サードシーズン2011年6月
私的映画宣言
梅雨突入で心もじめじめ。BOX買いしたテレビシリーズ「サンズ・オブ・アナーキー/Sons of Anarchy」で気分を上げるしかないかも。
●6月公開の私的オススメは、『シャロウ・グレイブ』を思わせるヒネリとラストが痛快な『アリス・クリードの失踪』(6月11日公開)。
先月はニューヨークでオノ・ヨーコやスパイク・リーに、今月はロサンゼルスでウェス・クレイヴンとジョニー・ノックスヴィルに対面。今年はなぜかいろんな人に会う機会が多い。そして、拙翻訳小説がついに発売になります!
●6月公開の私的オススメは、『ロスト・アイズ』(6月18日公開)。ギレルモ・デル・トロ印のドラマチック・ホラー!
ドラマ「マルモのおきて」の鈴木福くんがかわい過ぎて、ツボりまくり。『ちょんまげぷりん』の完成披露でも前のめりだったけど、『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』でも福くんしか見えなかった。危ないおばさんだ~。
●6月公開の私的オススメは、『軽蔑』(6月4日公開)。
計画停電必至の真夏をエアコンなしで乗り切るため、肉襦袢(じゅばん)を削ぎ落そうとダイエットを敢行中。体組成年齢が実年齢をはるかに下回り、気持ち的にも健康になったような。
●6月公開の私的オススメは、UK発の濃厚スリラー『アリス・クリードの失踪』。(6月11日公開)。
9月にDVD発売の海外ドラマ「WHITE COLLAR」のプレス作りでサンプルをイッキ見。スーツ男に萌えるわたしは主演マット・ボマーにくぎ付けっ! ああ至福のとき。ちなみに『SUPER8/スーパーエイト』の悪役は「WHITE COLLAR」でも悪役ですので、ヨロシクッ!
●6月公開の私的オススメは、『奇跡』(6月11日公開)と『あぜ道のダンディ』(6月18日公開)。
127時間
登山中の思わぬアクシデントで究極の選択を迫られた若き登山家アーロン・ラルストンのノンフィクションを基に、『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督が映画化した感動的なサバイバル・ドラマ。山中で断崖に腕を挟まれた状態のまま、生と死のはざまで127時間を過ごした登山家を襲う絶望と希望を、圧倒的な映像で描く。『スパイダーマン』シリーズのジェームズ・フランコが、迫真の演技で登山家を熱演。主人公が見せる生命力の強さに胸を打たれる。
[出演] ジェームズ・フランコ
[監督] ダニー・ボイル
岩に挟まれた腕を自らナイフで切り落とし、生還したアーロン・ラルストンの話は映画化の話が出る前から知っていたので、ダニー・ボイル監督がどこに焦点を絞るかに興味津々。監督が重点を置いたのは、アーロンの生に向かうアグレッシブともいえる精神力で、これが大正解! 元恋人や子ども時代の妄想が次々と頭に浮かぶほどの悲惨な状況にひるむことなく、さまざまな工夫を重ねつつ、「生きる」ために戦う青年の活力がぐいぐいと心に迫る。ここ数年の成長が著しいジェームズ・フランコはアーロンのさまざまに変化する心情をリアルに伝える熱演を披露し、一世一代の当たり役といえるだろう。
ほぼワン・シチュエーション、しかも登場人物も主人公の独壇場というミニマムなこの設定。90分持つのか? という懸念があったが、なるほど『スラムドッグ$ミリオネア』で見せた最新テクノロジーを駆使した映像マジックと、独創的な絵作り(水筒の中のPOVは衝撃的)はさらに進化し、絶体絶命な主人公の精神状況を巧みに再現。ハードコアなサバイバル劇を見事に映像化し、娯楽に昇華した手腕はさすが。ウワサの衝撃シーンは、その過程はエグいが、意外とあっさり。
『スラムドッグ$ミリオネア』で取材した際にハリウッド・スターのギャラに製作費をごっそり持って行かれるのはバカらしいと語っていたダニー・ボイル監督。今回はこんな手できたか。最初から最後までジェームズ・フランコ! しかも場面はほとんど、こう着状態。さらに結果を知っているにもかかわらず、この緊迫感。クライマックスでは思わず、歯を食いしばってしまった。それにしてもアメリカの自然をとらえるのは外国の監督の方がうまいなぁといつも思う。
感動の実話にありがちな「泣かせ」と無縁なのは、ダニー・ボイル監督の鋭敏なセンスのなせる業か。主人公の苦境を必要以上にアピールせず、彼のこれまでのダメ人生を振り返る作り。情けないほどの事故憐憫(れんびん)をにおわせながら、ポジティブな反省へと至るドラマはウエットな感傷を押し付けず、カラッとした後味を与える。主人公が生還を遂げたことは事実なので、そこに感動を見いだしてもしょうがない。その後の続く人生を見据えているからこそ、グッとくるものがある。
作品の一番の見せ場、めっちゃ痛そーっなシーンの生々しさには絶句。でも、個人的には冒頭、ハイテンションな雄たけびを上げて、峡谷を走り回る怖いもの知らずの主人公に正直、引いた。なので、生き延びるため彼の決断のスゴさには敬服しつつも、彼自身が招いたことだからなー……と冷めた目に。とはいえ、岩に挟まれたというワンシチュエーションで127時間という時間の経過を、映像と音楽使いで見せきったボイル監督の構成力はさすが。ジェームズ・フランコもメキメキと力を付けて、いい役者への階段を上がってんのねー。
X-MEN:ファースト・ジェネレーション
X-Men Character Likenesses TM & (C) 2011 Marvel Characters, Inc. All rights reserved. TM and (C) 2011 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.
