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いじめられっ子の高校生が、空手の達人である日本人の老人の助けを得てたくましく成長していく、1984年の大ヒット青春映画をリメイクした『ベスト・キッド』。近年続くリメイク映画ブームの中でピカイチの出来栄えを誇る本作において、オリジナル版をアレンジしたポイントをピックアップし、良質のリメイク映画の条件を探ります! |
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1984年版で当時若手注目だったラルフ・マッチオが演じたいじめられっ子の主人公に抜てきされたのは、『幸せのちから』でのウィル・スミスとの親子共演が一躍注目を集めたジェイデン・スミス。本作では、父のウィルと母のジェイダ・ピンケット=スミスがプロデューサーとして彼をバックアップしていますが、親の七光りとは言わせない本格派のアクションに挑み、時折さりげなくブレイクダンスを披露したりと、その芸達者ぶりには目を見張ります。そして、日系アメリカ人俳優ノリユキ・パット・モリタが演じた師匠役には、ジャッキー・チェン。わずか12歳の生粋のサラブレッドと、アクション映画の神様、そんな二人の化学反応が、この映画のキモとなっています。
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ジェイデンは数々のジャッキー映画でアクションを学び、彼の動きをまねたシーンもあるのだとか |
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主人公が母親の転職に伴って引っ越し、転入先の学校でいじめに遭うという設定は1984年版と同じですが、本作では主人公&師匠のキャラクターの年齢が10歳ほど低い設定となり、物語の舞台もアメリカから北京に変更されています。これらによって主人公の試練はぐんとアップし、小さな体で異国での疎外感と戦い続ける彼の姿を見れば、思わず手に汗握って応援したくなるはず。また、父親を亡くした少年と自らの過失によって妻子を亡くした師匠という、悲しい過去を抱える者同士だからこそ理解し合える師弟のきずなも強調されていて、涙を誘います。
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柱とジャケットを使ったシンプルで単調な作業が何を意味するのかは、観てのお楽しみ!
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舞台を北京に移したならではの最大の魅力が、中国武術の聖地であり世界遺産として名高い武当山や、『ラスト・エンペラー』以降20年ぶりとなる紫禁城といった名所でのロケーション。とりわけ、師匠が少年にカンフーの源流を教えるために訪れる武当山でのシーンでは、コブラと同じ動きをする女性など、あらゆる武術の達人が摩訶(まか)不思議な修行を繰り出し、その神々しい雰囲気に魅了されます。プロデューサーのウィル・スミスも「僕らは中国の歴史をかじり、こういう美しい場所を体験するためにここへ来た。あそこで撮影したことは、僕らにとって大勝利だったよ」と、ご満悦のようです。
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武当山では車で撮影機材を運ぶのは不可能だったため、すべて人力で行われたそう……! |
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1984年版と最も大きく異なるのが、空手がカンフーに変更された点です。「戦うためではなく、身を守るために」という定義は受け継いでいますが、本作では「目だけに頼ると真実が見えない」「人生のすべてにカンフーがある」といった、カンフーにまつわる師匠の奥深い名言を学べるところもお楽しみの一つとなっています。そして、漫画「ドラゴンボール」の天下一武道会を思わせる、クライマックスでの武術大会。少年がいよいよ、いじめっ子との対決を果たすこの決定的な試合で、本作ではオリジナルの見せ場が用意されているところがミソ。本編を注意深く観ていれば、ヒントがわかるかも!
オリジナル版と基本的なストーリーは同じで、かつ目新しさはないながらも、今回のリメイク版が一層の感動と興奮を放っている理由とは何なのか。本作の場合、師匠役にジャッキー・チェンが起用したことが大きいでしょう。香港人のスターである彼を起用したことにより、アクションシーンがパワーアップしたのみならず物語の舞台や年齢設定も変更になり、それらがすべて良い方向に転んだようです。そういう意味では、ジャッキー・チェンをリスペクトし、異国の文化を重んじるために誠実に努力を払い、プロデューサーとしての使命をまっとうしたウィル・スミスの情熱のたまものといえるのではないでしょうか。
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1984年度版の鶴立拳が、アッと驚く必殺技にアレンジされています |
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文・構成:シネマトゥデイ編集部 |
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