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【年末特集企画】映画界の震災復興支援はその後、どうなったのか?

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映画界の震災復興支援はその後、どうなったのか?

 東日本大震災から2回目の冬がやって来ました。いまだに東日本では仮設住宅や放射能汚染から逃れるために避難生活を余儀なくされるなど、不自由な暮らしを営んでいる方が多数います。しかし、震災直後こそ企業・団体が積極的な支援活動を行っていましたが、最近ではニュース報道も減少気味で、実態が見えにくくなっています。果たして、映画界における復興支援の現状は? そしてその支援は、被災地へ届いているのでしょうか? 映画界の復興支援活動を検証しました。(取材・文:中山治美)

検証1.震災被害を受けた映画館はどうなった?

老舗劇場である石巻・岡田劇場
老舗劇場である石巻・岡田劇場

 各地の映画館主などが所属する全国興行生活衛生同業組合連合会(東京・新橋)によると、東日本大震災で被害を受けたスクリーン数は193件(北海道~静岡までの劇場について2011年3月18日に調査)。うち、「休業1~3日」39件、「同1週間程度」24件、「同2週間程度」7件、「1か月の修復が必要」2件、「崩壊」1件、「再開未定」95件、「計画停電の影響で休業」6件、「再開の見込みがわからない」19件。再開未定の多さが当時の混乱ぶりを表しているが、現在は崩壊した1件を除いて営業を再開している。その1件とは、津波被害を受けた石巻・岡田劇場。約150年の歴史を持つ老舗劇場だった。

 津波で倒壊したのが1件とは意外に少ないと思うかもしれないが、だいぶ以前から三陸海岸地域の映画館は、経営難などから閉館に追いやられていたというのが実情だ。唯一営業しているのが、岩手県宮古市のみやこシネマリーン。同劇場は津波で壊滅的な被害を受けた宮古市にありながら、建物に大きな損傷もなかったことから2011年3月26日に営業再開。「街に元気を子どもたちに夢を」を合言葉に上映されたのは、『映画ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 ~はばたけ 天使たち~』『相棒-劇場版II- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜』だった。また地域でも無料巡回上映を積極的に行っている。

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みやこシネマリーンの巡回上映
みやこシネマリーンの巡回上映

 しかし、震災の影響は否めない。櫛桁一則支配人によると、観客動員は震災前と比較すると30パーセントのダウン。さらに、昨今の興行界を悩ます、デジタル化問題が追い打ちをかける。同劇場では「三陸沿岸唯一」の看板を維持するべく、一般から募金で2,000万円のデジタル機材導入を決めた。

 櫛桁支配人は「地域によって差があり、まだ映画を観る気分ではないという人もいるかもしれないが、仮設生活が続く中、文化が支えになるときがきっとくる。継続して映画館を維持していくことが重要だと実感しています。もともと人口5万8,000人の小さな市に映画館が残っているのが奇跡だといわれますが、見えないゴールに向かって歩み続けるしかない」と、今日も無料巡回上映に、劇場のPR活動にと飛び回っている。

 震災の影響は、東北地方だけではない。関東の劇場でも天井の落下、映写機の破損・転倒で休業を余儀なくされた劇場も多かった。そして、来年3月には東京・銀座唯一の名画座だった銀座シネパトスの閉館が決定。劇場のある三原橋地下街の耐震性が問題となって、取り壊しが決まり、東京都から立ち退きを命じられたのだ。

映画『インターミッション』
映画『インターミッション』より-(C)2013「インターミッション」フィルムパーナーズ

 地下を走る東京メトロ日比谷線の振動を感じながら映画を観賞する、この劇場ならではの体験と、ツウ好みのラインナップが味わえなくなるのを惜しむファンは多い。そんなシネパトスを愛する人たちが集まり、同劇場で撮影が行われた映画『インターミッション』(樋口尚文監督)が誕生。シネパトスの有終を飾るべく、2013年2月23日から同劇場限定で公開される。シネパトスの姿は、映画の中で永遠に遺(のこ)されることになった。

 一方、石巻・岡田劇場は地域での巡回上映会などに切り替えて活動を行っているが、劇場再建のめどは立っていないという。歴史ある劇場を応援しようと2007年に「岡田劇場がんばれ会」(会員500人)を発足した古藤野靖事務局長は「震災で劇場を流されたショックが大きくてね。それを忘れるために岡田劇場が行っている上映会に参加していたんだけど」。ところがここにきて、再建に向けての動きが出てきたという。きっかけは、2012年12月2日にワーナー・マイカル・シネマズ新石巻で行われた『北のカナリアたち』特別上映イベントだ。

映画『北のカナリアたち』
映画『北のカナリアたち』より-(C) 2012『北のカナリアたち』製作委員会

 同イベントは、がれきの中から、劇場地下に保管してあった吉永小百合のサイン入り写真集「SAYURI 吉永小百合アルバム」が発見されたことがきっかけで、岡田劇場の菅原聖社長の立案で行われた。吉永は自腹で被災者約1,000人以上を招待したのだが、そこで震災後初めて、岡田劇場がんばれ会のメンバーがそろったという。

 古藤野事務局長は「久々に映画館で顔をそろえたら、皆の中で場所を変えてでもどこかで岡田劇場を再建できないかという話になってね。早速、会合を開くことになったんです。もともとわたしたちの会は、文化施設としての岡田劇場を残したいという思いで発足したんです。今も上映会では、サンマを焼いたり、カキを振る舞ったりしているんだけれど、あの昔の芝居小屋の雰囲気がいいんだよね」と前向きな話題に声も明るい。

 とはいえ再建には、移転場所の確保や建設費用など乗り越えなければならない壁は多いが、彼らは自分たちの足で確実に一歩踏み出そうとしている。

みやこシネマリーンの募金に関する問い合わせはTEL 0193-64-5588またはホームページ

>>検証2.大手映画会社の震災支援の現状

■検証1.震災被害を受けた映画館はどうなった?
検証2.大手映画会社の震災支援の現状
検証3.無料巡回上映で見えてきたこと
検証4.被災地からの声

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