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サードシーズン2010年12月

私的映画宣言

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私的映画宣言 サード・シーズン12月

筆者の近況報告

高山亜紀

『チェブラーシカ』熱、再燃中なのだが、グッズが新作寄りのものばかり。何とかオリジナルに近いフェルトのチェブラーシカを見つけた。毛のぽやぽや加減は合格。が、顔が似てない! チェブ、いずこ?
●12月のオススメ映画は、『人生万歳!』(12月11日公開)。

小林真理

あっという間に師走ですが、今年観た映画(アメリカで観た作品含む)のベスト5は、『スプライス』(2011年1月8日公開)、『キック・アス』(12月8日公開)、『わたしを離さないで』(2011年春公開)、『A Prophet』(英題:日本公開未定)、『Easy A』(原題:日本公開未定)で決まり。ベストアルバム3枚は、Frightened Rabbit、Deerhunter、No Ageです。
●12月のオススメ映画は、『キック・アス』(12月18日公開)。

前田かおり

大江戸線一周ウオークというイベントに参加。約30キロの道のりは遠かったぁー、しんどかったー、けど達成感バリバリ。仕事で海外ドラマ「LOST」イッキに全巻チェーック! 頭と目が死んだー、けど達成感バリバリ。わたしの達成感っていったい…。
●12月のオススメ映画は、『海炭市叙景』(12月18日公開)。

鴇田崇

ICレコーダーがブっ壊れ、ブルーレイがブっ壊れ、無線LANルーターがブっ壊れ、一眼レフのデジカメがブっ壊れ、揚句の果てにはノートPCまでブっ壊れーので、破壊のスペクタクル! デジタル機器がないと超無力です。
●12月のオススメ映画は、『キック・アス』(12月18日公開)。

今 祥枝

拙著「海外ドラマ10年史」(日経BP社)には、さまざまなご意見・感想をいただき本当にありがとうございます! 厳しいご指摘も含めて、今後に生かしていければと思います。また年明けには電子書籍化予定。「そっちの方が便利」という方は、ぜひ!
●12月のオススメ映画は、『君を想って海をゆく』(12月18日公開)。

ロビン・フッド


© 2010 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

伝説の義賊、ロビン・フッドの物語を『グラディエーター』リドリー・スコット監督と、ラッセル・クロウの黄金コンビが手掛けた歴史スペクタクル大作。12世紀のイギリスを舞台に、勇猛果敢なヒーローの戦いぶりを活写する。出演者も『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』ケイト・ブランシェットや、『シャーロック・ホームズ』マーク・ストロングら名優が勢ぞろい。映画の前半と後半で描かれるイングランド対フランスの壮絶な戦闘シーンは必見だ。

[出演] ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、マーク・ストロング
[監督] リドリー・スコット

高山亜紀

7点まさか緑のタイツをはいたラッセル・クロウが出てくるとは思わなかったが、オレ様映画にしては割と面白く観ることができた。問題はクライマックス。女性や子どもが戦場に駆け付けてしまうという考えナシな展開にびっくり。しかも、ヒーローものなのに。彼らの協力のさせ方ならいくらでも、バリエーションあるだろう。おまけにもっとあり得ない超大味なウルトラC技。思わず失笑。オレ様ラッセルを信じて、付いて行ったら、最後の最後でまさかの裏切り……。

小林真里

7点リドリー・スコット監督、久々の快作スペクタクル・アクション。海を血で染めるラストの合戦シーンは圧巻で鳥肌が立ったが、そこにたどり着く過程での丁寧なドラマの積み重ねがやはり効いている。ラッセル・クロウは野性味あふれるパワフルな役が一番似合っているし、エレガントで芯(しん)の強い心を持ったヒロインを演じたケイト・ブランシェットも相変わらず輝いている。卑劣な悪役を演じるのは、今、ヒールを演じさせたら右に出る者はいないマーク・ストロングだ。中世の吟遊詩人のあっぱれな下克上を描いた、英雄伝説の序章となった本作。続編が早く観たい。

前田かおり

9点ロビン・フッドって、実在の人物だったっけ!? と錯覚させるほど、歴史とフィクションを巧みに融合。ラッセル・クロウも旧知のリドリー・スコット監督と男気100パーセントのドラマに、イマイチといわれた映画『プロヴァンスの贈りもの』の軽妙な味を加えて、ケイト・ブランシェットとのちょい甘な恋バナも楽しませる。私的には悪玉マーク・ストロングに萌え、ご老体マックス・フォン・シドーの騎士としてのプライドにも泣けた。あ、海外ドラマ「ER緊急救命室」でDr.モリスを演じるスコット・グライムズと「LOST」で傭兵(ようへい)キーミーを演じたケヴィン・デュランドが、ロビンの頼もしい仲間として笑いを誘う。彼らもいいエッセンス。

