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最初に3Dブームが来たのは、1950年代。このころ急速に一般家庭へと普及したテレビの影響で映画館への来場者が減り、その打開策として登場した。世界で80本ほど、日本でも3本の3D映画が制作された(東宝配給作品『飛び出した日曜日』『私は狙われている』、松竹配給作品『決闘』)が、同じく打開策として登場したワイドスクリーン(従来よりも大きなスクリーンで映画を楽しむことができるシステム)の方が、比較的安価に導入できたため、3D映画の方は廃れていく。
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当時の3D映画を鑑賞する人々
J. R. Eyerman / Getty Images |
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ワイドスクリーンの一方式「シネマスコープ」で上映された映像
J. R. Eyerman / Getty Images |
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次のブームは、1980年代。カメラ1台、フィルム1本で3D映像が制作できるシステムが開発され、第2次3Dブームとなった。しかし、このとき制作された作品は、ホラーや成人向け作品などB級作品が目立っていた。成人向け作品の中には大ヒットを記録したものもあり、日本でも公開されたが、このブームでは日本製の3D映画が制作されることはなかった。その代わりに日本では博覧会用などの3D映像の制作が進んだ。また、このとき制作された3D作品には、ディズニーランドのおなじみのアトラクション「キャプテンEO」も。第2次3Dブームは、10年から15年上映することを前提に、撮影機材、映写システムを独自に開発しても採算が取れた遊園地のアトラクションでは広がりを見せたが、映画館に3Dの映写システムが定着するまでには至らなかった。 |
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リバイバル上映も大人気!キャプテンEO!!
Handout / Getty Images |
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現在の3Dブームは、ジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター』によってもたらされたと考えられがちだが、それよりも大きな要因が、「デジタル化」にあるという。一般家庭に携帯電話やパソコンが浸透していったように、映画の制作現場でも進んだ「デジタル化」。しかし、映画館の映写システムは、アナログのままだったため、デジタルで制作したものを、映画館で上映するためにフィルムに戻す作業が必要になった。ジェームズ・キャメロン、ジョージ・ルーカスら巨匠たちは、この事態を打破するために、3D映画を制作することを発表。「3D」は、デジタル化のためのオプションとして、ついぞ広まらなかった映画館へとようやく広まっていくこととなった。
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3Dメガネを掛けて映画館のデジタル化をアピール!ShoWest 2005 にてダグ・ダロウ、ジョージ・ルーカス、ランダル・クレイザー、ロバート・ロドリゲス、ジェームズ・キャメロン
John Sciulli / WireImage / Getty Images
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しかし、もちろん『アバター』にも功績がある。『アバター』は、3Dで奥行きを表現したことで、3D映画の可能性を広げ、その後さまざまな3D映画が制作されていくこととなる礎を作った。さらに、『アバター』は、3D映画に対する観客のネガティブな感想にも作用した。スクリーンに映し出された飛び出す3D映像を観るとき、人は普段生活している上ではありえない目の動きをしなければならず、疲れを感じてしまう。しかし、『アバター』のように奥行きを表現した3D映像からは、疲れは感じにくい。つまり、疲れを感じさせない3Dで、『アバター』は、3D映画が観客に受け入れられやすい環境をも作ったのだ。 |
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Photofest/Twentieth Century-Fox Film Corporation/ゲッティ イメージズ
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売れない小説家に、怒りっぽいけどどこか温かい父親、居酒屋を経営していたが、ストリッパーに転落してしまう女性、集団就職で東京にやって来た女性……昭和の時代、どこかにいたであろう登場人物たちが繰り広げる温かい家族の物語が、観客の心をつかみ、幅広い世代からの支持を受け、異例のヒットとなった『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ。そんな物語展開が魅力のシリーズ最新作を、3Dで制作するといえば、批判の声が上がるのも納得できる。しかし、もともと同シリーズは、最先端のCG技術を駆使して昭和の街を再現したことが評価されたシリーズでもある。3Dは、前述のように環境も整えられ、今の映画界にとって、最先端の注目技術。「最先端の技術を使って、昭和の街を再現する」。3Dを採用した今作でも、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズの根幹は変わっていないことがわかる。
では、前2作は「CGで昭和の街を再現する」ことに成功したというのであれば、3作目は「3Dで昭和の街を再現する」ことに成功したのだろうか? 1作目から「劇場をタイムマシンにしたい」と考えていたというシリーズを通してメガホンを取ってきた山崎貴監督。確かに、前2作は、冒頭に映し出される東宝マークから、昭和の時代にタイムスリップする感覚があった。特に、2作目の『ALWAYS 続・三丁目の夕日』では、冒頭で「ゴジラ」の世界を再現。さらにタイムスリップ感をアップさせた。そして、3作目となる最新作の冒頭はというと、採用した3Dを生かした東京タワーの俯瞰映像。一平(小清水一揮)が投げた飛行機が、夕日町三丁目を通り抜け、大通りへと出て、真っすぐに東京タワーへと向かっていくと、驚くほど飛び出した東京タワーの俯瞰が映し出される。飛行機を追い、引き込まれるその世界に、観客はさらなるタイムスリップ感を味わうことができるだろう。 |
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1作目『ALWAYS 三丁目の夕日』
(C)2005「ALWAYS 三丁目の夕日」製作委員会
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2作目『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
(C) 2007「ALWAYS 続・三丁目の夕日」製作委員会
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3作目『ALWAYS 三丁目の夕日’64』
(C) 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会 |
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冒頭シーンに注目!
(C) 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会 |
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驚きの東京タワーの俯瞰映像!
(C) 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会 |
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東京タワーの俯瞰はもちろん、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』には、3D技術を駆使した監督の遊びが満載。堤真一演じる“則文さん”がごはんを食べていて飛ばしたごはん粒は飛び出すし、エンドロールでも、飛行機が飛び出してくるので注目してほしい。さらに、監督が一番面白いと言うのは、赤とんぼの映像。“うざい”ほどに赤とんぼが飛び交った昭和の時代を思い起こさせるように飛び交う赤とんぼの映像は、見事に“うざく”仕上がっており、タイムスリップの一助となっている。
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“うざい”赤とんぼは劇場で!
(C) 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会 |
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前述の通り、その物語展開も魅力の『ALWAYS 三丁目の夕日’64』シリーズ。吉岡秀隆、堤真一、小雪、堀北真希、もたいまさこ、三浦友和、薬師丸ひろ子、須賀健太、小清水一揮に、新キャストの森山未來、大森南朋を加えた『ALWAYS 三丁目の夕日’64』では、1作目で夕日町三丁目にやってきた六子(堀北真希)と淳之介(須賀健太)の巣立ちの物語が描かれる。1作目では集団就職で東京に来たばかりの少女だった六子と、小学4年生だった淳之介が見せる成長、それを見守る親たちの気持ちに、涙を誘われる。
映画『ALWAYS 三丁目の夕日’64』は1月21日全国公開
※今週のクローズアップは、オフィシャルサイトにて掲載の「3Dメガネは夕日町三丁目へのご招待キップ」のために取材させていただいた株式会社IMAGICAの灰原光晴氏(3Dスーパーバイザー)、株式会社白組の渋谷紀世子氏(VFXディレクター)、株式会社白組の山崎貴氏(監督・VFX・脚本)のインタビューを基に、文章を再構成して、掲載しました。 |
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(C) 2012「ALWAYS 三丁目の夕日'64」製作委員会
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文・構成:シネマトゥデイ編集部 島村幸恵 |
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