第27回 ハリコンが独断と偏見で送る今年のオスカー成績表はコレだ!
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
LA発!ハリウッドコンフィデンシャル
ハリコンが独断と偏見で送る今年のオスカー成績表はコレだ!~アカデミー賞はこれからどうなる!?~
映画ファンの皆さんお元気でしたか? アカデミー賞フィーバーでしばらくお休みをいただいていたハリコンですが、無事生還(笑)! 今月から再び、ハリウッド映画業界の知る人ぞ知るコンフィデンシャルな(=内密な)ストーリーをお届いたします!
さて、皆さんは先日行なわれた第83回アカデミー賞授賞式をご覧になりましたでしょうか? わたしは授賞式が行われているコダック・シアターに隣接するプレスルームで、世界各地から集まってきた報道陣と共に、持参のノートパソコンにかじりつきつつ、大スクリーンに映し出される授賞式を見ていました。
大画面に「第83回アカデミー賞授賞式」という文字が映し出されると、となりのコダック・シアターからわずかに漏れてくる拍手と歓声に混じって、報道陣ルームからも「イエ~イ!」といった歓声が上がりかなりワクワクムード! でもそんな雰囲気も授賞式オープニングのパロディー短編が終わると急速に冷却モードになっていったんです……。
大きな期待を背負った2人の若手ホストは、終始ボンヤリした感じのジェームズ・フランコと、ちょっと痛々しいくらい過剰なキャピキャピ度のアン・ハサウェイというありさま。放つジョークはことごとくハズれ、凍りつきつつある雰囲気の中、プレスルーム内ではあからさまなため息が聞こえることしばしば……。というわけで、復帰第1弾の今回は、第83回アカデミー賞を振り返ります!
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先述のように、不評に終わってしまった授賞式。終了後、浮上してきたのが授賞式前に行なわれたバニティー・フェア誌によるジェームズ・フランコのインタビューです。ジェームズはアカデミー賞のホストに抜てきされたことに対し、「僕がホストをしたアカデミー賞がサイアクだったところで、別にどうでもいいさ。映画が1本不発に終わるのと同じで、たかが一つの番組だろ? 僕は最近雇われた司会だけど、製作チームは6か月近く今年の授賞式に向けて準備をしているわけだしさ。ちゃんと頑張ってくれているのかなあ? まぁ、もしうまくいかなくても僕だけのせいじゃないからさ」と語ったといいます。
そんなジェームズの態度はまさしく授賞式の本番で表れてしまったのか、授賞式の最中からインターネットを通じて、いろいろな人たちが批判を爆発させ始めました。栄えあるアカデミー賞のホストたるものが終始やる気のないような寝ぼけた表情をしているのを見て、視聴者たちは腹立たしく思ったのです。
授賞式から一夜明けたインターネット上は有名雑誌・新聞の電子版を中心にオスカーたたきでヒートアップ! 「俳優を司会にしたのは悪いアイデアだったか? いや、違う。それは超サイアクに悪いアイデアだった」というハリウッド・レポーターに、「今までで最低のオスカー」というローリング・ストーン誌。タイム誌に至っては「史上最悪の授賞式ホスト・トップ10」と題し、上位に第30回授賞式の司会ドナルド・ダック(!!)とジェームズを挙げるという、とにかくすごいバッシングが続きました。
さらに追い打ちをかけるように発表された視聴率にも、その評価は表れていました。去年と比べると今年の授賞式視聴率は9ポイントダウン、アカデミーがターゲット層としていた18歳から49歳までの年齢層での視聴率も去年から12ポイントダウンと、期待していた「ヤング&フレッシュ」な年齢層からも支持を得られず。テレビ局間の視聴率競争では日曜日のトップに収まったとはいえ、決していいとはいえない結果となったのです。
「開かれたオスカー!」をモットーにあんなに頑張ってきたアカデミー協会ですが、散々な結果となってしまった第83回授賞式。一体何がこんな事態を招いてしまったのでしょうか?
各方面の意見を総合してみると、アカデミー側の「ヤング&フレッシュ」への試みは表面だけで根本的にまだまだ古くさいため、彼らが「新しい」と思うことをやっても、本当の「新しいもの」をわかっている若者には見向きもされず、結局空回りしてしまう、ということのようです。ジェームズ・フランコとアン・ハサウェイの司会コンビが発表されたときも、カラフルな印象は受けたものの、18歳~49歳の年齢層のわたしたちにしてみれば、「何でこの2人?」と思ったものですし、授賞式の間のジョークはどれもイケてないものばかり。あまりの情けなさに思わず、「ありえない……」とひとり言を言ってしまったほどでした。
ウワサでは、司会者用の台本を見たジェームズは、そのあまりの「ダサさ」にあきれ、授賞式であのようなスタンスになってしまった、という話もあるくらいです。いずれにせよ、彼の態度に対する言い訳にはなりませんが、今回の台本はヒドかったといっても過言ではなさそうです。おそらく、船頭の多過ぎるライター・チーム全体の責任だと思われますが、それをコーディネートしたアカデミー側の責任がやはり大モトといってよいでしょう。
な~んて、まあ、いうのはなんとも簡単なんですが、これだけ大きな授賞式を取り仕切ることは本当に大変なことで、一筋縄ではいかないものなのはわかっています。でも、もしアカデミーが本当に「開かれたオスカー」を作っていきたいのならば、エリート意識をもう少し緩和して大衆の求めているものをもっと理解し、本当の意味でオープンな批評家や一般ファンの意見を取り入れた授賞式を製作してみるべきなのではないでしょうか。この際、授賞式の進行アイデアを公募してしまうとか!?
とはいえ、なんだかんだいっても、アカデミー賞は良くても悪くても毎年みんなが楽しみにしているイベントであることに変わりはないんですよね。
(取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Tosto)
高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。
アカデミー賞関連のイベントで、大好きなSFXメイクアップ・アーティストのリック・ベイカーさんに会えました! ラブ~!!