鴇田崇

7点そもそもロビン・フッドそのものや、扱われているテーマにまったく興味がないので、『ノルウェイの森』と同じスタンスで臨めたものの、リドリー監督&ラッセルの男気コンビ、相変わらずですな! といった印象。古くさいタイプの野郎が暴れる『エクスペンダブルズ』には燃えたが、ロビン・フッドは古典過ぎて入り込めなかったのかも。ラッセルが来日したが、暴れん坊のパフォーマンスを期待したのはオレだけか?

今 祥枝

7点物語の目新しさにはさほど期待しなかったが、きっちりと安心して楽しめるストーリー・テリングにラッセル・クロウの出しゃばり過ぎない控え目なヒーローぶりも、いつもながらの好演。何より最近はやりの劇画的な描写ではなく、歴史劇の醍醐味(だいごみ)をしっかりと伝えてくれる迫力の戦闘シーンは見応えたっぷり。リドリー・スコット監督のスペクタクルな映像は、やはり大きなスクリーンで観てこそ堪能できると実感させられた。

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ノルウェイの森


(C) 2010「ノルウェイの森」村上春樹 / アスミック・エース、フジテレビジョン

1987年に刊行されベストセラーとなった村上春樹の代表作「ノルウェイの森」を、『青いパパイヤの香り』『夏至』などのトラン・アン・ユン監督が映画化。亡くなった親友の恋人との関係を通し、主人公の青年の愛と性、生と死を叙情的につづる。主人公には松山ケンイチ、大切な人の死をきっかけに主人公と心を通わせていく女子大生に菊地凛子がふんし、複雑な人間性を繊細に演じる。トラン・アン・ユン監督のみずみずしい世界観と、深遠な村上春樹ワールドの融合に期待。

[出演] 松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子
[監督] トラン・アン・ユン

高山亜紀

5点映像と音楽にダマされるところだった。原作を読んだ人に共通するだろう、意見は「(水原希子演じる)この緑、違うよね?」だろう。まったく生き生きしていない緑にがく然。おかげで直子もダメに見える。菊地凜子は、原作では「静」だった直子を「動」で見せようとしたようだが、その試みは失敗だ。(初音映莉子演じる)ハツミ以外の女優のキャスティングがひどい。この監督は女を選ぶセンスがまったくないと前から思っていたが、案の定だった。村上春樹作品はしばらくまた映画化されないだろう。

小林真里

5点原作の世界観を壊さず、忠実に映像化しようと試みた監督の熱意は感じられた。しかし、やはり原作小説のダイジェストに過ぎず、小説を未読の人には優しくない作りになっている。原作の独特のセリフも音にすると何だか陳腐。イメージにマッチしない主演二人のキャスティングに抵抗感を覚えたが、菊地凛子の舌っ足らずなセリフ回しは特に致命的だった。全体的に性的な描写を強調していたが、正直くどい。繊細な映像美のみ印象に残った。

前田かおり

3点前作『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』の珍なる出来にトラン・アン・ユン監督への期待ゼロ。が、『夏至』でも組んだ撮影監督リー・ピンビンの腕もあって、映像はさすがに美しいし、音楽もマッチ。痛々しいラブストーリーの体は成している。でも、村上春樹ワールドのキャラクターたちが、会話をまんま映画でしゃべると、かなりヘン。役者が頑張っているだけに失笑ものだ。その辺り、外国人監督だから、わからないんだろうな。映画化した意欲は買うけど、村上春樹作品はもうアンタッチャブルにしてほしい、頼むから……。

鴇田崇

7点原作や扱われているテーマにまったく興味がないので、何の邪念もなく試写を観る機会に恵まれたものの、やっぱりまったく響かねえ。ただ、トラン・アン・ユンという日本人じゃない監督の視点を通して映像化しているので、どことなくエキゾチックな雰囲気が個人的には嫌いじゃないけど、原作ファンの方はどうなのか。主人公に「生きること」への渇望を強く抱かせる女性として登場する、ニューカマーの水原希子が最大の拾いものだったぜ。

