第35回 都会のオアシス、ドリームワークス アニメーション!の巻
うわさの現場潜入ルポ
さて、今回は『シュレック』『カンフー・パンダ』『マダガスカル』など、数々のヒット作を世に送り出したドリームワークス アニメーション(以下、DWA)に潜入!
ロサンゼルスの東北部にある街バーバンク。そこに1,500人の社員を抱えるドリームワークス アニメーションのスタジオがあります。ひっそりとそびえ立つ門をくぐり抜けると、むむ……ここは一体!?
広場には大きな噴水が気持ちいい音を立てて、両側の道にはオリーブの木々が並びます。また、敷地内の中央には大きな池があり、その周りをスパニッシュ風の黄色い建物が。何だか会社というよりも、都会の中のリゾートという雰囲気!
「ようこそ! ドリームワークス アニメーションへ!」と、出迎えてくれたのは、今日の案内役のスコット・セイファートさん。まるで舞台の喜劇役者さんのように楽しい雰囲気。早速、敷地内を紹介してくれました。
「この池には300匹のコイがいるんですよ」とスコットさん。池を見ると、あ、ほんとだ。きれいな色のコイがたくさん泳いでいる。これは社員が仕事で疲れた目を休めるようにと導入したそうです。また、小さな広場では、毎日ヨガなどのエクササイズクラスが開かれる他、この会社では、夜はクリエイターたちがデッサン力を高めるための絵画クラスや、演技力をつけたい人たちのための即興演技のクラス、また映画の上映などもあるんだそうです! そして、それらは全て無料! まるでキャンパス・ライフみたい。
もっと散歩道を進んでいくと医務室もあり、内科の先生が勤務しているそうです。「病院に行く手間が省けるので楽ですよ」とスコットさん。ああ、何と快適な環境。わたしもここで働きたーい!
さて、今度は建物の中です。大きなカンフー・パンダ像やオスカー像が並ぶ受付ロビーを過ぎて、小さな部屋に通されると、そこでアニメ作りの工程を説明したビデオを見せてくれました。『マダガスカル』に出演したベン・スティラー、『シュレック』のキャメロン・ディアス、『カンフー・パンダ』のアンジェリーナ・ジョリーなどがビデオ内でそのプロセスを説明。
そして、そのプロセスの一つ、声優さんたちの声を録音するスタジオも見学。一見、マイクと台本スタンドがある普通のスタジオ。でも、ここで数々のスターが実際にアニメの声を録音していたのかと思うと、何だかドキドキします。ちなみに、DWA規模のアニメになると、先に役者さんの声を録音し、それに合わせて映像を作っていくんだそうです。日本では逆にアニメに合わせて声を録音するので、日本の声優さんたちが聞いたら、うらやましがるだろうなあ。
お次は、モーションキャプチャー・スタジオ。小さなテニスコートぐらいの広さのこのスタジオ。ここでは、俳優さんたちの体にピンポン玉のようなものを着けて、その動きを46台のカメラで撮影! それをCGに取り込み、アニメーションにしていくんだそうです。『長ぐつをはいたネコ』での2匹の猫のダンスシーンもここで撮影したとのこと。また、『マダガスカル3』のサーカスの群集シーンなども、ここで数人の役者を撮影し、それをCGで大勢にしたそうですよ。
アニメーターたちのオフィスも見学。普通のオフィスを想像していたら、何とびっくり!! カエルの顔の大きな傘を机の上に立ててある人や、南国のヤシの木の小屋のような個室を机の周りに作った人も。また、縫いぐるみだらけの机や、鏡や大きなねじが並び、まるで『ヒューゴの不思議な発明』のぜんまい仕掛けの世界のような机もあります。「クリエイターが自分らしく仕事ができるように、好きなものを置いてもらっています」とスコットさん。オフィス内は写真撮影ができないのが残念!
また、別のオフィスでは、CG作業をする机の高さが簡単に上下でき、座っても立っても仕事ができるようになっていました。「ずっと座ったままだと体に悪いので」と説明するスコットさん。さすがDWA、快適な職場の環境づくりに余念がありません!
ちなみにDWAは、社員にいい仕事をしてもらえるように、会社がどんなに忙しくなっても、社員の休憩時間や休日がしっかり取れる体制をとっているそうです。また、新人でも良い案があれば、どんどん意見が言えるような体制をつくり、「チームのスタッフとは家族のように仲がいい」とのこと。また、CEOのジェフリー・カッツェンバーグのブログもあり、社員一人一人が会社のトップを身近に感じられるようにしてあるそうです。うーん、日本のエンタメ系の会社の人が聞いたら、ため息が出そう!?
さて、そろそろおなかがすいてきたので、待ちに待ったランチターイム! 早速、カフェテリアに行くと、そこはまるでガーデンレストランのよう。室内のカフェテリアのメニューを食べてもいいし、野外のバーベキュースタンドで、シェフにハンバーガーなどの肉をグリルしてもらってもよし。ちなみに今日のカフェテリアのメニューは「スパゲティー・ミートボール」。
パン、サラダバー、デザートも付いています。ドリンクもより取り見取り。列に並ぶドリームワーカーたち(ここの社員をそう呼ぶ)も皆ニコニコしていい感じです。わたしも木漏れ日がそそぐ野外のテーブルに座り、はい、いただきまーす! うーん、このミートボール、大きくておいしーい! もちろん、ここでは朝食、昼食、残業時の夕食は全て無料。何というパラダイス!
ちなみに、DWAはアメリカのビジネス雑誌「フォーチュン」が選ぶ2012年の「働きたい人気の会社ランキング100社」の14位に入ったそうです。
スコットさんも言います。「本当に毎日ここで仕事ができて感謝しています。お給料もいいし、だから、より頑張れる。ずっと辞めたくないですね」。
スタッフがハッピーならば、いい作品ができる。日本のエンタメ業界も同じような環境がつくれるようになるといいなと思いながら、夢(ドリーム)のような場所を後にしたのでした。