第42回『プロメテウス』『るろうに剣心』『アベンジャーズ』『トータル・リコール』『桐島、部活やめるってよ』
今月の5つ星
『エイリアン』シリーズ、『ブレードランナー』の巨匠リドリー・スコットが放つSF超大作、歴代のアメコミ・ヒーローが集結した痛快アクション、人気漫画「るろうに剣心」の待望の実写化など、これだけは押さえたい夏の注目作を紹介。
SF映画の金字塔ともいわれるアーノルド・シュワルツェネッガー主演作『トータル・リコール』を新たにコリン・ファレル主演でリメイクした本作。なりたい自分になれる記憶を買ったことから、思いも寄らぬ戦いに巻き込まれるという基本的なストーリーは変わらないものの、オリジナル版でポール・ヴァーホーヴェン監督が描いていたグロテスクさや不気味なクリーチャーは一切排除され、今の時代に好まれそうなスタイリッシュで洗練されたアクション映画として生まれ変わった。舞台も火星から、戦争により大部分が居住不可能となった地球へと移し、どこか起こり得なくはないリアリティーを感じさせる。そして、主人公の妻ローリー(ケイト・ベッキンセイルが『アンダーワールド』シリーズで見せたハードボイルド・アクションをパワーアップ! 主人公たちをどこまでも追い詰め、最後の最後まで息をつかせぬノンストップ・アクションで映画を盛り上げてくれる。また、それに負けじと戦うメリーナ(ジェシカ・ビール)と繰り広げる美女二人のファイトシーンなど、ところどころにオリジナル版をほうふつさせるシーンがちりばめられているのには、ついニヤリとさせられてしまった。(編集部・中山雄一朗)
タイトルにもなっている「桐島」は本作に登場しない。「え、じゃあ誰が主人公なの?」という声が聞こえてきそうだが、前半では桐島がバレー部をやめた金曜日の出来事が、視点や時間を微妙にずらしながら重なり合い、友人、恋人、クラスメート、そして桐島と縁もゆかりもない生徒の複雑に絡み合った人間関係を浮かび上がらせる。人気者への嫉妬、女子グループのいさかい、決して口にしない恋心、親友にも言えない秘密……。『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の吉田大八監督は朝井リョウの原作小説を一度バラバラにし、パズルのピースを組み合わせるように物語を再構成。だが、クライマックスで登場人物が一堂に会し、すべてのピースがそろった後も、中心だけはぽっかり空いているような印象がある。それは、そこに「桐島」がいないからだ。そうした「未完成さ」が思春期真っただ中の登場人物たちの姿と重なる一方で、作品自体の完成度が非常に高いのは、神木隆之介や橋本愛など実力派若手がそろった出演陣の力。「未完成」「未熟」といった言葉とは程遠い彼らの熱演が、当事者だったときはつい見過ごしがちだった、青春時代のきらめきを気付かせてくれるのだ。(編集部・福田麗)
アイアンマン、ソー、ハルク、キャプテン・アメリカら歴代のアメコミ・ヒーローたちが力を合わせてチーム「アベンジャーズ」を結成、悪に立ち向かう! どんなに強い相手なのかと戦々恐々としていると、いい意味で肩透かしをくらうはずだ。メインとなるのは、「アベンジャーズ」VS敵ではなく、チームの心が一つになるまでの仲間同士の戦いなのだから。当然、チームを組むとなると協調性が求められるわけだが、何せそれぞれが超人的な力を持っているため、内心、全員が「一番強いのはオレなんだから!」とけん制し合い、大のオトナ(しかもヒーロー)が仲間割れする姿はまるで小学生レベルで親近感大。中でも、人一倍責任感が強い優等生キャプテン・アメリカは何かと仕切り屋で、そんな彼とソリの合わないテキトー主義の自由人アイアンマンとのガチンコバトルは、笑えてしょうがない。気になる4人の勝敗の行方だが、圧倒的に強いのは特殊な武器を持たずに体一つで戦うあの人だった……! という超意外な展開にもワクワクさせられる。(編集部・石井百合子)
リドリー・スコット監督が久々に手掛けるSF大作。人類の起源を求めて、謎の惑星に降り立った科学者たちが遭遇する恐怖が描かれる。スコット監督は『ブレードランナー』などで見せつけた、圧倒的なビジュアルセンスをフルに発揮。初挑戦という3D映像も効果的に使いこなし、まさに作品世界に入り込んだような体験ができるはず。映像美を堪能するためにも、断然IMAXでの鑑賞をオススメしたい。掘り下げが足りない印象を受けてしまうものの、役者陣の演技は魅力的。スコット作品の新たなヒロインとなったノオミ・ラパスは、女性ならば思わず目を覆いたくなるようなシーンにも果敢に挑戦し、映画『エイリアン』のリプリーに負けない奮闘ぶり。冷徹な敵役を演じたシャーリーズ・セロンは妙にエロチックで、男性はそちらにも注目。某作品のファンならばニヤリとできる要素所々に見られるので、往年のファンは特に必見だ。(編集部・入倉功一)
国民的マンガの実写化と聞いて、厳しい目で見られるであろうこの作品のメガホンを取ったのは、大河ドラマ「龍馬伝」『ハゲタカ』の大友啓史監督。監督にとってもチャレンジだったはずだが、原作のスピリットを残しつつ、「龍馬伝」を思わせる時代劇のテイストも存分に盛り込み、痛快なアクション活劇に仕上がっている。特に冒頭やクライマックスに繰り広げられる疾走感あふれるアクションのキレや、マンガっぽい荒唐無稽(むけい)な技を多用せず、生身にこだわった殺陣のシーンは見応え十分。そして佐藤健が熱演してみせた、剣心の二面性がうまく出ているのもポイント。口癖の「おろっ」に表れるのんびりとした雰囲気がかなりハマっていて、かつ人斬(き)り抜刀斎の裏の顔や、過去の罪に葛藤する剣心のキャラが生きていた。個人的に斎藤一の活躍が少ないのは残念だったが、マンガから飛び出てきたような実写版剣心の活躍と、臨場感たっぷりのアクションに目を奪われること必至だ。(編集部・山本優実)