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岩井俊二監督のドキュメンタリー映画『friends after 3.11』をクローズアップ!

今週のクローズアップ

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今週のクローズアップ キャスト・スタッフの情熱が詰まった、映画『はやぶさ 遥かなる帰還』の魅力に迫る!

 未曾有の大震災が、多くの命を奪った2011年3月11日から、1年がたった。東日本大震災にまつわる、数多くの作品が公開されている中で、話題を呼んでいる岩井俊二監督のドキュメンタリー『friends after 3.11【劇場版】』を徹底フューチャー!
岩井俊二、松田美由紀。そして、ロックの会

 2011年3月11日の東日本大震災直後に起きた福島第一原発事故。多くの日本人が、それまで原発の本当の恐ろしさ、そして放射性物質の本当の怖さを知らなかった。どこかで、その恐ろしさに気付いていながらも、向き合おうとしてこなかったのかもしれない。

 岩井監督は、本作でナビゲーターを務めている女優の松田美由紀、ジャーナリストの岩上安身、小林武史とともに、福島第一原発事故の後、仲間たちと小さなパーティーを始めた。最初の集まりは、2011年6月9日。この日、都内のレストランに集まったのは、反原発ソングで話題を集めた斉藤和義、俳優の山本太郎、そして放射能問題と向き合い続けきたドキュメンタリー監督の鎌仲ひとみなどの十数人だったという。鎌仲が語る放射能汚染の恐ろしさに、誰もが真剣に聞き入った夜。「毎月こうして集まって、環境問題を語り合おう」という、松田の呼びかけで、岩井監督らが発起人となって始まったロックの会。「仲間たちとの出会いを形に残したい」、本作は、岩井監督のこうした思いから作られた。

 

映画『friends after 3.11【劇場版】』より - (c)2011「friends after 3.11【劇場版】」製作委員会

スクリーンから伝わる、原発問題に真っ向から立ち向かう勇気

 内閣府原子力委員会専門委員などを歴任している中部大学の武田邦彦、脱原発を宣言して事務所を辞め、デモや講演会などさまざまな活動に参加している俳優の山本太郎、経済金融界では異例ともいえる脱原発宣言を掲げた城南信用金庫の理事長・吉原毅ら、本作には反原発の立場で活動を続ける、そうそうたる面々が登場する。

 中でも京都大学原子炉実験所助教、小出裕章は印象的だ。「今回の311以降、小出さんの講演されている姿を見て、本当に多くの方々が、勇気と希望を感じたと思う」という松田の言葉に、小出は、「わたしは、皆さんに謝らなければいけない」。彼は、「事故を防ぐことができなかった。子どもたちに重荷を背負わせてしまったことを、本当に申し訳ないと思っています」と話し、苦渋の表情を浮かべる。長い長い時間、原発の恐ろしさを、孤独に訴え続けてきた小出だからこそ、「申し訳ない」という言葉は心を貫く。3月11日をきっかけに、原発問題に関心を持った人も、そうでない人も、大切なのは、真っ向から立ち向かう勇気だということが、スクリーンから静かに伝わってくるはずだ。

 

映画『friends after 3.11【劇場版】』より - (c)2011「friends after 3.11【劇場版】」製作委員会

劇場版には、FRYING DUTCHMANが登場!

 昨年11月、一曲の反原発ソングがネット上を駆け巡った。京都に拠点を置き活動するアーティスト、FRYING DUTCHMAN の「humanERROR」だった。過去最悪の事故を引き起こしながらも、責任の押し付けあいをする政府や電力会社を痛烈に批判する、約5000字に及ぶ歌詞を、あふれ出る怒りをぶちまけるように叫ぶボーカル、リー・タバスコ。彼の叫びは、瞬く間に話題を呼び、YouTubeでは、1か月の間に再生回数30万回を記録した。

 現在、英語版、フランス語版などに訳され、世界でも話題を集めている彼らの存在を知った岩井監督はさっそくコンタクトをとったという。初めて彼らのライブを聞いた夜、岩井監督は、自身のツイッターで「FRYING DUTCHMAN のhuman error 今夜生で聴いたぞ。感動したけど、Human error 生で聴いて感動する不幸についても考えた。この曲を聴いて感動する僕らは不幸過ギルダロウ!」とつぶやいた。劇場版では、彼らの熱いパフォーマンスが収録されている。

映画『friends after 3.11【劇場版】』より - (c)2011「friends after 3.11【劇場版】」製作委員会

グラビアアイドル藤波心が流した、14歳の涙

 作品のキーパーソンとなる、撮影当時14歳だったグラビアアイドル藤波心の存在はとてつもなく大きい。関西出身の彼女は、毎週末、数多くの反原発デモに足を運び、マイクを片手に、中学生とは思えない大人びた意見を群衆にはっきりと訴えかける。反原発のジャンヌ・ダルクとの異名も付いた。映画前半では、デモに参加したばかりの藤波が「本当に問題に感じるのは、人々の無関心だと思う」と冗舌に語る姿が印象的だ。

 だが、岩井監督の生まれ故郷である東北の被災地に足を踏み入れたとたん、彼女の表情が、ガラリと変わる。人々の息吹、日々の生活や笑い声、すべてを一瞬にして破壊した津波の恐ろしさを藤波はどう受け止めるのか。絞り出すようにして出た言葉は、「当事者じゃないですけど、なんか、いろいろ伝わってきて……」。胸をとんっと叩いた後、藤波は号泣した。自分は当事者じゃない……。震災後、東北に住んでいない人間であれば、きっと一度はその違和感を持ったことがあるのではないだろうか? 彼女の瞳から流れ落ちる涙は、津波という恐怖に直面した人々と、観客との心の距離を近づけることだろう。(編集部:森田 真帆)

映画『friends after 3.11【劇場版】』より - (c)2011「friends after 3.11【劇場版】」製作委員会

文・構成:シネマトゥデイ 森田真帆

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