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映画『X-MEN』シリーズでのローガン(ウルヴァリン)役でブレイクを果たし、モンスター・ハンターを演じた主演映画『ヴァン・ヘルシング』のヒットでハリウッドにおける地位を確立したヒュー・ジャックマン。上記作品におけるアクションスターとしての活躍はもちろん、ラブコメ映画『ニューヨークの恋人』における勘違い貴族っぷりや、映画『プレステージ』での鬼気迫る演技など、作品ごとに異なった表情を見せてくれている彼が本作で挑戦するのは、何とダメダメな父親役!
私生活では子煩悩なパパとして知られるヒューですが、劇中でのダメダメっぷりは実に堂に入ったもの。久々に再会した息子の年齢を間違えるのは序の口、それどころか息子の親権を放棄する代わりに大金をせびる、しかもその金をすぐに使い果たす……などなど、訴えられてもおかしくはないのでは? というほど徹底したダメな父親を熱演。とりわけ、親権と引き換えに手に入れたお金で購入したロボットを初めて操作する場面のうれしそうな表情といったら! その熱の入りようは、観ているこちらが「もしかして私生活でもこうなのでは……」とヒューの家族が心配になるほどなのです。
ですが、そんな典型的なダメな父親を憎めないキャラクターに変えてしまうのがヒューの魅力。あの甘いマスクでお願いされたら、胸がキュンとすること間違いなし! 実際に劇中では、エヴァンジェリン・リリー演じるベイリーがその魅力にやられており、ずるずると腐れ縁を続けている描写が……。下手な俳優が演じれば単なる絵空事になってしまいそうな描写にも説得力を持たせられるのは、ヒューの演技力と甘いマスクがあってこそでしょう! ヒュー演じる父親は、まさに本作の萌えポイントといえます。
ヒュー演じる父親のチャーリーは、今はしがないロボット・ボクシングのプロモーターではありますが、かつては天才ボクサーとして鳴らした存在。ですが、人間同士のボクシングが衰退し、ロボット・ボクシングが隆盛を極めると、彼のボクシングへの情熱も下火に……。そんな彼が、息子のために再びボクシングと向き合うシーンは鳥肌モノ。それまでの萌える(?)ダメダメっぷりがあるからこそ、このドラマパートがより熱く燃えるものに仕上がっているのだと納得させられます。最後、別れが決定的になった父親が息子にしてあげられることとは? ヒュー演じる父親の姿からは、そんな普遍的なメッセージが浮かび上がってくるのです! |
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その甘いマスク……女性に対するアピールは抜群です!
©DreamWorks II Distribution Co. LLC All Rights Reserved.
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でも、やるときはやる男なんです!
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本作の製作総指揮を務めているスティーヴン・スピルバーグといえば、古くは『E.T.』やクリスチャン・ベイル主演の『太陽の帝国』、2000年代に入ってからも『A.I.』といった監督作品で子役を主役に起用したノスタルジーあふれる作品で大ヒットを記録。製作、あるいは製作総指揮を務めた作品に限っても、子どもたちの大冒険を描いた『グーニーズ』を筆頭に、子どもたちをみずみずしく描いた作品が多くを占めるなど、キャリア初期から一貫して、子どもの存在を向き合い続けている映画人です。そんなスピルバーグの提言により、見いだされた本作の子役がダコタ・ゴヨ。5歳よりテレビ界で活躍し、映画では今年公開されたアメコミ映画『マイティ・ソー』で主人公の子ども時代を演じて話題になった男の子なのです。
本作で、ダコタは自分の年齢すら覚えていない父親チャーリーの元に引き取られる少年マックスを好演。初登場時こそ、すねたように憎まれ口をたたきますが、その後すぐに、チャーリーの所有するロボットを前に目をきらきらさせるなど、せりふに頼らない表情での演技が光ります。母親を亡くしたばかりという設定もストーリーが進むごとにボディーブローのように効いてきて、父親につれなくされたときに見せる寂しげな表情は、観客の庇護欲をかき立てること間違いなし!
子役の登場する映画は感動を強要されているみたいで苦手……と思っている人も、ご安心を。本作では、あくまでもチャーリーやベイリーといったマックスの周囲にいる大人たちとの交流を通して、マックスの思っていることが浮かび上がってくるという構成になっており、感動をわざとらしく演出するなんてことはありません。それだけに、ゴミ捨て場で見つけたロボット“ATOM”へのマックスの執着などは最初唐突な印象を受けるかもしれませんが、ストーリーが進むうち、その必然性が自然にわかってくるというのは、ダコタが何かを持っているからこそでしょう。
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はにかんだ笑顔がかわいいっ!
Jun Sato / WireImage / Getty Images
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その演技力はヒュー・ジャックマンにも負けていません!
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本作の舞台は2020年、人間同士の格闘技に代わり、ロボット格闘技が隆盛を極めている時代です。そのため、本作にはたくさんのロボットが登場するのですが、それらは人間キャラクターに負けず劣らず、ユニークな性格付けがされています。例えば、かつて頂点を争ったロボット「ノイジー・ボーイ」。「超悪男子」という漢字がデカデカとペイントされたボディー、カブトを模したヘッド部など、そのデザインは目を引くものがあります。
本作のためにデザイン・設計されたロボットは実に19種類にも上り、実際に作られた4体のうちの1体が主人公の父子と一緒に戦うことになる“ATOM”。2014年に製造された第2世代の旧式ロボットであり、「旧式」という言葉が表すとおり、その外見はどうにも古めかしく、「かっこいい」とはお世辞にも言い難いかもしれません。ゴミ捨て場で発見されたこともあって、父親チャーリーからは見向きもされず、息子マックスだけが“ATOM”に温かい視線を注ぐのですが、それはマックスがゴミ捨て場にいた“ATOM”同様、一度は父親から見捨てられた立場であることも無関係ではないでしょう。つまり、本作で描かれているロボットは感情がないため、まるで鏡のように、所有者(この場合はマックス)の姿を映しているのです。もともとはスパーリング用のトレーニング・ロボットだった“ATOM”に備わっている特別な能力が、相手の動きをまねするシャドー機能であることも、“ATOM”の鏡としての役割を暗示しています。
最初は無骨なロボットでしかなかった“ATOM”が、そのようにストーリーが進むうちに登場人物たちの分身になって、ロボット格闘技の世界に挑戦することになります。無表情であるはずの“ATOM”がだんだんと表情豊かに見えてくるのも、ちょうどこのころ。まるで長年一緒に過ごした道具やペットに対するのと同じような愛情が芽生えてくるのです。それは、もしかしてロボット萌えといえるものなのかも? かすかに首をかしげるしぐさなど、“ATOM”のかわいらしさにはもう別の意味でノックアウトです!
ですが、そんな“萌え”が“燃え”に昇華されるのが本作のすごいところ。あまり詳しいことは明かせませんが、最後のファイティングシーンは、まるで『ロッキー』の興奮を思い起こさせるものに! 大迫力であることはもちろん、リング上での戦いがそれだけで完結するものではなく、それまでに積み上げられたドラマ部分の盛り上がりと一体となって、観客の胸に訴えかけてくるのです。それはまさに、一瞬足りとも目が離すことのできないクライマックス。観客は目の前で展開される人間とロボットのドラマにただただ圧倒されるはずです!
映画『リアル・スティール』は12月9日より全国公開 |
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独特のデザインが光る「ノイジー・ボーイ」
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本作で最も演技達者なのは、この“ATOM”かも……?
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文・構成:シネマトゥデイ編集部 福田麗 |
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