『テッド』で一躍注目の人!第85回アカデミー賞授賞式の司会者セス・マクファーレンを直撃!
今年のアカデミー賞授賞式の司会がセス・マクファーレンと発表されて、アメリカでも「誰?」と思った人が少なくなかった。アメリカのお茶の間で人気のお笑いアニメ番組「ファミリー・ガイ」の製作、脚本、声優だと説明されて、初めてピンと来るといった感だ。映画『テッド』の製作・監督・クマのぬいぐるみの声も担当した人というとわかりやすいだろう。最近では、米コメディー番組「サタデー・ナイト・ライブ」の司会を務め、七色の声でさまざまな役を演じ分けたり、ミュージカル風に歌って注目を浴びた。その上彼が歌ったアルバムは、なんとグラミー賞にノミネートされ、裏方から一躍スターに。そんなセス・マクファーレンとは一体どんな人物なのか……? アカデミー賞ノミネーション発表直後に、アカデミー賞のプロデューサー、クレイグ・ゼイダン&ニール・メロン、アカデミー会長のハワード・W・コッチ・Jr氏が、彼を抜てきした理由を明かすと同時に、大役を務めることになり「時の人」となったマクファーレンが現在の心境を語った。(取材・撮影・文:こはたあつこ)
アカデミー賞の司会は“しらふ”でも楽しめる最高のお仕事!?
Q:『テッド』の曲が歌曲賞にノミネートされましたね。おめでとうございます!音楽を担当されたウォルター・マーフィーとは話しましたか。
セス・マクファーレン(以下セス):いや、まだなんだ。でも会ったら、彼は飲めないからコークで祝うつもりだ。……あ、コークって、もちろんコカインじゃなく飲み物のことだよ(笑)。
Q:司会をオファーされたときの第一声は?
セス:自分の名前が挙がるなんてびっくりだ。「こりゃ、しらふでも楽しめる最高の仕事じゃないか!」と大いに興奮したよ(笑)。
Q:プレッシャーはありましたか?
セス:もちろん、ありありだよ。近々ビリー・クリスタル(※昨年の司会者)に電話をして、アドバイスをもらうつもりだ。自分なりにベストを尽くして、批判を気にすることなく楽しもうと思っているよ。
Q:授賞式で歌うご予定は……?
セス:オープニングもショーの流れもまだ決まっていない状態で、まだ検討中なんだ。自分がオスカー史上最高の大失敗をやらかした! なんてことにならないよう、いろいろ考えちゃうよ。
Q:セスさんにとって、一番印象に残っているオスカーは?
セス:毎年とは言わないけれど、よく観ていたよ。母はオスカーの大ファンなので、毎年欠かさずね。一番印象に残っているシーンは、ジュリエット・ルイスの頭に沿った編み上げのヘアスタイルだ(笑)。それにしても、アカデミー賞が嫌いという人を見たことがない。僕もファンだし。だから、今回の司会を務められることになって信じられないほど光栄だよ。
きわどいジョークを入れつつも、質は死守します!
Q:プロデューサーのクレイグ・ゼイダン、ニール・メロンさんに伺います。なぜセスを司会者に抜てきされたのでしょうか?
ニール・メロン(以下ニール):若い世代に受けるし、面白いし、カリスマ性もある。
セス:へぇ~。
ニール:(笑)。それにチャーミングだし、ダンディーでクラシックな雰囲気なのに話すことは今風という、まさに21世紀にふさわしい司会だと思ったよ。
クレイグ・ゼイダン(以下クレイグ):会長とニールと僕の3人で毎日司会を誰にしようかと悩んでいたんだ。で、セスの名前が挙がったら3人とも興奮して、ぜひ会ってランチをしようということになった。
セス:そのとき、僕の事務所はゴミだらけで……(笑)。
クレイグ:じゃあ、きっと猛スピードで片付けたんだね。行ったときは、きれいになっていたよ。よっぽどこの仕事が欲しかったんだね(笑)。
ニール:いろいろな人から、「セスを司会に起用するのが不安じゃない? きわどいジョークが出そうだけど」と言われるけれど、初めてセスと会ったとき、こう言ってくれたんだ。「僕はアカデミーを尊敬している。候補者たちも、映画業界も。だから、それをけなすようなジョークは絶対に言わない。もちろん今の世代に受けるようなとんがったジョークを入れるつもりだけど、アカデミー賞のメンツや質はちゃんと守りたい」と。それを聞いたとき、「彼に決まりだ」と思ったよ。
Q:アニメ番組の仕事とオスカーの司会準備と同時進行で大忙しなのでは?