遺伝子の突然変異で超人的パワーが覚せいしたミュータントの苦悩と冒険を描いたSFアクションムービー。今作では、X-MENの起源に焦点を絞り、ミュータント第一世代のドラマを壮絶なVFXアクションと衝撃のストーリーで活写する。『キック・アス』のマシュー・ヴォーンが監督を務めるほか、シリーズの立役者ブライアン・シンガーが製作として本作に復帰。『ウォンテッド』のジェームズ・マカヴォイ、『イングロリアス・バスターズ』のマイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ケヴィン・ベーコンら実力派キャストの激闘に注目。
[出演] ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー
[監督] マシュー・ヴォーン
人気シリーズのプリクエルとナメてはいけない! プロフェッサーXとマグニートーの友情&対立や虐げられるミュータントの歴史がテンポよく描かれていて、最後まで飽きさせない。今までにないユーモアを盛り込んだマシュー・ヴォーン監督のセンスにも好感が持てる。主演のジェームズ・マカヴォイとマイケル・ファスベンダーはさすがの演技派で、アメコミな物語をシェイクスピアの悲劇並みに熱演。ちょっぴりやおい色も漂うのだ。2人がうま過ぎるせいでミスティーク役のジェニファー・ローレンスを除く若手スターたちがワイワイ騒ぐお子ちゃまに見えるという結果になったのはやや残念かも。
シリーズ過去作をすべて葬り去る、アメコミ映画史上ベストの1本。マシュー・ヴォーンのソリッドかつ洗練された演出にはさらに磨きがかかっており、圧巻。劇的なドラマとアクションのバランスも秀逸だが、さりげなく狂気とユーモアがにじみ出ているところもいい。それぞれのキャラの特徴を生かした見せ場が用意されているスマートな交通整理ぶりも見事だ。これまでは笑うしかなかったマグニートーのヘルメット、今作でそれをかぶる俳優は皆似合っていたので、問題はイアン・マッケランにあったのだという事実をかみ締めることもできる。
マグニートーとプロフェッサーXの絶妙な関係やなんでミスティークはあんなにマグニートーに忠実なんだろうとか、もうありとあらゆるシリーズの謎が解かれていく。しかも、無理やり感はなく、ドラマとしてきちんと成立しているから、これまでの作品のことがより深く愛着を持てる。若手でも演技派で通用する役者たちを多用しているかいがあるというもの。ただジャニュアリーさんはほかの露出系ミュータントに比べ、ちょっと年齢が微妙。変に現実に引き戻される瞬間がちょいちょい。
『X-MEN』シリーズを好んで観ている観客には満足のいくストーリー。後に敵対関係となるプロフェッサーXとマグニートーの友情が皮肉な結末へと向かう主幹のエピソードはもちろん、ミスティークやビーストら脇キャラの心の動きにも目配りしているから、見応え十分。人間がマイノリティーを排斥しがちであることについて、改めて考えさせられた。シリーズ未体験のファンにどう映るか予想ができず、採点はチョイ低めだが、「私的」視点なら「好きだ!」と断言できる。髪フサフサのプロェッサーXも新鮮!?
