WOWOW×シネマトゥデイ 第85回アカデミー賞特集:注目の4部門はコレだ!
いよいよ迫る第85回アカデミー賞授賞式を前に、アカデミー賞ノミネーションのラインナップから必見の賞レースを紹介。アカデミー賞常連の名優2トップ、番狂わせの可能性を秘めた強豪作、76歳も年の離れた2人の女優の対決など、この四つの勝負をチェックすれば授賞式を倍楽しめること必至!
アカデミー賞ノミネート5度目のダニエル・デイ=ルイスと同6度目のデンゼル・ワシントンは、まぎれもなく現代のハリウッドを代表する名優だ。『リンカーン』のダニエルは南北戦争の時代に奴隷解放の実現に尽力した偉大な大統領の不屈の信念を体現し、『フライト』のデンゼルは神業的な操縦で多くの人命を救いながらもアルコールに溺れる旅客機パイロットの人間的矛盾を掘り下げた。すでに輝かしいキャリアを確立した今もなお、さらなる高みを目指し、対照的な難役に挑んだ二人の探求心には頭が下がるばかり。とはいえ最多12部門にノミネートされた『リンカーン』の作品力の強さに加え、ゴールデン・グローブ賞などの前哨戦を順調に制しているダニエルの優位は揺るぎそうもない。
『リンカーン』『ゼロ・ダーク・サーティ』『アルゴ』などが有力視される作品賞部門で、とびきり異色の存在感を放つのがこの2本だ。カンヌ国際映画祭パルムドールを2度制したミヒャエル・ハネケ監督が、人生の晩年を迎えた夫婦の愛と死を見つめた『愛、アムール』。19世紀アメリカ南部を舞台に、元奴隷の黒人男性の数奇な運命を描いたクエンティン・タランティーノ監督作品『ジャンゴ 繋がれざる者』。厳格かつ挑発的な作風で名高い前者と、過激なバイオレンス&ユーモアに私的な映画愛を織り交ぜた後者の同時ノミネートは、映画ファンの好奇心をかき立ててやまない。欧米を代表する真の鬼才2人が腕によりをかけた自信作。ダークホース対決を制して本命に肉薄するのはどちら?
例年、華やかな主演女優賞に比べると地味になりがちな助演女優賞に、今年は美貌と実力を兼ね備えた"旬"のトップ女優2人が名を連ねた。『ダークナイト ライジング』のキャットウーマン役も記憶に新しいアン・ハサウェイは、『レ・ミゼラブル』で薄幸の女性ファンテーヌを心揺さぶる歌声と共に熱演。一方、近作『人生の特等席』でクリント・イーストウッドと共演したばかりのエイミー・アダムスは、『ザ・マスター』でカリスマ宗教家の妻をすごみ漂う存在感で演じた。これが4度目のノミネートとなるアダムスを推す声も根強そうだが、近年の演技開眼ぶりが目覚ましいハサウェイが一歩リード。ゴールデン・グローブ賞を獲得した勢いに乗って、初のオスカー像を手中に収めそうだ。
『愛、アムール』のエマニュエル・リヴァ、85歳。『ハッシュパピー ~バスタブ島の少女~』のクヮヴェンジャネ・ウォレス、9歳。主演女優賞史上、最高齢の大ベテランと最年少の新人女優が同時ノミネートされるという究極の"年の差対決"が実現した。老いと病に苦しめられても優雅さや誇りを失わない女性を演じたリヴァは、くしくも授賞式当日が86歳の誕生日。また4,000人の候補者の中から主役に抜てきされたウォレスは、現実とファンタジーのはざまで揺れるアメリカ南部の女の子を生き生きと体現した。果たしてアカデミー会員は、老婦人の"熟成"と少女の"純真"のどちらに軍配を上げるのか。祖母と孫どころか曾祖母とひ孫ほども年の離れたこの二人、世界中の注目の的になりそうだ。