第36回アディーのオタク観点から占う、アカデミー賞作品部門ノミネーション!
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
LA発!ハリウッドコンフィデンシャル
アディーのオタク観点から占う、アカデミー賞作品部門ノミネーション!
映画ファンの皆さん、お元気ですか? いよいよ12月も後半。今年も残すところあとわずかになっちゃいました。
ここハリウッドでは第84回アカデミー賞ノミネーションを目前にして、師走ならぬ映画関係者たちの走るシーズンとなり、とにかく大忙しの年の瀬となっています。
2011年最後のハリコンでは第84回アカデミー賞作品賞部門のノミネーションの行方を占ってみようと思います!
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2009年の第82回アカデミー賞から施行された、作品賞部門ノミネーション作品数を5作品から10作品に増やすという試みは、2年続いたものの、単に10候補作品の枠を埋めるために映画ファンの間では大人気でもアカデミー賞では十中八九選ばれそうにない作品までねじ込まれ、その意義が疑問視され始めました。
例えば、第82回アカデミー賞作品賞候補になったSF映画『第9地区』。この作品はかなりの秀作でしたが、同年のライバル作品であった『アバター』に比べるとやはりオスカー受賞は最初からほぼ無理があり、それではノミネートといってもただの枠埋めとなってしまったのでは……という印象は否めません。
ということで来年2月発表の第84回アカデミー賞からは、少なくとも5作品、多くて10作品のノミネーションという形に収まり、今回のノミネーションでは「枠埋め」的な候補作品はなくすという規則に改訂されました。
では現在までにハリウッド界隈ではどんな作品がアカデミー候補のうわさに上っているのでしょうか? スペースの関係もあるのでここではノミネートされそうな5作品、アディー的予想も交えて、一挙ご紹介します!
本国アメリカでの大ヒットはご存じのとおり。日本でもこのほど公開され、ブランジェリーナ一家の来日も含め大きな話題となりました。
この作品は、アカデミー賞作品賞候補としても有望視されてはいますが、作品の趣として娯楽色が強く、過去のアカデミーの傾向を考えると、この要素がオスカー争奪戦本番では足かせになる可能性を示唆しています。とはいうものの、『マネーボール』が作品賞の10作品枠の一つとしてノミネートされるのはほぼ確実といってもいいほどで、主演ブラッド・ピットにおいては主演男優賞候補ノミネーションは確実、また本番での受賞も可能性大と言っても過言ではないと思います。
ちなみにわたしは、ブラッドと共演したジョナ・ヒルの助演男優賞候補ノミネーションを個人的に予想しています。コメディアンだけでなくドラマもこまやかな感性で演ずるジョナはこれからの有望株と断言させていただきます!
日本では残念ながら来年4月まで公開されないようですが、すでに公開されているアメリカでは話題沸騰中。トーキー映画の登場で没落していくサイレント映画男優と躍進するトーキー女優を描く物語です。芸術的で非常に大胆な作りとなっており、全編を通して白黒でサイレントという、今の映画界ではリスキーとされるようなスタイルで作られています。
すでにカンヌ国際映画祭でプレミア上映され、主演のジャン・デュジャルダンは男優賞を受賞したばかりか、彼の相棒を演じたアギーという名の助演俳優が世界中で注目を集めています。実はこのアギーちゃんは俳優ならぬ「犬優」(?!)で超かわいいジャック・ラッセル・テリアなのです。とにかくアギーの演技たるや犬好きでなくても、思わず胸キュン。全米ではフェイスブックやツイッターで、「アギーをよろしく!」というアギーをアカデミー賞候補に推薦する会がヒートアップ中です。わたしもジョインしました(笑)。
ここで『アーティスト』が作品賞部門でノミネートされる確率を断言いたします……最大で99.9%! えー、100%じゃないわけはですね、何が起こるかわからないこのハリウッドだからでして。映画のPR活動が何らかの理由でアカデミーのお怒りに触れてノミネーションされない……なんてことがあるやもしれず。まぁ、そんなことはない確率も99.9%ですが……(笑)。
