第21回
今月の5つ星
人気漫画を二宮和也ら豪華キャストを迎えて映画化したファンタジックな時代劇や1994年に他界した伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナのドキュメンタリー、トム・クルーズ&キャメロン・ディアス共演の痛快スパイ・アクションなど、話題作が勢ぞろい!!
よしながふみの人気漫画を、今をときめく俳優たちの豪華共演で映画化。漫画ゆえに確立されてしまうキャラクター像を、期待を裏切ることなく実現した申し分のないキャスティング、細部にわたって史実を忠実に再現したという原作のこだわりも手伝い、謎の疫病により男女の立場が逆転してしまった江戸時代の異次元ワールドに、違和感なくすんなりと入っていける。中でも、それぞれのキャラクターの特徴を表現している着物の色使いは実に見事であり、漫画の映像化作品ならではのカラフルな色彩が、男性たちの美しさを引き立てているだけでなく映画全体に花を添えている。まさしく少女漫画の世界が全開!! という作品ながら、二宮和也と大倉忠義による白熱の殺陣シーンや、邦画らしいクスッとさせる笑いなど、エンターテインメント性も高く、さらっと楽しめる内容に。メインキャラクターたちに劣らない鮮烈な印象を残してくれた、初々しさあふれる中村蒼と哀愁漂う阿部サダヲにも注目!
「グッチ」「イヴ・サンローラン」のデザインを歴任し、時代の寵児(ちょうじ)となったトム・フォードがついに映画界に進出した。クリストファー・イシャーウッドの同名小説に自身の体験を盛り込み、監督・製作・脚本の3役を務めた本作。最愛の恋人を交通事故で失い、生きることに失望した主人公が自殺を試みる一日を描いたものだが、キャストの演技力なくして成立しなかったといっても過言ではないだろう。主演のコリン・ファースが大粒の涙を流すシーンはほんの数秒にすぎないが、最愛の人を失った悲しみが見事に凝縮され、観る者の胸を打つ。ゲイという難役に何の違和感もなく、第82回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたコリンの見事な演技力もさることながら、共演のジュリアン・ムーアも魅せる。今年50歳になるジュリアンだが、1960年代という時代設定にマッチした美しさと、時折見せるチャーミングな笑顔が、ベテラン女優のすごみを感じさせる。「死」へのカウントダウンを時計針の刻み音とスローモーションを用いて表現したフォード監督の演出は目を引くが、ラストは賛否が分かれるかもしれない。
1994年に34歳の若さで亡くなったF1レーサー、アイルトン・セナの初のドキュメンタリー映画。F1を知らなくても、彼を知らなくても、セナがF1に人生のすべてをかけていた姿に胸を打たれる。華々しい経歴の陰では、ライバルとの確執や、そのライバルと同じフランス人というだけで擁護するFISA会長のセナに対する政治的圧力など、当時のF1界のドロドロした部分も垣間見られるのが興味深い。逆風吹き荒れる中でも、「トップじゃないと意味がない」とセナは言う。単純にF1界の頂点に君臨することだけが目標ではなく、彼は「今よりももっといい走りができるはず」と信じていた。頂点を極め、華々しい姿で引退したいと思う者や、燃え尽き症候群に陥るスポーツ選手は多い。しかし、彼にとって走ることは人生そのものだった。だから、燃え尽きることなどなかったのだろう。今、夢に向かっている人、目標を失っている人に、「本当にやりたいことのために頑張っているのか」「今の自分に満足してはいないか」「もっと先を見ているか」を、セナが教えてくれる。
トム・クルーズ&キャメロン・ディアス、“陽”の魅力を持つハリウッド2大スターの息の合った共演にワクワクさせられるスパイ・アクション。白馬の王子様を夢見るジューンに、ある日ついに運命の出会いが……と思ったら、なんと彼はワケありのすご腕CIAエージェント。やがて、彼の危険な逃避行に巻き込まれて平穏な人生が一変していくという、いかにもハリウッド大作にありがちなベタな設定だが、そんな単純明快な設定に、オーバー・リアクションを得意とするトム&キャメロンがハマリ役で、まさに二人の真骨頂といえる。また、トムが主演を務めると共演者がかすんで彼の「おれ様映画」になるケースが多いが、本作ではキャメロンの個性&存在感が存分に生かされ、見事にバディ・ムービーとして仕上がっているところも評価したい。後味もスカッと爽快(そうかい)で、デートムービーとして最適な一作だ。
シルヴェスター・スタローン監督・脚本・主演ときて、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ブルース・ウィリス、そしてアーノルド・シュワルツェネッガーの共演なんて聞いたら、どんな作品なのか予想はつくだろうが、本作はまさしくその期待を裏切らない超ぜいたくな男だらけの筋肉バトルだ! ストーリーは至ってシンプルでベタだが、男気あふれる彼らの生きざまは一貫して気持ちが良く、スタローンたちの黄金期(?)をほうふつさせるような、ド派手なガン・アクションや爆破シーンには目がくぎ付けになる。また、自らを“消耗品”とする自虐的なところも、本作の魅力といえる。特にスタローンのライバルの傭兵(ようへい)、シュワちゃんの目的やジェット・リーの扱いなど身体を張った自虐ネタにはニヤリとさせられるだろう。今度はロッキーとターミネーターのバトルに期待したい!?