セス:いや、ヒマでしょうがないんだ(笑)! っていうのは冗談だけど、素晴らしいチームのおかげで別の仕事をしていても、うまく回るようになっている。ただ、今はオスカーの司会が一番のプライオリティーだ。
ニール:アカデミー賞のディレクターのドン・ミッシャーは「今までさまざまな授賞式に関わってきたけど、司会が製作スタッフとの打ち合わせに毎回出るなんて前代未聞だ」と。実際にセスはデザイナー、ライターと、すべてのスタッフと打ち合わせをしているよ。それも、ちょこっと顔を出すだけじゃなく、平気で4時間とかみっちりね。
セス:本当は打ち合わせ中、こっそりアングリーバード(モバイルゲーム)をやっているんだけどね(一同爆笑)。
Q:オスカーの司会を務めるとなると一躍有名人になりますが、それは計画していたことですか?
セス:有名になるといったことは考えないよ。仕事は「面白いかどうか」で決めるから。
批判上等!? 政治絡みのジョークにツイッターでは賛否両論
Q:セスさんは批評を気にしないとおっしゃっていましたけど、今朝のツイッターでは、さきほどのノミネーション発表時のセスさんのヒトラーのジョークに対して、賛否両論の意見が多数あります。
セス:ヒトラーも分裂症ぎみだからね(一同爆笑)。まあ、どんな番組でも、必ずたたかれるジョークはあるものだよ。でも、何がたたかれるかなんて前もって予想できない。でも、アカデミー賞ではなるべくそうならないよう努力するつもりだよ。僕が手掛けたテレビアニメ「ファミリー・ガイ」や映画『テッド』は、両方ともアメリカの昔ながらのドラマ形式の中に、今の世代に受けるジョークを入れたものだ。アカデミー賞でもそういうコンセプトでいきたいね。
Q:プロデューサーのお二人は、『フットルース』『ヘアスプレー』『シカゴ』といった映画や、ブロードウェイのゴージャスな舞台を手掛けられていますが、今年のオスカーもゴージャスになりそうですか?
クレイグ:もちろんだよ。オスカーは「ゴージャス」の代名詞みたいなものだからね。でも同時に笑いもあって、エンタメ性の高いものにしたいと思っている。
ニール:ゴージャスと言えば、『007』シリーズの50周年記念にちなんだ企画も考案中なんだけど、それはまた別の機会に発表するよ。
会長が明かすアカデミー賞の最大の魅力
Q:会長に伺います。若い世代に見てもらうためにはどうしたらいいですか?
ハワード・W・コッチ・Jr(以下ハワード):良作を作ることだ。今年の作品賞候補になった9作品の多くがアメリカ国内で1億ドル以上の興行収入を出した娯楽大作だから、今年は楽しくなるんじゃないかな。それに、セスが司会というのも大きいと思う。
Q:アカデミー賞において最も大切なこととはどんなことでしょう?
ハワード:ただ、若い世代だけでなく、どんな世代も楽しめるような授賞式にすることが大事だ。なにしろ、アカデミー賞は世界最高レベルの賞なのだから。約6,000人のアカデミー会員たちは、映画業界のさまざまな部門に携わる一流の人ばかり。だから候補者たちは、ほかのどの授賞式よりも特別な感情を抱くと思うし、それは世界中の人たちに伝わると思う。