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サードシーズン2012年2月

私的映画宣言

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私的映画宣言 サード・シーズン2月

筆者の近況報告

相馬学

新スパイダーマン俳優アンドリュー・ガーフィールドに取材。とてもマジメで、どん な質問にも真摯(しんし)に答える姿勢に好感。ハリウッド・セレブの垢(あか)に染まらないでほしいぞ。
●2月公開の私的オススメは、期間限定公開が惜しい『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(2月11日公開)。

中山治美

少しは景気が持ち直しているのか? 『SHAME -シェイム-』『ミッドナイト・イン・パリ』『私が、生きる肌』など昨年開催された映画祭の話題作がさほどの時差なく日本上陸。2012年のベスト10は激戦必至。
●2月公開の私的オススメは、『キツツキと雨』(2月11日公開)。

斉藤博昭

忙しくても、寒くても、週2で水泳を敢行中。試写や原稿書きで固まった全身がほぐれる上に、かなりのストレス発散。この原理を、『SHAME -シェイム-』の主人公の全力ジョギングシーンで納得しました(あくまで動機は違いますけど)。
●2月公開の私的オススメは、『ドラゴン・タトゥーの女』(2月10日公開)。

山縣みどり

3年ぶりくらいにソウルに! K-POPの影響なのか日本語も話せるイケメン男子が増えているのにびっくり。日本語字幕が付く映画館もあるらしく、韓流ファンにはたまらんよね。
●2月公開の私的オススメは、『ヤング≒アダルト』(2月25日公開)を強力プッシュ!

今祥枝

コレクターズ・アイテムとして生き残る道しかないと思われるパッケージ産業。勉強会や意見交換などの機会も増えたが、逆風をどう迎え撃つのかという具体的・建設的な話し合いに至ることはあまりない。傍観者として業界の推移を楽しむかな。
●2月公開の私的オススメは、『人生はビギナーズ』(2月4日公開)。

ドラゴン・タトゥーの女

『ミレニアム』3部作として映画にもなったスウェーデンのベストセラー小説をハリウッドで映画化。『ソーシャル・ネットワーク』デヴィッド・フィンチャーが監督を務め、白夜のスウェーデンを舞台に、数十年に及ぶ血族の因縁と猟奇的ミステリーに彩られた物語が展開する。キャスティング選考も話題になった天才ハッカーのヒロインを演じるのは、『ソーシャル・ネットワーク』のルーニー・マーラ。彼女と協力し合うジャーナリストを、『007』シリーズのダニエル・クレイグが演じる。原作とは異なる衝撃のラストに注目だ。

[出演] ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ
[監督] デヴィッド・フィンチャー

相馬学

9点予告編でおなじみの、カレン・Oのシャウトが響くオープニングだけで鳥肌モノだが、映像の緊張感はすさまじく、原作やスウェーデン版映画に触れてオチを知っていても十分にドキドキできた。キモはもちろんヒロイン、リスベット。AKB48とは対極にある、人を絶対に寄せ付けないルックスや低体温の存在感が鮮烈で、彼女が映っているだけで観ているこちらも緊張してしまう。原作に忠実な、結末の余韻も正しい。失望があってこそリスベットの闘志は輝くのだから。

中山治美

9点ソニーの映画だが、ミカエルやリスベットが使うのはMac! この辺りにフィンチャー監督のこだわりを感じてグッときた。リスベットが受ける性的虐待&復しゅうシーンも容赦なく、覚悟のほどがうかがえる。ただスウェーデン版に+αしたラストはそれなりに納得できるが、リスベットが徐々に乙女化し、ミカエルへのLoveを全面に出すのはスイート過ぎないかい? バイクの乗り方もしぐさもカッコイイんだから、最後までクールな女でお願いしますよ。

斉藤博昭

9点「移民の歌」が流れ、妖しくも不気味、そして妙にエロいオープニングタイトルで激しく心がざわめき、あとは映画の流れに乗ってラストまで一気! 構成やテンポによどみがない。ここ数作のデヴィッド・フィンチャー作品は、主人公キャラの強烈度が半端じゃないが、今回のリスベットには、見終わった瞬間、フィンチャーの慈しむような愛が感じられた。率直な感想は「スウェーデン版より、こっちを先に観たかった」。でも事件の概要を理解していたから、人間関係を混乱せずに観られたという複雑な思いもある。

山縣みどり

7点どうしてもスウェーデン版と比較してしまうのだが、リスベットのキャラ作りに関してはルーニー・マーラに軍配を上げたい。ガチガチの鎧兜(よろいかぶと)で小鳥のような繊細な内面を守る女性といった複雑さがリアルに伝わってきた。美人でもセクシーでもないが、キャラクター・アクターとして相当なポテンシャルがある女優だ。原作小説はテンポがやや乱雑なのだが、スティーヴン・ザイリアンの脚本は緩急が巧みで、謎解き部分と人間ドラマ部分が上手にかみ合っている。かなりの長尺だがまったく飽きさせないのは、フィンチャーの演出よりも脚本に負う部分が大きい。もやもやとした恐怖をあおるフィンチャーらしさは原作を知る人間には効果なしだったが、猫を使った猟奇的シーンは『セブン』を彷彿(ほうふつ)させてよし!

