SMAP 、V6 、KinKi Kids 、嵐 、NEWS 、関ジャニ∞ 、KAT-TUN 、Hey! Say! JUMP ……多数の人気アイドルグループが所属するジャニーズ事務所。女性たちの圧倒的な支持を集める一方、「アイドル映画」と揶揄(やゆ)されがちなジャニーズ事務所所属俳優が出演した映画の中から、映画通をうならせた名演を振り返り、彼らの魅力に迫りたい。
それぞれが主役として活躍するSMAP のメンバーの中にいて、テレビドラマ、映画では、どちらかというと脇役として活躍しているイメージが強い稲垣吾郎 。そんな稲垣 が、鮮烈な印象を残し、高い評価を得たのが、三池崇史 監督がメガホンを取り、2010年に公開された映画『十三人の刺客』 で務めた暴君・松平斉韶 役だった。
私欲のために女の四肢を切断し、女子どもを殺害することもいとわず、自分のために一命を賭した部下もむげにする……。三池監督 には、「周りから見ると暴君だが、本人は、自分は正常で、先見性があるとすら思っている」という斉韶 のキャラクター像があったというが、稲垣 は見事これを体現。美しさをもってそこに存在することで、悪を悪とも思わない暴君を演じ切った。その名演は、稲垣 がこの演技で、第23回日刊スポーツ映画大賞 助演男優賞、第65回毎日映画コンクール 男優助演賞を受賞したことが裏付けている。
『十三人の刺客』
DVD通常版3,990円(税込み)
発売元:セディックインターナショナル・小学館
販売元:東宝
テレビドラマ「ロングバケーション」 「ラブ ジェネレーション」 「ビューティフルライフ ふたりでいた日々」 「HERO」 など、数々のヒット作を生み出してきた木村拓哉 が、映画『たそがれ清兵衛』 『隠し剣 鬼の爪』 に続く藤沢周平 原作、山田洋次 監督作品に出演したことは、映画『武士の一分(いちぶん)』 が公開された2006年当時、大きな話題となった。
本作で木村 が演じたのは、藩主の毒見役の仕事でつぶ貝の毒にあたり失明してしまう下級武士・三村新之丞というなんともイケメンらしからぬ役どころ。木村 は、「自分を役に近づけるよりも、役を自分に近づける俳優」といわれているが、本作のために殺陣や方言もしっかりとマスター。相容れることのないように思われた幕末の下級武士と“木村拓哉 ”を三村新之丞というキャラクターに共存させてみせたのは、もはや木村にしかできない技といってよいだろう。
『武士の一分』
DVD 3,990円(税込み)/ ブルーレイ 4,935円(税込み)
発売・ 販売元:松竹
(C) 2006 「武士の一分」製作委員会
ジャニーズ事務所所属俳優の中で最も演技力に定評があるのは、2006年に公開されたハリウッド映画『硫黄島からの手紙』 での演技が海外からも高い評価を受けた嵐 ・二宮和也 だろう。本作で二宮 が抜てきされたのは、映画『ラスト サムライ』 など、すでにハリウッドに活躍の場を広げていた渡辺謙 に次ぐ二番手、西郷という役どころ。それは、メガホンを取ったクリント・イーストウッド 監督が、日米双方の視点から「硫黄島の戦い」を描いたプロジェクトの1作となる本作で、「国のために戦って死ぬことを名誉としていた当時の日本人の中にも、アメリカ人と同じように、戦いの末に、愛する人の元に帰りたいと願う若者がいた」というメッセージを担う、プロジェクトの核となるキャラクターだった。
国のために戦って死ななければならない当時の情勢と、「生きたい」と願う若者の素直な思い。二宮 は、その葛藤を見事に表現してみせた。イーストウッド監督 は、2003年に公開された舞台演出家・蜷川幸雄 がメガホンを取った映画『青の炎』 での二宮 の演技を見て、二宮 を西郷役に抜てきしたというが、二宮 が『青の炎』 で演じた、家族との平穏な生活を守りたいがために殺人を犯してしまう少年・櫛森秀一の葛藤は、『硫黄島からの手紙』 の西郷の葛藤と、通じる部分がある。『硫黄島からの手紙』 が公開された際、米紙Los Angeles Timesが、二宮 に関する特集記事を掲載したことも、二宮 の名演の証明となり、話題となったが、そこにはジャニーズ事務所代表取締役副社長藤島ジュリーK. の語る、二宮 が14歳で出演したスペシャルドラマ「天城越え」ですでにその頭角を現していたというコメントが紹介されていた。「天城越え」で二宮 が務めたのは、偶然出会った娼婦(しょうふ)との旅で少年から男へと成長していく多吉役。14歳の頃から心の揺れを演じさせたら群を抜く演技力を発揮していたようだ。
『硫黄島からの手紙』
ブルーレイ2,500円(税込み)
DVD1,500円(税込み)
ワーナー・ホーム・ビデオ
1997年に放送されたテレビドラマ「いいひと。」 の演技で高い評価を受けた草なぎ 。その後もこの「いいひと。」 でタッグを組んだ星護 監督とは、テレビドラマ「僕の生きる道」 「僕の歩く道」 、映画『僕と妻の1778の物語』 と「僕」シリーズと呼ばれる作品群を制作し、作品によって役柄は違えど、すっかり「いいひと。」 のイメージを定着させてきた。そんな草なぎ が、2009年に放送されたテレビドラマ版「任侠ヘルパー」 で極道者を演じるというニュースに、驚いたファンも多かったことだろう。
正確には、ヤクザでありヘルパー(介護員)であるという相容れることのないはずの二足のわらじを履く役だったのだが、メガホンを取った西谷弘 監督の演出には、「ヤクザ=悪い」という点において、ブレはない。しかも、テレビドラマ版では、まだ若干の“「いいひと。」 感”が残っていた草なぎ 演じる極道者・翼彦一 が、草なぎ 以外のキャストをがらりと一新させた劇場版 では、“「いいひと。」 感”をすべて払拭。さらにパワーアップした極道者に仕上がっている。これまでのイメージを覆す草なぎ の演技は、一見の価値ありといえるだろう。
(C) 2012フジテレビジョン ジェイ・ドリーム 東宝 WOWOW FNS27社
稲垣 、木村 、二宮 、草なぎ のほか、グループに所属しCDデビューすることが一種のステータスとなっているジャニーズ事務所において、まだどのグループにも所属していないにもかかわらず、数多くの舞台、テレビドラマ、映画で主演を務める生田斗真 など、個性豊かな面々が所属するジャニーズ事務所。その生田 は、11歳でジャニーズ事務所に入ると同時にNHK教育テレビの子ども向け教育番組「天才てれびくん」 に出演、翌1997年に出演したNHK連続テレビ小説「あぐり」での演技が認められ、一気に知名度を上げた人物。二宮 や生田 のように、幼い頃からバラエティー番組、テレビドラマ、舞台、映画などへの出演機会を与えられてきたジャニーズ事務所の俳優たちは、ほかの俳優たちよりも演技力を磨くチャンスがある。そのため、当たり役にはまったとき、演技力を爆発的に発揮するのかもしれない。
文・構成:シネマトゥデイ編集部 島村幸恵
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