原題)の取材を同時に設定していた。従って、一挙にまとめて7人もの取材を、一人20分ずつすることに……。これまで、このように大勢のときは、必ず時間通りに始まらず、ダラダラ長い時間インタビューしていることが多かった。そのため嫌な予感がしていたが、スタート時間は、なんとオン・タイムだった! 幸先がいいぞと思った瞬間、パブリシストから監督のロドリゴ・ガルシアの到着が遅れているため、彼のインタビューは、『プリーズ・ギブ~』のインタビューが終わった後にセットアップするとのこと。こういうありえない順番の変更に怒る記者たちをよく見るが、幸いなことに『マザー~』には、世界中で知名度の高いアネット・ベニング、ナオミ・ワッツが出演しているため、多くの記者は監督をインタビューしなくても記事が書けることもあって、この告知にも平然とした表情だった。
まずはアネット。彼女は『アメリカン・ビューティー』の印象が強く、どこか小うるさいイメージがあるが、実際の彼女はかなり温厚な人柄という印象。彼女はまだ50歳で、『アメリカン・ビューティー』の撮影時は、おそらく39~40歳だったことになる。あのころから結構、貫ろくのある顔立ちをしていたんだなぁと驚かされた。次に、ナオミ。彼女の美ぼうは相変わらずで、まだ20代のように感じられる肌つやが美しかった。彼女は、子供の話になると目を輝かせて、笑顔を絶やさず話してくれる。最後にケリー・ワシントン。彼女はインタビュー開始まもなく、いきなり水を要求! 水のピッチャーの前に座っていた僕が、彼女に水を入れてあげてスタートした。『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』などで頭角を現してきた彼女。政治活動にも熱心な彼女は、インタビューでもほとんどその話。現在はオバマ大統領のもとで、ホワイトハウスのウエスト・ウイングにあるアーツ・アンド・ヒューマニティ部門のアドバイザーを担当しているそうだ! そして、結局僕は最後まで居残り、監督のロドリゴにインタビューした……。
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映画『ゲット・ロー/Get Low』(原題)
1930年代に山小屋で隠遁生活を送っていた老人フェリックス(ロバート・デュヴァル)は、ある日自分が亡くなる前に、自分の葬式を行う計画をする。だが、その奇想天外なアイデアは、彼の過去との深いかかわりがあった……。テネシー州に実在した老人フェリックス・“ブッシュ”・ブレゼルの話を映画化した作品。
ロバート・デュヴァル、シシー・スペイセク、ビル・マーレイ、アーロン・シュナイダー、ディーン・ザナック
今回、ハリウッドの演技派たちを一挙に取材できるということで、相当な数の記者が集まると思ったら、他のトライベッカ映画祭の出展作品をカバーしている記者が意外に多く、記者が少なめで取材が敢行された。まずは、監督アーロン・シュナイダーとプロデューサーのディーン・ザナック。彼らのインタビューの中心は、いかにしてビル・マーレイと契約したのかということ。とにかく放浪癖があり、エージェントのいない彼を捕まえるのはひと苦労したらしく、契約のサインをしたのも撮影が終わってからというビックリなエピソードから始まった。次に、その当人であるビルとシシー・スペイセクがペアで登場! ビルに契約の話を交えてインタビューをしていると、ある女性記者が突如、ビルが出演するとうわさされる『ゴーストバスターズ3/Ghostbusters III』(原題)の質問をし始めた! 別の部屋の記者たちにも同じ質問をされたのか、ビルはあからさまに嫌な顔をして、「その質問には後で答えるよ」と言い放って別の記者の質問を聞き出した。これで気まずいムードになるかと思いきや、意外にもシシーの初恋の話で一気に現場が盛り上がり、同じ初恋にまつわる質問をビルにもぶつけてみると、「これ以上の話はできないよ……」と苦笑しながら降参していた。その後、ビルが話している最中に、シシーが横やりを入れてくるのがとても面白かった。すっかり機嫌が良くなったビルは、最後に『ゴーストバスターズ3~』(原題)の現況を語ってくれたのだった。
最後に、ロバート・デュヴァル。最近、誰にインタビューしても大して緊張しなかった僕だが、さすがにデュヴァルの存在感には緊張気味に。だが、周りの雰囲気を察してか、彼はレストランや食べ物の話をし始めて、すっかり現場が和んだところでインタビューに入ることに。彼には、『地獄の黙示録』や 『ゴッドファーザー』シリーズについてなど聞きたいことが山ほどあったが、他の記者もいる手前、この映画の質問だけをすることに……。彼が質問に答えているときの眼光は、まるで透視されているような感覚だった。だが、いったんインタビューが終わると、彼は記者一人一人と談笑し、パブリシストが次の取材現場への移動をせかすのを遮りながら、快く僕らと会話を続けてくれた。
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映画『オンディーヌ/Ondine』(原題)
同作は、アイルランドの海で、1人漁船に乗って漁師をしていたシラキュース(コリン・ファレル)は、ある日漁網の中に息絶え絶えの謎の女性(アリシア・バックレーダ)を発見する。人目を避けて過ごそうとする彼女に対して、徐々に恋心を寄せるシラキュースだが、実は彼女は何者かに狙われていた……。監督は、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のニール・ジョーダン。
コリン・ファレル、ニール・ジョーダン、アリシア・バックレーダ
あまりゴシップ系の話に興味がない僕は、映画記者でありながら、取材前日まで、コリン・ファレルとアリシア・バックレーダがこの映画をきっかけに交際を始め、現在二人の間に子どもがいることを知らなかった……。個人的には、彼らよりもニール・ジョーダンの方に興味があったからかもしれない。取材現場に行ってみると、なんと昼食とドリンク、さらにデザートまで用意されており、久しぶりにテンションが上がる取材に!
まずはコリンの恋人で、メキシコ出身の女優アリシア。以前に映画『トレード/Trade』(原題・日本未公開)でも彼女にインタビューしたことがあったが、彼女はそのときと比べて随分大人びた印象を受けた。子どもが生まれたことで大きな変化が生じたようだ。数か国語を話せる彼女は、一つ一つ言葉を選んで話している感じで、コリンとは対象的な印象を受けた。次に、ニールとコリンがペアで登場! 同じアイルランド出身の彼らは息が合うのか、それぞれ別々に質問しても、必ず一つの質問に対して二人とも答えてくれた。以前、『ヒットマンズ・レクイエム』(日本未公開)でコリンにインタビューしたときは、タバコを片手に、もう一方の手でコーヒーを持ちながらだったし、ほとんどの質問にジョークで返していた。ところが、今回は名監督のニールの前だからか、それとも子どもが生まれて丸くなったのか、姿勢を正しながら、熱心に質問に答えてくれる。そんなコリンは初めてだった。これは、ひょっとしてアリシアの影響かもしれない。最後に、この二人が交際していることをその場にいた記者全員が知っていたはずなのに、彼らの関係を聞いたりせずに、子どもの話やお互いの初印象などの遠回しの質問を、遠慮がちにしている記者たちの様子が面白かった。インタビュー後も、今までなら取材用の撮影にポーズもろくに取らないことの多いコリンだったが、今度はしっかりポーズを取ってくれたのだった!