今 祥枝

5点まず、前提として村上春樹の小説が苦手。中でも本作の原作は、リアルタイムで読んだ当時と同じく、映画版を観る前に読み返したときも、思春期の自殺や精神を病むことへの美化ともとれるナルシシズムに気分が悪くなった。よって、それなりに原作を忠実に映画化した本作にも到底共感できない。菊地凛子は直子役を切望したというが、冒頭から彼女の役づくりには閉口。原作の世界観を丁寧に写した魅力あるシーンもないとは言わないが、村上信者がこの映画に満足するとも思えない。

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最後の忠臣蔵


©2010「最後の忠臣蔵」製作委員会

『四十七人の刺客』などで知られる池宮彰一郎の同名小説を、テレビドラマ「北の国から」シリーズの演出を手掛けた杉田成道が映画化。赤穂浪士の吉良邸討ち入り事件で大石内蔵助率いる四十六士が切腹して主君に殉じた中、ひそかに生き残った二人の男の知られざる物語を描く。討ち入り前夜に逃亡した瀬尾孫左衛門に役所広司、討ち入りを後世に伝えるため逃がされた寺坂吉右衛門を佐藤浩市が熱演。そのほか山本耕史笈田ヨシ伊武雅刀安田成美ら演技派が脇を固め、『赤い糸』の新鋭、桜庭ななみも名を連ねている。

[出演] 役所広司、佐藤浩市、桜庭ななみ
[監督] 杉田成道

高山亜紀

8点英雄に祭り上げられた人たち(=四十六士)と実際にはそうでなかった本人たち(=生き残った二人)のジレンマに『父親たちの星条旗』的後味を感じた。しかもスクリーンいっぱいに堪能できる日本の四季の美しさ。これは海外でもウケそうと思ったが、よく考えてみたら、侍のメンタリティーなんて外国の人はおろか、現代人にも理解し難いよな。とはいえ、観る人によっていろんな楽しみ方ができるぜいたくな作品ではあった。女性は花嫁と花嫁の父目線で感涙する人が多いらしいが、わたしは安田成美目線で(役所広司演じる)孫左にホれました!

小林真里

5点役所広司『十三人の刺客』に続き、またもや時代劇映画での主演となったが、ここでも堂々たる存在感を披露。堅実な作りの映画に仕上がっているが、ストーリーは地味な上に展開もスロー。ドラマ性は高いようで、さほど劇的ではない。忠臣蔵を知らない人にはもちろん排他的な内容となっている。しかも、どこまで史実に忠実なのだろうか? という疑問も残った。そもそも忠臣蔵は、疑問がまとわりつく話なわけだが。

前田かおり

8点役所広司演じる瀬尾孫左衛門が、赤穂浪士の生き残りとして、耐えて忍んで侍の道に生きる男を感情をぐっと抑えて演じる。背中が泣いてるなー。中でも、佐藤浩市演じる寺坂吉右衛門との無言の対面シーン。本編の中で一番の見応え! 桜庭ななみちゃんも可憐(かれん)で、こんな娘に「どこにも(嫁に)行きとーない」なんて言われたら、娘を持つ父親の心わしづかみだろう。事実、試写室ではいい年の男性たちがすすり泣きぃ~。が、嫁入り行列は過剰演出。しかも、田中邦衛さん登場って……。テレビドラマ「北の国から」杉田成道監督ですけどねぇ。

鴇田崇

9点どこまで真実かはともかく、あの忠臣蔵に感動的な後日談が存在していたことを知らなかったことと、役所広司佐藤浩市安田成美ら実力ある俳優のぜいたくな配役で、自分が観たのは真夏だったが、年の瀬にピッタリな時代劇として堪能、堪能。本編にまつわる感想ではないが、田中邦衛が終盤にいきなり出てきてビックリするわ、豪商・茶屋四郎次郎を演じた笈田ヨシが自由な演技をしているわで、何だか驚かされる要素が多かった。

今 祥枝

6点原作は未読、テレビシリーズも見ていなかったのでフラットに鑑賞。討ち入りした赤穂浪士46人のうち、2名が生き残り、与えられた使命を遂行していたという設定が面白かった。ただ、後半になるにしたがって挿入される人形浄瑠璃に重ねた悲恋の要素が色濃くなり、年配層にはアピールするかもしれないが、いわゆる「日本人の美徳」が時代遅れに感じられて気持ちが引いてしまった。生き残った2名にフォーカスした物語で、役所広司佐藤浩市の絡みをもっと観たかった。

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筆者プロフィール

今 祥枝斉藤 博昭前田 かおり
中山 治美鴇田 崇相馬 学
高山 亜紀小林 真里山縣 みどり
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