今祥枝

7点『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』を観ていなかったらフィンチャー版で十二分に満足できたはず。丁寧な翻案に俳優、映像等々、高いレベル。が、スウェーデン版と何が違うのかといわれれば疑問で、特にハリウッド版の必要性も感じないというのが正直なところ。とりわけ前評判の高かったルーニー・マーラは、確かに体当たりの熱演だが、リスベットを演じるからには覚悟して臨んだはず。スウェーデン版のノオミ・ラパスの野性味のある目力が忘れられない筆者には物足りなく感じられた。

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キツツキと雨


(C) 2011「キツツキと雨」製作委員会

森で暮らす木こりとデビュー作の撮影にやって来た映画監督が出会い、年齢や環境、価値観を超えて心を通わせ合うプロセスをハートウオーミングに描くコメディー・ドラマ。『南極料理人』沖田修一がメガホンを取り、木こり役の役所広司と新人映画監督役の小栗旬が初の共演を果たす。ほかに、若手実力派の高良健吾のほか、嶋田久作平田満伊武雅刀山崎努といった強力なベテラン陣が共演。役所と小栗はもちろん、脇を固めるひと癖もふた癖もありそうな俳優たちのコミカルな演技にも注目だ。

[出演] 役所広司、小栗旬
[監督] 沖田修一

相馬学

8点世代間のギャップを埋めるために、「映画」が機能している(しかもゾンビ・ホラー!)点に一映画ファンとして好感を抱いた。何かを作り出そうとする姿勢に共感が生じると、連帯感が芽生えるもので。乱発すると気恥ずかしくなってくる「きずな」という言葉も、ここではスンナリ受け入れられた。田舎町を舞台にしている点も妙味で、斜に構えがちな都会の映画人と純朴な村人との交流に温かいものを覚える。役所広司のゾンビ・メイクに笑った!

中山治美

10点3Dにデジタルと昨今の映画界は技術の進化がめまぐるしいが、そんな中で作り手は原点回帰に向かっているのか? マーティン・スコセッシ『ヒューゴの不思議な発明』で映画創世記を描けば、サイレント時代にオマージュをささげた『アーティスト』、そして新人監督の成長期ともいえる本作と、映画愛にあふれた作品が相次いで公開。観ているこちらも、映画に触れたトキメキを思い起こし、幸せな気持ちになる。筆者、この3本で2012年を乗り切れそう。

斉藤博昭

9点ウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』とも重なって、最後まで幸せな気分でスクリーンを見つめていた。異業種の人間がかかわることで、現場が活気づき、面白くなっていく。そんな化学反応をうまく物語にした好例。映画の撮影現場なので、作り手側の内輪ウケになる危険もはらんだが、そこらをうまく回避して、誰もが感情移入できる作品に仕立てたのは、さすが『南極料理人』の監督。遠く離れても、心はつながっている。そんなメッセージが胸にツーンときた。

山縣みどり

7点素朴な村で林業に携わる男性が映画撮影に巻き込まれるというプロットは、ややもすればコメディーだが、いい感じの人情ドラマに仕上がっている。撮影される映画がB級ゾンビ映画だったり、古参スタッフが新人監督を軽視する「いかにも」な描写にも嫌味はなく、適度なほっこり感を醸し出すのは監督の演出の妙だろう。役所と小栗演じる主要キャラの心情の変化を温泉浴場の距離で表現する演出も、ヤボくさくなる一歩手前でとどめるセンスが光っている。『南極料理人』もそうだったが、人間の良き部分をナチュラルに引き出すのが沖田監督の天性だろう。ワケわかんないタイトルは再考してもらいたいが、満足度は高いよ。

今祥枝

7点冒頭、マスコミ全般に通じる厚かましさを目の当たりにして腰が引けたが、朴訥(ぼくとつ)とした木こりにふんする役所広司が味わい深くも笑いを誘う名演に気を取り直し、主に役所の演技に集中して最後まで楽しめた。小栗旬演じる新人監督は頼りなさ過ぎるし口下手過ぎるが、これが本当に今どきの若者像なのかな?(こういう人はいるとは思うけど)筆者も一回り以上も年下の相手と仕事をする機会が増えているのでリアルにいろいろと考えさせられる部分もあった。

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ヤング≒アダルト


(C) 2011 Paramount Pictures and Mercury Productions, LLC. All Rights Reserved.