『サイドウェイ』(2004製作)で第77回アカデミー賞脚色賞を受賞したアレクサンダー・ペインが監督し、ジョージ・クルーニーが主演する作品。
先祖代々の土地を管理することで仕事漬けだった中年男マットは、妻がボート事故でこん睡状態に陥ったことで、疎遠だった2人の娘たちの面倒を見ることになる。娘たちとの接点を見つけられずにいら立っていたときに、長女から妻の不倫を打ち明けられるマット。彼は、娘たちと、長女についてきたボーイフレンドと一緒に、妻の浮気相手捜しに乗り出す。その旅の中で彼らが見つけたものとは……というのがあらすじ。
マット役のジョージ・クルーニーが持つ「タフだけど脆(もろ)さもある魅力」が役柄に存分に生かされ、とてもイイ味を出しています。この映画の舞台が、リゾートとしてではなく、住人からみた「平凡なハワイ」というのもオツで、個人的に今年一番気に入っている作品の一つです。
この作品も実際の受賞は置いておくとしても、ノミネーションはほぼ確実といていいと思います。
実はこの作品は、アメリカでは2011年のクリスマス公開なので、外国人ジャーナリストにはマスコミの試写案内も来てないんです。
そこで、予告編と周囲の話を総合しての予想です。基本的に「ハリウッドの王様」スピルバーグ監督の作品ですし、馬が主人公の『プライベート・ライアン』みたいな部分もあり、「心を揺さぶる名作!」的な狙いで前評判も良い。批評家たちもすでにアカデミー賞候補に挙がるであろうとうわさをして、わたしとしてもアカデミー賞作品賞のノミネーションは受けると思います。
アメリカでは今年の夏に公開され、全米ボックスオフィスで最終的に25日間連続1位を維持。1999年に公開され35日間連続1位となった『シックス・センス』に次ぐ記録を樹立しました。一番の大穴作品といってもいいかもしれません。
ベストセラー小説を映画化したこの作品は、人種差別が色濃く残っていた1960年代の米南部が舞台。作家志望の白人の女学生スキーターが、メイドとして働く黒人女性たちにインタビューしていく。メイドたちから見た不平等な社会に焦点を合わせたことで彼女は地域の反感を買う。でもスキーターはそれに負けることなく、黒人女性たちとの友情を築いていく、という元気の出る映画です。
この作品は、ストーリーそのものの素晴らしさでノミネーションの確率は「大」ですが、その可能性をより確かなものにしているのは、やはり人種差別と黒人女性たちをテーマにした映画ということ。「平等」の精神を好むアカデミー賞が、改めてそのスタンスを打ち出せることにもなるわけで、それを考えるとこの作品のノミネーションはさらに確かだという予感がします。
このほかにも、マーティン・スコセッシ監督初の3Dファンタジー作品『ヒューゴの不思議な発明』や、ショーン・ペン&ブラッド・ピット主演『ツリー・オブ・ライフ』、ウディ・アレン監督『ミッドナイト・イン・パリ(原題) / MIDNIGHT IN PARIS』などなどありますが、取りあえずスペースの関係もあるので、以上としておきます。
実はこのわたくし、何を隠そう全米の大御所映画評論家ロジャー・イーバート氏と前回のアカデミー賞の予想を競い合って、イーバート氏よりも数多くの受賞作品(あるいは受賞者)を当てて賞品をいただいたんです! ……といってもただのオンラインコンテストだったんですが、今回も必勝! と意欲を燃やしています(笑)。
これからもハリコンでは、映画祭シーズンにちなんで、突っ込んだアカデミー賞関係のレポートをお伝えしていけたらと思います。そして今年も1年間応援してくださって、本当にどうもありがとうございました。新年もまたよろしくお願いいたします。
それでは風邪などひかないよう気を付けてどうぞ良いお年をお迎えくださいね!
高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。
日本語ツイッター始めました!→@akemi_k_tosto
春の大震災で断念した里帰りを大晦日にだんなのクリちゃんと決行することに! 新年は東京の実家へ里帰りです。楽しみだな~!