~第24回 2010年10月~
INTERVIEW@big apple
-
今回は、全米で大人気のレスラー、ジョン・シナが出演した『レジェンダリー / Legendary』(原題)、昨年亡くなった名匠ジョン・ヒューズのメモリアル・イベントで、彼の代表作『ブレックファスト・クラブ』に出演したキャスト、ニューヨーク映画祭に出展された超話題作『ソーシャル・ネットワーク 』の取材裏話を紹介。
-
映画『レジェンダリー / Legendary』(原題)
虚弱な少年カル(デヴォン・グレイ)は、10年前の父の事故死をきっかけに疎遠となった元レスリングの学生チャンピオンである兄マイク(ジョン・シナ)との交流を取り戻すために、学校のレスリングチームに入部。二人がレスリングを通して兄弟のきずなを深めていくさまを描いた感動作。
ジョン・シナ、パトリシア・クラークソン、デヴォン・グレイ
この映画の取材の数日前に、普段から親しくしている中年の黒人女性の記者が、僕に連絡をしてきた。その内容は、取材日に20代の娘と旅行に行くことになり、娘が大のジョン・シナのファンなので、取材に行けない彼女に代わって、僕がサインをもらってくれないかというものだった。そして、取材前日に彼女の娘がレスリングの試合会場で撮影した写真が届いた。同封されていた手紙に、「(この写真に)サインをもらってきてください」とのこと。これまで僕は、いかなる大スターを取材したときもサインをもらったことはなかったため、この依頼に少々戸惑ったが、引き受けた。そして取材当日がやってきた。この日は、映画記者だけでなく、スポーツ記者たちも何人か参加していた。僕はタレントを一人ずつインタビューすると思っていたのだが、3人いっぺんにインタビューする旨を開始前に知らされた。これだと、インタビュー終了後に取材用の撮影を済ませて、サインをもらう時間がとれるのか、かなり不安である。
ようやく取材対象の3人が登場し、まず注目したのは、ジョンの体がひと際大きかったこと。やはりレスラーはデカかった! そして、インタビューが始まると、ジョンは先にパトリシア・クラークソンとデヴォン・グレイに返答させて、その後で自分が答えるというジェントルマンな行動を取った。すっかりジョンのことを気に入ったらしい共演者の(いまだ独身)パトリシアは、インタビュー中にジョンのひじに手を回したり、筋肉を触ったりと頻繁にスキンシップを図っていた。「やはりアメリカの女性は筋肉好きなのか、それともパトリシアが男性の扱いがうまいのか?」と思っていたころ、インタビューが終了。早速、ジョンからサインをもらわなければと思い、渡されていた写真とペンを用意したのだが、そのときになってマジック・ペンではなく、ボールペンしか持っていないことに気付いた。しまった……! と焦ったが、とりあえずサインをもらって写真も撮った。サインしてもらった写真を見ながら、これじゃ見にくいなぁと思った僕は、記者たちがチェック・インした部屋に戻り、マジック・ペンを捜索。運良く、一人の記者が持っていたため、それを持って再びジョンにサインを懇願することに。幸いにもジョンは快く引き受けてくれ、今度は少し大きめにサインしてくれた。後日、その写真を母親に渡したら、お礼のプレゼントを渡され、娘さんからは感謝のE-mailが。一大任務を終え、どこか良い気分になった取材だった。
-
映画『ブレックファスト・クラブ』
学校から休日登校を言い渡された5人の生徒が友情をはぐくんでいく青春映画。この日は、昨年亡くなった監督のジョン・ヒューズのメモリアル・イベントに『ブレックファスト・クラブ』の出演者が参加し、取材に答えてくれた。
モリー・リングウォルド、アリー・シーディ、ジャド・ネルソン、アンソニー・マイケル・ホール
この日のイベントは、『ブレックファスト・クラブ』の試写上映後にQ&Aを行うはずだった。僕は一応パブリシストを介して、取材用にこのイベントのチケットを手に入れてもらうように頼んでおいたが、多くの著名人がチケットを購入したらしく、残念なことにチケットが手に入らなかった。そのため、普段はやらないレッドカーペットの取材をするハメに……。実は、僕はレッドカーペットの取材が大嫌いである。いつもタレントが現れるまで何時間も待たされたあげく、取材できるのは大抵3~5分程度、中にはまったく取材に応じないで劇場に入っていくやから(タレント)もいるからだ。そんなこんなで時間がもったいないから、レッドカーペットの取材は避けてきたのだ。だが、この映画の取材に限っては面白そうと思い、参加することに。ただ、これを言ったらこの映画のファンに怒られるかもしれないが、映画記者でありながらこの映画は未見だった……(苦笑)。本来は取材前に作品を観ておくべきなのだが、ニューヨーク映画祭の記者用の試写と会見が重なり、取材前に観ることができなかった(後日、鑑賞したが)。当然、観ていないから取材に苦戦することになるが、ここは機転を利かせ、この映画を観ている友人記者とタッグを組み、彼が取材している間に僕が良い写真を取るという交換条件で取材現場に向かったのだった。
