第30回
今月の5つ星
夏の2大アニメ、スタジオジブリ&ディズニー/ピクサー最新作をはじめ、10年の歴史に終止符を打つ『ハリー・ポッター』シリーズ完結編、迫力の3D映像で話題沸騰の『トランスフォーマー』シリーズ第3弾など、夏映画らしい大作が勢ぞろい!
浅野忠信のハリウッドデビュー作となった、マーベルコミックの3Dヒーロー映画。神の世界からやってきたヒーローで、武器は「ハンマー」という奇抜な設定から、失笑ものの作品になるかと思いきや、シェイクスピア原作の映画『ハムレット』を手掛けたケネス・ブラナー監督の演出力のおかげか、まるで一級の歴史スペクタクル映画のよう。ソーの父親を演じたアンソニー・ホプキンスの名演も相まって、神の世界の場面には荘厳な雰囲気さえ漂う。主人公ソーを演じるクリス・ヘムズワースは、笑いを誘うおちゃめな部分と、神としての気品を備えたヒーローを好演。見事な肉体美と共に披露するアクションも迫力満点で、本編を観た後では、ハンマーが最高にかっこいい武器に思えてくる。ソーと恋に落ちるヒロインを演じたナタリー・ポートマンのナチュラルなかわいさにも注目。本作でハリウッド進出した浅野忠信があまり登場しないのが、ファンには気になるところかも。(編集部・入倉功一)
『ハリポタ』シリーズがついに完結。PART1はラストへのつなぎ感満載だったが、PART2は『ハリー・ポッターと賢者の石』からの10年分がすべてこのためにあったのだという演出があちこちに散らばっている。久しぶりにホウキに乗ってくれるし、懐かしのアイテムもチラリ。ハーマイオニーの胸の谷間やハリーのボーボーの胸毛を見るといろいろと感慨深い。物語の盛り上がりは、当然シリーズ最高で、周りの人間を巻き込んで戦わなければならないハリーの運命があまりにも重過ぎる!! 思わずウルッときてしまう。シリーズモノの完結編としては、近年まれに見る素晴らしい出来で、スクリーン全体から伝わってくる、キャスト、スタッフの一体感はハンパじゃない。「映画史上最強のファンタジー」として、名を刻むのは間違いないだろう。(編集部・片岸朝香)
本作には、『耳をすませば』の主人公が人形の猫と空を飛ぶような空想シーンや、『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』のような非日常的な世界は出てこない。高度経済成長期を迎えた日本のとある町で出会った男女の恋愛を中心に描いた作品だ。学園闘争の時期でもあったことから、学生たちが日々熱い行動や論争を繰り広げていた時代でもある。一見平凡に見えるかもしれないが、スタジオジブリ特有の手描きの優しいタッチによる背景や人物、その時代特有のシチュエーションは、同世代の人々にただ懐かしさを与えるだけのものではない。カルチェラタン(部室の建物)取り壊し騒動の中で描かれる、少しややこしいが純朴な恋愛と、仲間と一致団結して一つの目標に向かって突き進む学生たちの奮闘など、日々を一生懸命に生き抜く彼らの姿に学ぶことも多いと感じる。ヒロインの海が俊を好きになっていく過程や、カルチェラタンで掃除をする場面での高校生たちのやり取りなど、現在ほど男女の交遊関係がオープンではなかった時代の「恥じらい」を感じさせる初々しい描写には思わずドキドキしてしまった。(編集部・小林裕介)
人間を守るために戦っているにもかかわらず、その努力が報われるどころか強大な力を持つゆえに「危険な存在」として恐れられる正義のトランスフォーマー集団、オートボット。果たして、このまま人間の味方であり続けるべきなのか? ハリウッド屈指のヒットメーカー、マイケル・ベイ監督、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を手掛けた人気シリーズ第3弾は、『X-MEN』シリーズをほうふつとさせるマイノリティーの葛藤がテーマ。とはいえ、単純明快なマイケル・ベイ映画にこ難しい考察は無用。とにかく、終盤のオートボットVSディセプティコン(悪のトランスフォーマー軍団)の戦いがスゴイ。鳥や獣型のほか高層ビルを破壊してしまう驚異的なパワーを持ったヘビ型など、シリーズ前2作より格段に進化した邪悪なロボたちがゴジラも真っ青の破壊力で大暴れ! 3D映像&多様なカメラワークによって、街を縦横無尽に動き回ってロボたちの戦いを間近で観ているような臨場感を味わえる。ハリウッド映画の底力を改めて目の当たりにする力作だ。(編集部・石井百合子)
傲慢(ごうまん)な人気レーサー、マックィーンが田舎町で人生を見つめ直す姿をゆったりとしたテンポで描いた癒やし路線の前作から一転、世界最強のレーサーを決めるワールド・グランプリに挑むマックィーンと、その相棒メーターの活躍をスピーディーなテンポで見せるハイテンションな続編。ワールド・グランプリの幕開けとなる日本では、芸者や力士、ギャルをモチーフにしたユニークな車たちがお出迎え。おとぼけキャラのメーターが、なぜかワールド・グランプリに渦巻く陰謀を阻止しようとする英国スパイの作戦に巻き込まれ、ジェームズ・ボンド(!)ばりのミッションに挑むハメになる怒濤(どとう)の前半と、ケンカ別れしたマックィーンとメーターが関係を修復していく後半のメリハリが利いていて、笑いあり、涙ありのてんこ盛りの活劇に仕上がっている。これぞ、サービス精神旺盛なジョン・ラセターの真骨頂といったところ。友情は大事だけど、ときにジャマになることもある。どうすれば、ホンモノの友情が築けるのか……? 前作からほんの少し大人になったマックィーンが新たに学ぶ友情の真理は、きっと誰の心にもじんわりと届くはず。(編集部・石井百合子)