仕事も恋愛もうまくいかない30代の女性が、妻子のいる元恋人と復縁しようと大騒動を繰り広げる人間ドラマ。『JUNO/ジュノ』の監督・脚本コンビ、ジェイソン・ライトマンディアブロ・コディが再びタッグを組み、「真の幸せとは何か」というテーマを辛らつな笑いと共に描き出す。大人に成り切れずイタい言動を繰り広げるヒロインを、オスカー女優シャーリーズ・セロンが熱演。共演には『インシディアス』パトリック・ウィルソン、『スパイダーマン』シリーズのJ・K・シモンズら実力派が名を連ねる。

[出演] シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン
[監督] ジェイソン・ライトマン

相馬学

7点ダメ人間の自覚が少なからずある身にとって、これはイタい。無防備全開のスッピン顔に、着古したハローキティのTシャツ、プリンターのインク切れをツバで代用してみたら印刷ムラの嵐、そして20年前の恋人を取り戻せると考えている思い込みのみの自信。あらゆる点でヒロインの情けなさは強調されるが、最先端のファッションでキメるときはキメる、そのギャップがイタさを加速させる。男女の違いはあるけど、見栄っ張りとしてはつい共感してしまう。

中山治美

7点鑑賞後に本作のコピーを観てドキリとした。「あなたは、ワタシを、笑えない」--。ハイ、その通り。筆者、もうすぐ43歳で独身。37歳のメイビスのように美ぼうも過去にすがるような栄光もないけど、やっぱりこの年代で一人で生きているオンナは似たり寄ったり。端から見ればイタいですよ。えぇ、えぇ。しかも日本で似たようなテーマの映画・ドラマは数あれど、ここまで主人公をえげつなく描くとはアッパレ。スゴ過ぎて、いまだ消化できないけど。

斉藤博昭

3点観る人によって好き嫌いが分かれる作品だろうが、とことん嫌味で自虐的なヒロインというのは、誰もが感じるところ。でもこの種のキャラクターに接するとき、求めたいのは嫌味さの裏側にある、もろさや人間くささだと思うのだが……。脚本のディアブロ・コディは、徹底して「共感できないキャラ」を描こうとしたのだろうか? いや、むしろ共感部分を漂わせようとして、うまく機能していない気がする。そのあたりで、嫌われ者を主人公にした『ソーシャル・ネットワーク』の後味と大きく異なる。シャーリーズ・セロンが精いっぱい頑張っているだけに、残念。

山縣みどり

9点自分勝手で自信満々で、ウソつきでアルコール&リアリティー番組依存症で……という同性の共感をまったく得られない女性メイビスが主役という、世にもまれな女性映画。頭の一部はいまだにティーンのままで、パパになったばかりの元恋人を「家庭に縛り付けられてかわいそう。わたしが救い出す」と一人意気込む。痛~い、痛すぎる。とはいえ彼女が追い詰められた状況はよくわかるし、「早く目を覚ませ!」と心の中でハッパをかけてしまうのも事実。人間観察が得意な脚本家ディアブロ・コディのさじ加減はやはり絶妙だ。メイビスを好きか嫌いかで評価が分かれる映画だが、わたしは大好き。そして、究極のビッチを遠慮会釈もなく演じたシャーリーズ・セロンのガッツに敬意を表したい。ま、本当の美人だからできたのかもしんないけど。

今祥枝

6点女の嫌な部分をさらけ出した主人公メイビスを演じるシャーリーズ・セロンの好演には感心した。田舎にとどまろうが都会に出て頑張ろうが好きに生きたらいいけど、メイビスは一人で突っ走っている分にはいいが他人と比較して幸不幸を測っている点が残念。どこで何をしようが絶対に満足することのない現代女性の一つの典型で興味深い脚本だと思う。個人的には、他力本願でメイビスに「わたしも(都会に)連れていって」と言う、自らは行動せず田舎暮らしに不満を抱く看護師に最も反発を覚えた。

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筆者プロフィール

今 祥枝斉藤 博昭前田 かおり
中山 治美相馬 学高山 亜紀
小林 真里山縣 みどり
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