X-MENたちの若き日を次世代のハリウッド俳優たちが演じ、作品全体から新鮮なパワーを感じた。監督のマシュー・ヴォーンもいい仕事っぷりだ。『キック・アス』と同じく、アクションシーンに重きを置きながら、本来の自分とどう折り合いをつけるかというミュータントたちの悩みを、思春期ならではの心の揺れと絡め、青春映画としても見応えがある。とくに、ミスティークのドラマは泣けた。あと、どーでもいいことですが、ジェームズ・マカヴォイがつるっばげのプロフェッサーXの青年期かと思うと、妙に彼の生え際が気になってしまった。
SUPER8/スーパーエイト
ハリウッドきってのヒットメーカーである2人のクリエイター、スティーヴン・スピルバーグが製作を務め、J・J・エイブラムスがメガホンを取る極秘ムービー。1979年にアメリカで実際に起こった事故を引き合いに、さまざまなうわさや伝説がささやかれる空軍基地「エリア51」とアメリカ政府とがひた隠しにする秘密を描き出す。出演はテレビドラマ「グレイズ・アナトミー」シリーズや『キングダム/見えざる敵』のカイル・チャンドラー、『SOMEWHERE』のエル・ファニングなど。観客の度肝を抜くような衝撃的な展開に期待。
[出演] カイル・チャンドラー、エル・ファニング
[監督] J・J・エイブラムス
徹底した秘密主義とツイッターPRに個人的にイラリとさせられたが、映画自体はかなり気に入っている。特に心惹(ひ)かれたのが14歳の少年少女の友情とほのかな恋心で、主題歌「マイ・シャローナ」を聞きながら部活と恋話に明け暮れていた思春期がビビッドに思い出されてしまった。いや~、当時は純粋でした。『未知との遭遇』と『E.T.』、そして『スタンド・バイ・ミー』をミキサーにかけたような作風に新鮮味はないかもしれないが、J・J・エイブラムスの映画愛とスティーヴン・スピルバーグに捧げたオマージュがぎっしりなのもオタク心をくすぐる。余談だが、エンディングに流れる短編は子役たちがJ・J監修で実際に制作した作品。ほほ笑ましくカワイイい作品で、思わず頬が緩んでしまった。
「親を失った少年」「アメリカ郊外」「宇宙人」というキーワードで『E.T.』にオマージュをささげたかったのはわかる。が、その設定を基にした独自性と新味が感じられる作品なのかというと、否(いな)。キャラクター造形は浅く、脚本は粗雑でご都合主義的。主人公の成長物語にせよ、親子愛のドラマにせよ、エイリアンの立ち位置にせよ、何もかも中途半端なのだ。感動を強要するオチもいただけない。思わせぶりなだけで、ノスタルジアもなし。エル・ファニング演じるゾンビがキュートなので、かわいいゾンビに目がない人には全力でおススめしたい。
子どもたちが異星人と出会い、成長するSFものという想像していた通りの展開。ただ、そこにスピルバーグ製作とうたわれると、つい『E.T.』を思い浮かべ、泣けるんだろうなぁと期待していたが、そちらはあっさり裏切られた。子どもたちのキャラは立っているし、会話も気が利いていて、演技もいい。なのに最後の最後まで、一切、刺激されなかった涙腺。しかも、エンドロールで流れる子どもたちが撮った映画の方が本編よりずっと面白いというオチ。鑑賞後、まるでキツネにつままれたような気分に。
期待し過ぎたかな……というのが正直なところ。思春期に差しかかった子どもたちの冒険談という点では「1970~1980年代のスピルバーグ作品へのオマージュ」というJ・Jの発言はうなずけるが、SFミステリーという点では短いエピソードの中でアッという間にすべてが明かされてしまうのがもったいない。「あれ」に主人公が対峙(たいじ)する場面の唐突さやあっけなさも減点。とはいえ、友情や初恋のドラマにときめき、列車脱線や爆撃などの本気度の高いスペクタクルに興奮したのも事実。ブツブツ言いながらも、もう一度観に行っちゃうだろう。
列車脱線事故のシーンはやり過ぎなぐらいスゴいけど……。ほかは手堅い。企画力のすごさで驚かせるJ・Jにしてはとってフツーで逆に肩透かしを食らった。巨匠スピルバーグからのダメ出しを恐れたの? あれこれ想像。ラストのアレはつっこまれなかったんだろーか……。でも、懐かしムードたっぷりで子どもよりきっと大人が楽しめますな。わたしは「マイ・シャローナ」など懐かし1979年ソングを耳にしながら、少年の勇気に胸キュン。美少女エル・ファニングのドキリとするような色気、男の子は頑張っちゃうんだろうねー。