エリカ様の生い立ちって、実はあまり知られていません。1986年4月8日、東京都生まれ。手広く事業をしていた父親は、エリカ様が9歳くらいのときに何故か失踪。しかし15歳のとき、その父親がガンに侵され、失踪から突然戻り、亡くなるまでの1か月、2人の兄と家族4人全員で暮らしたそう。父の最期をみとり、さらに翌年、兄を交通事故で亡くすという、まるで物語のような生い立ち。
12歳のときに前・所属事務所のオーディションに合格、モデル等の仕事を開始したエリカ様。僕が存在を知ったのは、やはり井筒和幸監督の『パッチギ!』。チマチョゴリのかわいい、イタイケな美少女で、主人公同様に一目ぼれでしたわ。泣きじゃくるシーンなど素晴らしく、演技もうまいな~と。フルートをわずか1か月でマスターしたのも大したものですよね。余談ですけれど、井筒監督作品の出演者って島田紳助、北野誠、ナイナイの岡村、塩谷瞬、高岡蒼佑と、なぜかワイドショーに登場率が高いな。
『パッチギ!』で日本アカデミー賞など、さまざまな映画賞の新人賞を総ナメしたエリカ様。その後オファーが殺到したのは言うまでもなく。そして一般家庭にその名が浸透するほどブレイクしたのは、テレビドラマ「1リットルの涙」での初主演。難病により25歳で亡くなった実在の原作者にふんし、涙なくしては観られない、心えぐられる演技を披露し、高く評価されました。僕も見ていて、本当に切なかったです。
その後も故・森田芳光監督の『間宮兄弟』や、『誰も知らない』の柳楽優弥と共演のラブストーリー『シュガー&スパイス 風味絶佳』、市原隼人と小西真奈美が出演した『天使の卵』、ホラー映画の『オトシモノ』に出演。『シュガー&スパイス 風味絶佳』では、何とももどかしい若者たちの恋物語なんですが、青春時代ならではの機微が繊細に描かれていて、もっと若い頃に観たかったかな~と。
『手紙』では、殺人を犯した兄のせいで人生を狂わされる、弟を励ますガールフレンドという設定。重々しい内容に華を添えていました。……というわけで『間宮兄弟』から『手紙』まで、1年の間に、出演作が5本も公開されるなど、彼女の忙しさったら、ものすごいものがありましたね! やや型にハマった役どころばかりなのは仕方ないか。こんなにハードでは、まだ若かったワケだし、そりゃ多少、疑問や葛藤が芽生えても、おかしくないでしょう。
そして問題の舞台挨拶をしちゃった作品が、『クローズド・ノート』。本作のエリカ様は、入居した部屋で、前の住人が忘れていった1冊のノートを読んでしまい、意外な運命に巻き込まれていく、という役柄。ノートを書いた主を演じたのは、当時の事務所の先輩だった竹内結子。このまま優等生的に日本映画界で賞をもらったりしながら、徐々にキャリアアップしていくことも可能だったでしょう。しかし、エリカ様はそうしなかった。
あの舞台挨拶のときの格好は、濃い化粧、金髪のウイッグ、肌もあらわなワンピース、頭上には大きなサングラスと、劇中の清楚(せいそ)な人物とは似ても似つかない派手な姿で、以降ガラリとイメージチェインジ! もうどう思われようとも、本来したかった格好を存分に楽しんでいるという感じ。僕はこちらのエリカ様ももちろん好きなんだけど、チャームポイントだった八重歯がいつの間にかなくなっていて、前からのファンとしてはちょっと寂しかったな。
とにかく!『ヘルタースケルター』からは明らかに表現者として格段にスキルアップして、これから「新しい沢尻エリカ」が始まると思って良いですよね……!
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