結果的には、この手段が意外に吉と出た。なぜなら、もし一人でインタビューしていたら、並行して写真を撮るのは不可能だったからだ。そして取材当日、パリ・シアターの前に用意されていたレッドカーペットは、ものすごく小さく狭かったので、取材陣が入りきれるか不安になった。なんとか、カメラマンたちの後ろで友人の記者と共に立ち位置を確保。それから30~40分ほど待って、ようやく取材がスタート。まず、驚いたのはアンソニー・マイケル・ホールが、1980年代の虚弱体質に見える体形から、マッチョ系の俳優に変わっていたこと。次に、モリー・リングウォルドも、割とふっくらした女性になっていた。さらに、彼女には子どもがいて、子育てに追われているという言葉に年月の経過を感じた。ジャド・ネルソンは、当時の悪ガキのイメージをすっかり払拭していて、良いお父さんの雰囲気に。アリー・シーディだけは、よくインディペンデント系の作品で観ていたため、さほど変化が感じられなかった。最後に、1980年代に観ていた俳優たちが、今もテレビや映画で活躍していることに感動した。
-
映画『ソーシャル・ネットワーク 』
SNSサイトのFacebookを創設した過程と、設立者のマーク・ザッカーバーグが後に告訴された2つのケースを絡めながら描いた群像劇。作家ベン・メズリックの「The Accidental Billionaires」をベースにした、アカデミー賞候補の話題作。
デヴィッド・フィンチャー、ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイク、アーロン・ソーキン
この映画は、ニューヨーク映画祭のオープニングナイトを飾る作品というだけでなく、アカデミー賞候補でもあり、さらにこの豪華キャスト陣。当然、試写は混雑すると予想されていたため、映画祭は初めて、午前9時と午前10時に2度の試写を用意してきたのだ。だが、試写会場での席は決まっていないため、早い者勝ちとなる。しかも記者会見があるのは、午前9時の試写だけだった。そこで僕は、午前9時の試写の始まる1時間15分前に、試写の行われるウォルター・リード・シアター駆け付けた。ところが、僕が来たときにはすでに20人近くの人たちが並んでいたのだ! しかも、秒刻みで次々に僕の後ろに人が並んでいく。ありえない人気の高さだった……。今回僕が早く来たのは、最前列の席を確保してスタッフ&キャスト全員の写真を確実に撮りたかったから。ようやく40分後にドアが開き、一斉に人々が劇場に入ると、席の取り合いになるかと思いきや、意外にも最前列で観たいと思う人は少なかったようで、最前列中央の席を確保! とりあえず、これで取材はばっちりのはずと、ホッとひと安心。映画は、巧みな構成とテンポの速い展開でわれわれを魅了し、試写後は拍手喝采(かっさい)でタレントを迎えることに。そして、いよいよ取材開始!
普段は10台ぐらいのテレビカメラが構えているはずだが、この日は配給会社のソニーがテレビカメラを用意し、他の連中がビデオカメラで撮影できないようにするはずだった。だが、当日にこの知らせがきたために試写の前に、ビデオカメラを用意して取材する予定だった連中と、ソニーのパブリシストが口論に。結局、すでにビデオカメラを所持している人たちのみに許可が下り、なんとか取材開始。この映画祭の会見の後、ソニーが別枠で本社での記者会見を用意していたが、そちらには監督のデヴィッド・フィンチャーが参加しないということで、記者の質問はデヴィッドに集中! 司会者が気を使って質問をほかのタレントに振り分けていたが、これから『スパイダーマン』最新作に出演するアンドリュー・ガーフィールドには、わずか2問ぐらいしか答えるチャンスがなかった。一方、歌手としても人気のジャスティン・ティンバーレイクはメガネを掛けており、映画ではすっかりアイドルから脱皮した大人の演技を見せつけた。そして最後にジェシー・アイゼンバーグは、いつも通り落ち着いた口調で話していた。彼は10代の役を演じることが多いせいか、いまだ少年のように見えるが、実際の彼は20代後半のいい大人であること再認識させられた。取材は、リザーブ席がVIPのために用意されたりと、盛況な試写と取材になった。